《土木文学》「戊辰鳥 後を濁さず」第60話
五月三十一日(金)
ジンベエザメに頭を下げて、工事にまつわるお金の管理の方法を学ばせてもらった。
「積算を教えてください。」と、言った。
これからは、下水道の使用料が月に140万円近くかかる。この前の罰金の100万円。民泊の収益。何が何だかわからなくなっていた。
ジンベエザメは、あっという間に表を作ってくれて、小型のプリンターで印刷してくれた。
「これが今年の九月末での金額だ。」
金額は収支プラス100万円となっている。
「まず、これまでの民泊の収益が50万円。
それに条例違反の罰金が100万円引かれて、マイナス50万円だ。
それに下水道の接続工事で50万円程度かかったもんだから、今は合計がマイナス100万円だ。
今後は毎月、1万円かける6人かける30日で180万円の民泊収益が見込める。
ここに下水道代が140万円引かれるから、差し引き毎月40万円プラスになるという計算だ。
だから、四ヶ月後。つまり、九月末でプラス100万円になる。」
そうか、ジンベエザメやその社員さんたちがいる以上、損はないのか。新東名の工事も終わるのは約三年後と言っていた。当面は大丈夫だ。
そう、ほっとしていると、やれやれとジンベエザメがいう。
「しかし、こっから先は話がちがうぞトキさん。180日の壁だ。」
そうだった。
「十月は、マイナス40万円だ。そして、180日がリセットされる来年の四月まで、毎月140万円赤字が膨れていく。」
何処まで行っても、法律が立ち塞がる。そう感じた。
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