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大欅の伐採

2022年末、実家の飯川町公民館にあった大欅を伐採するというニュースを知りました。この木は1991年(平成3年)に日本列島を襲った台風19号によって大欅の上部が裂けてしまい、次もし大きな台風が来てしまった場合には木が倒れてしまう危険がありました。また年々大欅が弱ってきていることは町民の心配事でした。

伐採の理由は納得のいくものでした。ただ、子どものときからよく通って遊んだ公民館の端にいつもたたずんでいた圧倒的な存在感の大欅がなくなってしまうことに対して、残念という言葉では言い足りない気持ちもありました。木登りするようなスケールの木でもなかったのですが、ただその存在が大きかったのです。

毎回実家に帰省するときはこの公民館のある飯川町バス停までタクシーで行き、必ず大欅の写真をとっていました。毎回季節や天気が異なり、また自分の気持ちも微妙に変化があるので、写真も自ずと違ったものになるのです。

すでに伐採がなされた後の2022年12月28日に帰省し、いつもと同じように飯川町バス停に降り立ちました。タクシーから降りる直前になって大粒の冷たい雨が降ってきました。近くの郵便局には父親が車で迎えに来てくれていましたが、まず大欅を見に行きました。

空は日が落ち既に暗くなっていたのですが、大きな大欅の幹がそこにしっかりと立っているのがわかりました。伐採したのは避けてしまった上部の部分だけであり、そこで相変わらずの存在感を放っていたのです。

かつて大欅の近くによって空をみあげたときにあった四方八方に伸びる枝や葉の多くは伐採されてなくなってしまっていましたが、少しだけ細い枝も残されていました。きっとこれからは新芽をめぶき、いつの日か緑の葉も茂らせてくれるはずです。

ここ数年で自分のかつて通った朝日中学校は取り壊され、そこに名前も新たに朝日小学校が建てられました。しばらく残っていた徳田小学校も農協により買い取られ、取り壊された後には趣のない建物にとってかわられました。今ここにある飯川公民館も新しく建て直されました。耐震や用途の変化を考えると逆らことのできない流れではあります。

建築物が取り壊されたり新しくなる度に、二度と戻ることのない時代や時間のことを思います。そんな中でこの大欅はその姿を変えながら、これからもそこに立ち続けていてくれるのです。

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