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技術同人誌を書くときに、ちょっと知っておくとイイコト(上級者編その2)

技術書界隈を盛り上げる会にて、登壇する予定(2020年6月12日21時)ですが、時間には限りがあるので、アジェンダから漏れた話を適当に書いておきます。
なので、「初心者編「中級者編」「上級者編その1」はまだ存在しません。登壇した内容をそのうちまとめておきます。

技術書界隈を盛り上げる会 #6 (モウフカブール)
https://gijutsusyo.connpass.com/event/178167/

さて、技術同人誌を書くときには、表記に気をつけたり、ツールを使ったりすると、品質が上がります。ここでは、すぐに実現できそうなところを紹介します。

「ひらがな? それとも漢字?」――表記について

商業誌では、いくつかの表記ルールがあります。同人誌ですから、守る必要はありませんが、守ると統一感が出て、見やすくなります。

いろんな出版社で参考に使われているのが、「記者ハンドブック」という共同通信社が出している書籍です。

「漢字とひらがなの使い分け」とか「送り仮名」とか、そうしたルールについて記載されています。これをベースとして、基準を決める出版社が多いです。

こんなこと知っておくといいということを、以下に3つほど挙げます。だいたい、僕は、次のような指針で書いています。

・副詞はひらがな
「まったく」「ときどき」などの副詞は、基本、ひらがなで書きます(「全く」「時々」としない)。
ちなみに「漢字かひらがなか」は、文部科学省が、「公⽤⽂における漢字使⽤等について」というドキュメントを出していて、こちらは公用文なので、ちょっとルールが違います。たとえば、「まったく」は漢字で「全く」と書くことになっています。
見やすさや好みで決めればいいと思いますが、文章中で、どちらを使うかを決めたら、統一したほうがいいのは、言うまでもありません。
こうしたルールは、意外と変わるもので、少し前までは、「たとえば」と書いていましたが、いまは「例えば」と書くことが多くなった気がします。

・「いろいろ」は「さまざま」と書く
とくに指針があるわけではないのですが、「いろいろ」は口語的なので「さまざま」と書くことが多いです。

・「行う」を避ける
「行う」は便利な言葉なのですが、冗長になりやすいので、「する」にします。たとえば「設定を行う」は「設定する」と書けますし、そのほうがすっきりします。

大澤はわりときっちり守ります。小笠原は気にせずに書いて編集さんに直してもらおうという心づもりなようです。

「なります」って本当になるの?

「なります」は、「そうなる」のか「私たちが、そうしなければならないのか」がわかりにくいので、場合によっては、避けたほうがよいかも知れません。

たとえば、「Aを実行するコマンドは、次のようになります。」とかです。これは、「Aを実行するコマンドは、次の通りです」とか、「Aを実行するには、次のコマンドを実行します。」のほうが、たぶん、適切です。

「なります」というのは、実行の結果、そうなる場合、たとえば、「コマンドXを実行すると、Aとなります」、のように、結果として表れるときだけにすると、わかりやすくなります。

ただ実際問題として、「なります」というのは、婉曲表現として(「おつりは50円になります」とか)、体に染みこんでいる人も多いでしょう。気にしすぎると、文章の内容まで回らなくなるので、これについては、書いているときではなくて、校正のときに気にするのがよいと思います。

「初校」「再校」「念校」でフィニッシュ――執筆からレイアウト、完成までの流れ

商業誌では、最初のレイアウトしたものが出たものを「初校」と言い、それを修正したものが「再校」、それをさらに修正し、最後に確認のために「3校(念校)」というのを出して、完了(校了)という流れをとります。
場合によっては、3校の後に4校、5校と出ることもあります。

原稿を入稿→初校→再校→念校→(印刷所に入校)(色校)→(印刷工程)

レイアウト後に直すと、手間が増えるので、文章はできるだけテキストの状態(レイアウトしない状態)で直して、ほぼ完成というところでレイアウトし始めるほうがよいと思います。そうしないと、「文章の中身を考える作業」と「レイアウトを考える作業」が、一緒になって、頭のなかがごちゃごちゃします。レイアウトまで進んだら、中身については考えず、見栄えだけについて考えていくというのが理想です。
もしくはレイアウトを先に考えておき、レイアウトのことは一切忘れて原稿を進めていく順番でも良いでしょう。とにかく、「文章」と「レイアウト」を同時に考えないことです。

が、実際は、そうもなかなかゆきませんので、初校から再校までは、文章を追加したり、削除したりする作業をすることになるでしょう(商業誌の場合は、大きなレイアウトのし直しになって、DTP屋さんの負担を大きくするるので基本NGですが、同人なら自分でレイアウトするので、初校後に、大きな変更を加えても、許されるでしょう)。

その場合でも、再校以降は、レイアウトの修正のみの特化していくほうがよいと思います。いつまでも中身の修正に引っ張られると、なかなか完成しません。人生は思い切りが大事!!諦めも大事!!
商業誌と違って、同人誌は少部数ずつ出すのも可能なのですから、気になるようなら、イベントごとに改訂したって良いのです。

ということで、同人でも商業でも、文章や本のクオリティを上げるなら、「初校」→「再校」→「3校(念校)」の3回修正でFixという流れがよいと思います。ともかく、テキストの段階で文章は完成しておくことが大事です(もちろん、全体で何ページになるのかを、何度か仮組するというのは、アリです)。

赤字を間違えても消せる。校正の味方――「フリクションベン」

校正のときには赤ペンを使いますが、ご存じ消える「フリクションペン」を使うとやりやすいです。文章の推敲では、消せるのは大きな魅力です。
PDFで校正する方もいらっしゃいますが、僕らは全員紙に手書きで校正しています。そうでないと、どうも感触が掴めないのです。
なお、フリクションペンは、いろんな色があるので、同人誌の場合は、自分のルールを作って使い分けるのも良いでしょう。例えば、直すところは赤、検証したり調査が必要な箇所は青など。
フリクションの蛍光マーカーもあるので、マークアップ(BOLD)したいところに引いていくのも良いです。
なお、大きく消すときには、フリクションペン専用の消しゴムもあると便利です。意外と作業効率が違います。

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▲校正グッズの一部
普通のフェルトペンも大きく指定する時などに使う。付箋は、メンバーによって色が決まっており、誰がつけたかわかるようにしている。
大きい付箋は、図などを書き込む時などに重宝。メモ帳に書いてマスキングテープで貼ることもある。
初校再校のハンコは、どっちかすぐわかるように押している。
校正の時には手が乾いて紙をめくりづらくなるので、ハンドクリームか、メクールをつけている。
フリクション消しゴムは、先々週から行方不明。仕方ないので発注した。

覚えておくと便利な校正記号

校正のときには、「校正記号」を使います。線を引いて「トルツメ」って書いたりするものです。同人誌では、こうした校正記号を使う必要はありませんが、知っておくと便利です。

校正記号については、たくさんの書籍が出ていますし、Googleで検索すると、いくつかの例が出てきます。同人誌でも、校正記号を扱ったものがあります。たとえば、音引屋さん(@onbikiya)の「文章校正のしをり」なんて、なかなかよいと思います。

ツールを活用しよう

手作業で校正するのは、なかなかたいへんです。ですので、ツールを使いましょう。すでに同人誌界隈では、「textlint」というツールを使って自動チェックしている人もいると聞いています。こうしたツールを使うことは見落としを防ぐのに有用です。

僕は有償ソフトになりますが、ジャストシステムの「Just Right! Pro」を使っています。スペルミス、表記の揺れ(「ひとつ」「1つ」など)、固有名詞の指摘などをしてくれるので、たいへん便利です。

まとめ――労力をかけずに同人誌を作ろう

同人誌は、執筆からレイアウトまで自分でやることになるので、けっこう、たいへんです。できるだけ省力化しないと力尽きて、完成するものも完成しません。商業誌では、このように表記から制作までの流れまでルーチン化されています。商業誌の流れをチラっと知ることで、効率良く、本が作れるはずです。

一番大事なのは、本の内容ですが、ちょっとした工夫で本の売れ行きが変わるのも事実。
楽できるところは楽して、楽しく同人誌を作りましょう。





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