美容室、その後
髪の毛が根元から栗色に染まり、空は鈍色であるが上機嫌なわたしであった。
施術中もマスクの着用をお願いしたいとのことで、入店してそれを知るなり、キャンセルして帰りたい度は70%まではねあがった。
お願いするようになったのは、ほんの数週間前だと、隣の席に座っているおばさまと美容師さんの会話が耳に入り、自分の美容室へ向かう腰の重さを呪う。
ヘアカラーをする際に、頭皮へのダメージを軽減するための薬剤を塗ってもらう。
持ち込んだ本を読み始める。
椅子に座って10分ほどで、マスクによる酸欠で目眩を起こす。
「喋らず本を読み続けるのでマスクを外させてほしい」と美容師さんに請うと、快諾してくれて涙ぐむ。
今回、長時間座ることへの拘束感や、カラー剤のニオイによる体調不良対策のため、ブラジャーをつけずに入店した。背に腹は代えられない。
この日のために備えられていたのか、わたしの胸は豊満という部類ではないため、何の問題はない。
けれど、ヘアカラーに対して緊張すればするほど、先っぽの主張は強くなるため、メイク落としに使っているコットンを2枚重ねにし、セロテープでキャミソールに張り付けて入店した(酸欠などでお店に迷惑をかけないための対策なのでどうか引かないでほしい)。
その対策のおかげか、今回のヘアカラーは、序盤でマスクで酸欠になったのみで事なきを得た。
染まり待ちの間に温かい緑茶を頂いたが、トイレには行かなかった。
なお、麦茶は冷えているものならあったようなのだが、冷たい飲み物だとすぐにお腹を壊すので泣く泣く諦めた。
読書もサクサク進み、あと1/5ほどで読み終わる。
髪の毛は "ミルキー" という、やや霞がかっているような甘い茶色に染まった。
ヘアカラーを乗り越えた自分へのご褒美として、種類豊富で美味しいと評判なパン屋へ向かおうと、ナビを起動する(車で30分のところだがあまり行かないので道がわからない)。
トイレに行きたくなり、コンビニエンスストアに立ち寄る。
ぐるっと店内を見回すと、"しっとりたまご蒸しパン" と目が合う。
わたしは視線を逸らそうと試みたが、向こうはがっちりとわたしのことを睨んでくる。
お気に入りの "たことブロッコリーバジルサラダ" が売れ残っているのも発見する。
nanacoをピロンと鳴らし、ナビを閉じてすごすごと帰宅する。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?