踊れない人の頑張り方
コランダ地方交流
クゥラさんvsリピスちゃん戦を観戦中のメテオたち。
お借りした方
・クゥラさん
・エーテルくん
・リピスちゃん
お借りした流れ▼
楽しそうに、踊るように。
目の前で繰り広げられるバトルは、派手なものが好きなコメットを虜にしたのか、彼はずっと手をパタパタさせながら見つめていた。
楽しいバトル。そういうのって、とても素晴らしいものだ。
「ぷぃっ!」
「ああ、とっても素敵だね」
この言葉は、本当に思ってること。コメットに嘘はつかないよ。
でもボクには、その楽しさは必要ないものだ。
だって、100パーセント勝てるようになりたいもの。
バトルを楽しんで勝てたら理想なのだけれど、そういう余裕みたいなものが勝機を逃すきっかけになってしまったら。
ボクはきっと、後悔すると思うんだ。楽しんでしまったことを。
コメットは、ハレーは、ビエラは……楽しいバトルがしたい?もしもそうなら、ちょっと可哀想だなぁ。
「メテオは、どうしてバトルをするチームを選んだの?」
バトルを一緒に見学している、エーテルの言葉。そうだね、今回もサポートでも良かったのだけれど。
「大切なものを守りたいって時に、戦えなかったら困るんだ。だから、バトルに慣れるためにエントリーしてみたの」
バトルに慣れたとしても、大切なものを守れるかなんてわからない。けど、やってみないよりは良いかなと考えて。
今、ここにいる。
今日は、他の人にとってはなんでもないただのハロウィンだけど。ボクにとっては、バトルを頑張ろうって決めた、大事な一日。
バトルの結果、リピスは負けてクゥラさんはチップを手に入れた。お互い晴れやかな顔をしていた。
「これはリピスとエーテルにあげる」
ハロウィンだからと作ってきた、ステンドグラスクッキーを二人に手渡した。
「ありがとう、メテオ」
「リピスとシンのバトル素敵だったよ。お疲れ様」
そう言ったら、リピスは微笑んでいた。
「飴がキラキラして綺麗だね」
「教会のステンドグラスみたいでしょ、味も美味しいんだ」
エーテルも、クッキーを喜んでくれているみたい。良かったと思っていたら、そばにいたプリンのコメットが手を伸ばしているのが見えた。
「コメットには後であげるよ。クゥラさんも、後で一緒に食べようね」
「ふふ、ありがとうございます。お茶の時間が楽しみですね」
さっきのバトルの時は、少しクゥラさんの表情が違って見えたけど、今はいつものクゥラさんだ。
「クゥラさんとチェリ、とても格好良かったよ」
リピスとエーテルとさよならした後で、クゥラさんにそう言った。
ボクは、ダンスは踊れない。ステップが踏めない。可憐なバトルは無理。
それでも勝利を目指さないと。
「ボクもがんばらなきゃ」
持っていたチップを、ぎゅっと握りしめた。