それでもカブは抜けない話
「それでもカブは抜けない。」
これは、創作大賞2024に応募した僕の小説を友人に呼んでもらった時の感想です。
友人は、共に大学で土木を志し、共に役所に就いた男性です。
「おじさんがおじさんを呼んできて、そのおじさんがまた別のおじさんを呼んできて、うんとこしょ。どっこいしょ。するんだけれど、カブは抜けない話だよね。カブというか、こんがらがったさつまいもだけど。」
僕はこの感想が好きです。
とにかく最後まで読んでくれたことが伝わって嬉しかったです。
街づくりって、社会問題と向き合わないといけませんし、正解は一つではないと思います。そういう社会のこんがらがった窮屈なところは表現できたのかなと思います。
母親にも読んでもらいました。
「もっとおどろおどろしい呪詛にまみれた文章を書くのかと思っていた。
あんたが馬鹿ではないことが初めてわかった。
いい友達や先輩に恵まれたんだね。
けれど、馬鹿ではないから、自分が馬鹿だと分かってしまって、辛いんだよね。
ごめんね。」
母親はあえて斜めから意見を言う人なので、気にしないですが、母親の知らない僕の一面を開示できて、嬉しかったです。
僕は生きるのがしんどいですし、社会のためになれた!という経験も乏しいですし、むしろ社会のコストになっていると思います。
それが分かった上でも、死を選んだりしない。
落ち込んだりして迷惑はかけますが、行動はやめない。
それを小説という形で伝えることができてよかった。
お仕事小説が単なる職場へのグチにならず、行動することの大切さを示せてよかったと思います。
母親には辛い内容であったハズです。それでも読んでくれました。
ありがとう。
地元の親友であるトキにも読んでもらいました。
「カルピスの源泉。ただしこれは設定集だよ。冷まして薄めて醸し出す程度にしないとね。」
その通りだと思います。
僕はお仕事小説を理解していませんでした。
お仕事小説とは、お仕事にまつわる話の中で、ミステリーやヒューマンドラマや青春やほのぼのやサクセスストーリーみたいな要素があって、そこに感動や、胸打つものがあるべきで。結果的に仕事を頑張ろうかなとなるような感想を読者に委ねるべきです。
僕の小説は、こんなことがありました。そしたらこんなことに波及して。と、お仕事を中心にお仕事の事実が展開されていて、お仕事の解像度や複雑さは高いけれど、そこにまつわる人間味がない。
心理描写が少なく、専門的すぎて尚且つ検証しかしておらず、一般的ではないので視覚的に情報が立ち上がらなく、読者が置いてきぼり。
そしてさらに。
唯一、謎が多いけれど頑張り屋で、なんだかんだイイ奴に描けたモグラが、突然なんの脈略もなく死ぬという展開。
さらにさらに。
その後は、私のお仕事観を押し付けるような展開で、結局、話は収束せず、理想を語っておしまいで、煮え切らない。
どうしようもない。
落ち込んできたので、私の高校生の時のエピソードを話します。
美術の授業で自画像を描き、その絵はクラスの何枚かに選ばれ、渡り廊下に展示されました。
笑顔を描きました。
ただ、ダイナミックに上半身を描いたので構図が不安定になってしまい、油彩だったので背景を厚く塗って誤魔化しました。
色合いは、サッカーコートの緑色とユニフォームの青と白、時折ピンクを混ぜました。ただ、茶色で描いた下地がところどころ透けて、なんとも不安定な絵だったことを覚えています。
渡り廊下と言っても、校舎の隅の方の美術教室に近い渡り廊下だったので、歩く人は少なく、すっかりそのことを忘れていました。
職員室の前をたまたま通りかかった時でした。
自分が教わってない名前も知らない先生から、
「もしかして、モグラくん?」
と声をかけられました。
そうだと答えると、その先生は去り際に、
「ピエロは泣きながら笑うのよね。」
と言いました。
いいんです。なんと言われようが。
面白く言われようが、哀れに思われようが、言って気持ちよくなられようが。
ただ、感想が欲しいです。
感想を言ってもらえるように。そのレベルになるように頑張ります。
この小説の主人公は今年36歳になります。
戊辰生まれなので、それをタイトルに入れました。
36歳が終わるまで、一年以上あります。
なので、この一年間この小説に向き合います。
大胆に改稿します。
たくさん小説を読みます。
自信を持って読んでもらえるようになるまで練ります。
今回は、大事な人に、小説とも言えない「単なる僕の話」を読んでもらえたことが嬉しいです。今回はそれだけでよかったと思います。
読んでくださった方ありがとうございました。