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生でサバを食べた話 レプンカムイ

「海の幸」と聞いてまず頭に浮かぶのは何だろうか

マグロ、ウニ、ホタテ…

様々な魚が頭に浮かんでくるであろうが、そのほとんどが刺身などの「生」を連想するのではないだろうか

日本の生食文化は歴史が長く、海鮮以外にも多くの食材を生で食べる風習がある

最近、大学の研究の関係で鹿児島県へ訪れた

鹿児島県といえば「鳥刺し」が有名な生食大国である

勿論、到着した日に美味しくいただいたが、本命はやはり海の幸であった


今回訪れたのは、ブリの一大ブランド“鰤王”を生産する、鹿児島県長島町だ

水揚げしたてのブリは、噛む歯をはじき返すほどの弾力と、醤油に膜を張るほどの脂、そしてしびれる程の旨味を蓄えていた

養殖業界で最も生産されているブリであるが、長島町はブリだけではない

「むじょかサバ(むじょか:長島の言葉でかわいい)」という生食のサバがあるのだ

こちらも頂いたが、コリコリとした食感と旨味に加え、最後に残るサバの風味が、鹿児島の甘い醤油と、長島産の芋焼酎“島美人”に合う逸品である

しかしながら生食に切っても切れないのが、食中毒である

特に、海の幸においては「アニサキス」という寄生虫が大きな障壁となっている

「アニサキス」は、その多くが小型の魚に寄生し、食物連鎖を経て人間へと到達し、一度食べてしまうと、高確率で胃や腸の内壁に咬みつき激痛を起こす原因となる

その痛みは、救急車で緊急搬送されることもある程だ

通常、冷凍や十分な加熱処理によって食べても問題ない状態になるのだが、これらのブリやサバは、水揚げ直後から特別な処理無しに食することが可能なのだ

最近では、魚肉に電気ショックを与えることで、生に近いままアニサキスを処理する技術も開発されている(よく噛むことで食中毒の危険性を下げることも可能であるが…)

なぜ処理無く生食が可能であるか

それは、完全に養殖された個体でなければ不可能なことである

本来、アニサキスは小型魚類などに寄生し、食物連鎖によって人間が食べる程の大きさの魚にまで寄生していく

つまり、人工のエサを与える養殖の魚では、寄生の余地が無いのだ

近年では、アニサキスによる食中毒被害も増えている中で、養殖業が解決の糸口になるのではないだろうか

どのような形であれ、海の幸のおいしさは変わらないが、やはり「生の旨味」に勝るものはないだろう

鹿児島県の豊かな海で育ったブリ、サバを是非ご賞味あれ…


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