科学が解き明かす恋愛のメカニズム:心理学と生物学の視点から (a-2)
そもそも恋愛とは何かを考えたい。まず、ヴィクトル・ユーゴーの言葉を借りて恋愛を表現してみる。
「これだけは忘れないで。誰かを愛することは、神さまの顔を見れたようなもの」
この表現は、愛することの神秘性と深遠さを示しています。愛するということは、ただの感情以上のものであり、人間の経験の中で最も神聖なものの一つと言えるでしょう。しかし、この詩的な表現が難しいと感じる人もいるかもしれません。そこで、恋愛のメカニズムを科学的に見てみましょう。
恋愛の科学
インディアナ大学の研究で行われた実験を紹介します。この研究では、恋愛中の17人を対象にMRI検査を実施し、恋人の写真を見せたところ、脳内の「報酬系」と呼ばれる神経回路が活発化し、ドーパミンが分泌されることが確認されました 。
ドーパミンとは、快感や幸福感を感じるときに分泌される神経伝達物質です。新しい刺激や初めての経験をしたときに大量に分泌されることが知られています 。
恋愛中の脳の活動
恋愛中に脳で何が起こっているのかをもう少し詳しく見てみましょう。以下のような脳の活動が報告されています:
報酬系の活性化:恋人の写真を見ると、脳の報酬系が活性化し、ドーパミンが分泌されます。これは恋愛中の快感や幸福感をもたらします。
オキシトシンとバソプレシン:これらのホルモンも恋愛中に重要な役割を果たします。オキシトシンは「愛のホルモン」として知られ、親密さや絆を強めます。バソプレシンは特に男性において社会的行動や絆形成に関与します。
恋愛と長期的な関係
長期的な関係においても、これらの神経伝達物質は重要な役割を果たします。ドーパミンは関係の初期段階で強く作用しますが、長期的な関係においては、オキシトシンやバソプレシンが絆を維持する役割を果たします。
さらに、持続可能な関係を築くためには、信頼、コミュニケーション、共通の価値観なども重要です。科学的な視点から見ると、これらの要素が強い絆を形成し、恋愛を持続可能なものにするために必要です。
つまり、このドーパミンが大量に分泌された状態の時、人は幸せを感じ、快適さ(気持ちの良さ)を味わいます。そのため、ドーパミンは「ハッピーホルモン」とも呼ばれています。人生の生きる意味について尋ねられたとき、「幸せになるため」といった回答をよく耳にしますが、これは「ドーパミンを多く分泌させ、快感や幸福感を得るため」とも少なからず言い換えられるのではないでしょうか。もちろん、幸せの定義は人それぞれですが。
ドーパミンとアドレナリン
ドーパミンが分泌された後、次に分泌されるのがアドレナリンです。アドレナリンはやる気を引き起こすホルモンであり、幸福感を味わった後には何かしらやる気が出てくるのです。このおかげで、勉強や仕事が辛くても頑張れる原動力となります。
恋愛の負の側面
恋愛には多くの良い面がありますが、良いことと悪いことはコインの裏表のように表裏一体であると考えます。ここでは、恋愛における負の側面についても考えてみましょう。
インディアナ大学の実験で、恋愛中に活性化される脳の部分について見てきました。恋愛時に活性化するのは、腹側被蓋野(ふくそくひがいや)と尾状核という、原始的な脳に該当するエリアです。これにより、恋愛感情が動物的な欲求に基づくものであることがわかります。
恋愛と原始的な欲求
恋愛感情が動物的な欲求に基づいていることは、恋愛の持つ原始的な本能的側面を示しています。ある恋愛解説YouTuberも、恋愛について次のように述べています:
「恋愛は、本能的な欲求が強く作用する現象であり、理性的な判断を超えた感情的な体験である。」
このように、恋愛には感情の高まりや幸福感をもたらす一方で、原始的な欲求が関与する側面も存在します。恋愛の複雑さを理解するためには、これらの両面を考慮することが重要です。
また、恋愛が脳に与える影響については、前頭葉が重要な役割を果たしています。恋愛中に前頭葉が抑制されると、判断基準があいまいになり、判断自体をやめてしまうことがあります。さらに、相手に対して負の感情を抱きにくくなるともされています。つまり、恋愛をしているときには、恋人の良し悪しを判断できないうえに、相手を否定する感情が起こらなくなるのです。
これに加えて、ドーパミン報酬系が活性化されると、恋人にますますのめり込むという図式が完成します。時折、テレビの事件報道でカップルによる犯罪が目に付くことがありますが、この考えを当てはめると、どちらか一方が誤った判断をしていても、その善悪の判断ができなくなり、制止することができない状態であるということなのでしょう。
補足として、恋愛中に活性化される脳の部分としては、腹側被蓋野(ふくそくひがいや)や尾状核が知られています。これらの部分は、快感や報酬を感じるための神経回路を形成しており、ドーパミンの分泌を促進します。このように、恋愛は脳の生物学的メカニズムによって強く影響される現象であり、その影響は時に判断力の低下や行動の抑制につながることがあります。