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土井善晴『一汁一菜でよいという提案』を提案する 原田泰稔

 明けましておめでとうございます。はじまったばかりの活動でまだまだやれるぞと気合いをみせていきたいOo(ウー)二号です。
しかし、創刊号の掲載に気合いを入れすぎた結果おどろくほど早いガス欠をおこすこととなりました。このままだと僕自身の次の記事がかけない。そこで逆転の発想ともつかない苦肉の発想が思い浮かびました。Ooで記事を書いてくれているグリニャンコの"ゆるさ"に負けない全体的にゆるゆるの号があってもいいのではないか。ゆっくりとした本の紹介こそがみんなの興味をもっとも掻きたててくれるのではないかと。そこで今回は文章を書く中で読んだこれはという選りすぐりの本を"ゆるめ"に紹介します。食を考える上でお役にたてればとおもいます。

 原田

 土井善晴『一汁一菜でよいという提案』はタイトルからして異色に思える。一汁三菜というのは聞いたことがある。家庭科の授業で習ったかどうかという程度では知識はあるし、なんとなく頭に画は浮かぶが、その詳細は知らない。ご飯と味噌汁があって、あと魚とかがありそうといった解像度の粗さで、残りの二品にはきっちりモザイクがかかっている。

そんな僕に土井善晴はとっておきの提案をしてくれた。タイトル『一汁一菜でよいという提案』の魅力はたんに三菜から二品を引くばかりでなく、ほとんど完璧とおもわせるような一汁三菜という型そのものを崩すあるいは無視させることを示し、けっしてあなたにとって変わろうとなんてしていませんよというような訴えかけを提案という形で表現している。その姿勢に多くのひとが耳を傾けてくれるだろう。

なかでもキーワードである一汁一菜の魅力はそれだけではない。一汁一菜はことばとして語呂が異様にいい。一と一が反復している様はポップスの歌詞やラップの快楽をおもわせ、語呂だけで行くと一汁三菜にも勝るとも劣らない。試しにいちど声に出して唱えてみてもいいだろう。そのあとに一汁三菜といってみよう。どうだろうか。
さんさい(sansai)の助長ともいえる長さとかつぜつを試されているような言いにくさに驚いたのではないだろうか。もはやどちらが提案でどちらが提案を受ける側だったのかあるいは何の提案だったのかすら怪しくなってきた。一汁〇菜とクイズ番組で観たときには一汁一菜があたまをよぎらずにはいられない。

こうやって僕たちの頭の中を侵略し、「あれ一汁一菜と一汁三菜てどっちだったっけ。」「たしか...あれ?どっちだろう」と友達との会話にも入り込み、しまいには三菜の声に出しにくさが仇となり一汁一菜に軍配が上がるのだ。それを見越してか土井善晴はタイトルに「一汁一菜でよいという提案」と名づけた。
ここまで読むと一汁一菜とはいったいなんなのか気になって仕方がないだろう。あなたは一汁一菜のもつ魅惑の片鱗に何度も触れてしまったのだ。
だからといって苦しむ心配はない。本書を買って読めばいいのだ。今すぐあらゆる手段を駆使してamazonのカートに放り込む。ここで油断してはいけない、決済もきっちり済せるそうすれば明日には届くだろう。
頭もスッキリしてきっとご飯もすすむことだ。

土井善晴『一汁一菜でよいという提案』
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