2月の夜。
僕の居場所は何処にあるんだろう。
そうやって自分はずっと考えていた。
午後11時頃、ベランダに出てみた。
見慣れた景色を目新しく眺めようと思ったが、それは不可能だった。
汚い空の星を見ながらふと悔しくて泣いた日の事を思い出した。同じように泣いてしまった。
この姿は情けなくて誰にも見せられないだろう。
僕は泣き虫だ。パニックになるとすぐに涙が溢れてしまう。これはいつ治るのか。
簡単に泣く事を多少受け入れている節がある。
治る兆しは無いだろう。
最近散髪した頭を掻きむしっても自分の脳味噌は見えてこなかった。少し安心した。
外の寒さで手先が冷たく感覚が鈍くなってきた。
部屋に戻りたいが、風が心地よくて動きたくない。
ふとスマホに目をやるとメールが送られていた。
それは、ネットで出会った年上の男性だ。
僕はゲイだ。彼もそう。
彼は優しそうで、僕のほうから連絡を交換しようと誘った。だが、彼の目的は身体だった。
彼は「いつ会えるの?」とか「裸の写真送ってよ」とか。僕も最初は彼の話に合わせた。
ただ、僕はだんだん怖くなっていった。
そんな人間は彼だけではない。
同じような人から同じような内容の連絡がネット上から送られてくる。
最初は凄く嬉しかった。
やっと自分は誰か必要とされているんだって思っていた。
そんな事が自分の生活の中に多く入ってくると小さなストレスが蓄積されてくる。
なぜか無視できない。何かに取り憑かれているんだろう。きっと。
ここ最近はずっと調子が悪い。
頭が重たいしめまいがする。吐きそうだ。
「もういいよ」と、僕は呟いた。
脳味噌が飛び出ていれば良かったのに。
僕には信頼できる人が数人いる。
でも僕は申し訳なくて頼れない。
悩みを打ち明けられない自分が情けなくてまた今夜も泣くんだろう。
もう泣く事には慣れた。
なんなら飽きた。
もう一生泣かないようにしよう。
僕を気持ち良くしてくれる一粒を沢山飲んで眠る。深く深く眠った。
おしまい。