《土木文学》「戊辰鳥 後を濁さず」第28話
四月十一日(木)
「だからこその民泊なんだよ。」
そう言って、どうだ最新の強いスマホは。といった感じで堂々と、モグラは神奈川県のホームページを見せてくれた。
なるほど、農業用水路にそのまま垂れ流せば問題になるが、あえて露天風呂にし、民泊を営むことで、お金を生み出しつつ、法律の穴を抜けていく。と、そういう算段だ。
モグラにしては抜けがない。
今は、MMに三つあるという塔の一つを目指す旅の途中だ。相鉄線に乗ったら、ワラビーに登録しようとモグラが言ってくる。一度決めたら言うことを聞かない。トラ急線から相鉄線へ乗り換える海老名駅の長いコンコースの間ずっと言っている。
ワラビーとは民泊版のマッチングアプリだ。このアプリで惹かれ合うのは、部屋や家を民泊で誰かに宿泊させたいという家主と、部屋や家に宿泊したいという旅行者だ。そのお互いのニーズをマッチさせたワラビーはその紹介料として宿泊料から15%程度のマージンを持っていく。なかなかエグい取り分だが、今現在、他に民泊施設の情報を得るには保険福祉事務所に問い合わせるぐらいしか方法はなく、国外企業の独占状態となっている。
良い点としては、海外ユーザーが多く、インバウンドの恩恵を狙えることと、シンプルなシステムで、フォームが整理されているため、外国語に馴染みがない人でも、アプリ内で一通り契約まで結ぶことができるところだ。
試しに登録しようとするが、登録するには、民泊事業者登録申請の届出番号が必要と書いてある。その届出をしに、今日、建物の真ん中に塔が聳える神奈川県庁に向かっている。しかも、番号が与えられるまで一週間くらいはかかるらしい。それを伝えたらモグラはようやく落ち着いた。
横浜駅で乗り換え、みなとみらい線の電車を降りると、
「塔を目指すぞ!」と、モグラは意気込んでいたが、県庁といっても担当部署は西庁舎という別棟で、散々歩いて探す羽目になり、実際はなんてことはないただの普通のビルだった。
モグラのことは毎度のことだから慣れてはいるが、おかげでMMのことは大変詳しくなれました。
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