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小学32年生のテレビ批評~あらゆる変化を伝えながら終焉を迎えた『恋のから騒ぎ』


『恋のから騒ぎ』とは?

1994年4月から2011年3月まで日本テレビ系列で放送されていた明石家さんまさんと素人女性たち(20人くらい?)のトークバラエティです。
毎年4月にメンバーをフルチェンジするのが特徴で、年度の最後は「ご卒業スペシャル」として1年間をVTRで振り返りながらその年のMVPを決めるのが恒例でした。

小学生の自分にとっては「オトナの番組」

私のこの番組との出会いは小学6年生、1998年のことでした。
週末は23時過ぎまでの夜更かしが常態化しだしたこの頃、土曜の23時台のお気に入りはフジテレビの『ハンマープライス』でした。その裏番組だったのが『恋のから騒ぎ』。『ハンマープライス』CM中にザッピングをしてめぐり逢いました。

ゴールデンのバラエティで明るく楽しく笑わせてるさんまさんが、ちょっと高級感のあるセットで素人の女性達と恋愛トークをしている番組に「なんか、オトナな感じ…」と思ったのです。
しかしながら小学生なのでトーク内容を楽しむというより、キャラの濃い女性の面白さにひかれてついつい見てた記憶がします。
当時は5期生の時代。「水戸泉」というあだ名をつけられた荒井瞳さんがとにかく面白かった思い出があります。

ハンマープライスの終了後は、基本土曜の23時台は恋からを見るようになり、最後の17期まで見届けました。(最終年度は金曜夜での放送)

この番組のおかげで、私の中にしっかりと女性への恐怖心が根付き、モテない人生を邁進することになります。

番組の変化①エピソードの小粒化

私が見始めた頃は1998年。出演女性は18歳~30歳。バブル崩壊からそれなりに月日は経過し、前年には山一、拓銀の破綻もあり経済というか世の中全体がなんとなく不安定な頃だった気がします。
しかしながら派手な時代を経験した女性たちが繰り出す、欲望のままに生きる愛すべき男たちのエピソードがこの番組の面白さの1つでした。

「不倫している男性から毎月100万円以上もらっている」「マンションをプレゼントされたが一戸建てが欲しいからフッてやった」「別れの手切れ金に1300万円もらった」そんなとんでもエピソードが繰り出されます。
もちろんバブリーなものだけでなく「資産家の御曹司だという彼氏の肩書も何もかもが全部嘘だった」「海に投げ捨てられた」という衝撃的な恋愛話も。

私が大学生くらいになると「草食系男子」なる言葉が流行り出します。本当かどうかはわかりませんが、恋愛に消極的な男性が増えてきたというのです。これは『恋のから騒ぎ』にとっては死活問題です。あの手この手で女の子を落としたい、そこから素晴らしいエピソードが生まれて来たわけですから。

こんな高いプレゼントをもらった、こんなアホな口説き方された、そんな番組の根幹を担うエピソードが、不景気、男性の草食化によってどんどん生まれにくくなってきます。

これについてはさんまさんも終了後にラジオか何かで嘆いていた気がします。

そしてこの変化はこんなところに影響していきます。

番組の変化②出演女性がキャラクター重視に

エピソードが小粒なら、女性のキャラクターで面白くするしかない、と制作側が本当にそう思っていたかはわかりませんが、見た目やしゃべり方などキャラクターに特徴がある女性の比重が高くなっていきます。

毎年オーディションを行い、メンバーを選出するのですが、「キャラだけで選んでるな…」と感じずにはいられない出演者が増えてきます。

私が見始めた頃もキャラでMVP持ってったな~という人はいました。それこそ5期の「水戸泉」さんなんかはキャラが抜群でしたが、そのキャラも活かした?悲しい恋のエピソードをたくさん披露していたトークとキャラが両立していた気がします。

8期かそのあたりで過去のMVPを振り返る話になった時に、さんまさんが「今泉が本当のMVPや、1年間ずっとしょうもない男に振り回されて騙された話をしてくれたからな」みたいなことを言っているのを覚えています。
「今泉」というのは6期のMVPの今泉さんです。当時大学1年生でタメ口で生意気なキャラクターでしたが、前段で触れた「資産家の御曹司」という肩書の彼氏とのエピソードを披露し続けMVPを獲得しました。
この番組ではさんまさんが女性たちを様々なあだ名で呼ぶことが多いのですが、ちゃんとエピソードで笑いを取れる人は普通に苗字で呼ぶケースが多い気がします。この今泉さんもその一人ですね。

しかし、恋愛トークではなく、キャラクターの面白さやおバカ発言など恋愛要素以外で番組の面白さをカバーする傾向が強まっていきます。

個人的には10期で「彦六師匠」と呼ばれた加藤恵美さんがMVPを獲ったことが番組後期の方向性を決定づけた気がします。「彦六師匠」は独特のオーラとしゃべり方など、恋愛トークゼロでMVPになってしまいました。MVPはゲスト審査員が総集編のVTRを見て決めるのでしょうがないのですが、トークでしっかり笑いを取っていた女性が他にいたので、このMVPは納得いかなかったです。

これ以降、キャラ勝ちでMVPを獲得する例が続出します。個人的には10期以降でトークでMVP勝ち取ったのは現在、議員をやられている塩村文夏さんぐらいだと思っています。ネットでも「恋のキャラ騒ぎ」と揶揄されるようになります。

番組の変化③さんまさんの高齢化

放送開始時のさんまさんは40歳くらい。出演女性よりちょっと大人で恋愛の先輩として説教したり、男性代表として意見したり、そんな構図で楽しめました。
しかし、出演女性が毎年入れ替わるのがこの番組。さんまさんだけどんどん年を重ねていくため、ジェネレーションギャップが顕著になっていき、次第に自分の娘に近い年齢の女性たちとのトークバトルになるため、初期の構図からどんどんずれが出てきます。恋愛がテーマの番組のため、若々しいとは言え50歳を過ぎた男性と20代の女性たちのトークはリアリティもなくなっていきます。
さんまさんも当時、「もう50ちゃい、半世紀ちゃんや」と自虐的に言っていましたが、出演女性を自分の娘だったら、みたいな目線で見るようになってしまいすし、恋愛トークだと下ネタも多少ありますが、出演者との年齢差が広がれば広がるほどちょっとキツさも出てきます。
他のバラエティでは気にならない部分でも「恋愛」がテーマであることで、さんまさんの高齢化はこの番組にとって足かせになっていきます。

そして迎えた番組の終焉

晩期になると毎年、年度の初回や最終回でさんまさんも「この番組いつまでやんねやろ」とぼやくようになります。
視聴者も同じ気持ちだったと思います。

毎年出演者が入れ替わり、1年間を通してトーク力やキャラが磨かれ面白いメンバーに成長して卒業していく、という番組の仕組みが幸いし、致命的なマンネリは避けられ長続きしていた気がします。

5月、6月くらいまでは、やっぱり盛り上がりにかける回が多く、視聴を離脱したくなるのですが、夏を過ぎると面白くなってきて卒業まで見届けられるようになる、そんな感じで10年近く見てきた私も14期くらいからはかなりキツくなってきます。

放送時間も土曜から金曜になった最後の17期(2010年度)、CMに入るタイミングなども変わったりしましたが、もう限界でした。どの時期に放送終了が決まったのかわかりませんが、スタッフのモチベーションも低かったのか、全く番組が面白くなっていきません。社会人になり忙しくなったこともありますが、見ない週もかなり多かったです。

最終回のスペシャルは17期の総集編半分、17年分の総集編半分の1時間でした。30分程度の17期の総集編もこの尺が限界だなという感じでした。17年分の総集編1時間見たかったな…という気持ちで番組とお別れしました。

最後のMVPは高飛車で世代じゃないのにバブルの残り香がする「池袋」と呼ばれた佐藤綾香さんでした。「子供の頃からずっと『恋から』を見てきて、こういうお姉さんたちみたいになりたいな~と思ってたらこんなになっちゃった」というコメントをしていて、最後のMVPにはふさわしいとは思いました。
しかし、高飛車とかバブル感とかは『恋のから騒ぎ』出演者のスタンダードであり、そんなメンバーたちでしのぎを削ってMVPが選ばれるはずが、たった一人の「恋からスタンダード」が目立ってMVPを獲ってしまうのだから、これはもう続けられないよなと思ったものです。

復活することはできない番組

根強いファンも多かった番組なので、復活を望む声はありますが、令和の時代ではまず無理でしょう。(卒業生による同窓会SP的なものは何回かやっている)

番組では不倫についても堂々とトークしていましたがこれも今はSNSが許さないでしょう。さんまさんが女性たちにひどいあだ名をつけたり、ブス、デブ、アホ、といった強烈なツッコミや、タイプの女性を露骨に贔屓したり、セクハラ発言なんかも番組のスパイスになっていましたが、これも時代に合っていませんね。

当時もそれなりに批判はあった番組ですが、面白さを構成するわりと重要な要素が令和ではアウトです。番組も出演者も大炎上ですね。
なので、あの頃のままに復活というのはもう無理でしょう。
さんまさんも来年で70歳です。

伝説の番組はいつまでも胸の中に…

様々な変化で終焉を迎えた番組でしたが、さんまさんのスキルが如何なく発揮された番組で、私の中ではさんまさんが一番面白くて輝いていた番組だったと思います。私の恋愛観や内輪でのトークにも強く影響を与えた伝説の番組です。素敵なテレビの思い出としていつまでも胸の中で輝きつづけることでしょう。

機会があれば、思い出の出演者などについても綴りたいと思います。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。



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