遠く苦い思ひで
XXXX年4月、小学校入学。
入学初日、担任に向かって「この人たちと集合写真撮りたくない!」と連呼する新入生は俺ぐらいだったろう。
もう10年以上、当時の担任と手紙でやり取りをしているのだが、この話のことになると今でも思わず笑ってしまう。
今思えば自分はそれぐらい、変わった子供だったんだと思う。
とまあ、相当な変人であったことは今と変わりがないのだが、そんな俺にも入学してすぐに友達ができた。
忘れもしない、YくんとWくんである。
Yくんはどちらかというと活発な性格で、勉強もスポーツもテレビゲームも何でもできる、といった感じの子だった。逆にWくんは大人しくて、そこにいるだけで人を和やかにさせるといった印象の子だった記憶がある。
最初はお互い近所の公民館で遊んでいたから、という理由で遊んでいたのだが、好きなゲームからマンガまで何でも合っていたのがきっかけだったのかもしれない。
知り合って1ヶ月後には学校で出された宿題も放り投げて毎日公民館で遊んでいた。
ケイドロ、ゲームボーイ(年齢バレそうw)、ポケモンカードゲーム。。
今の俺から見たらくだらないものばかりだが、当時の俺はとにかくこの3つの遊びにハマっていた。
この中でも特にハマっていたのが通信ケーブルを使ったポケモン交換。これに俺はどハマりしてYくんとWくんと3人で各々育てたポケモンを何度も何度も交換したのは今でも鮮明に記憶に残っている。
だが当時の俺はまだ思ってもいなかった。このポケモン交換が後々事件を引き起こすことになるとは……。
YくんとWくんと遊ぶようになって1年が過ぎた。
1年も経つと学校にも慣れ、俺の生活はさらに遊び一色になっていた。平日の放課後はゲームボーイを持って公民館でゲーム、休日はYくんの家でテレビゲーム。。
とにかくゲーム三昧。
毎日同じことの繰り返しで少し飽きを感じてきていた頃だった。
当時日本橋にあったポケモンセンターで「なみのり」という技を使うことのできるピカチュウを配布する、というイベントが開催されることを知った。
イベント初日、長蛇の列に並んでいた。確か夏のめちゃくちゃ暑い日だった気がする。それでも俺は並んだ。それぐらい「なみのりピカチュウ」が欲しかったのだろう。今でも「期間限定」とかの言葉に弱いのだが、当時からその兆しはあったのかもしれない。
なにはともあれ、俺はなみのりピカチュウを手に入れた。数日後、YくんとWくんと会った時、自慢してやるんだ。子供ながらそんなことを考えてしまったのが元凶だった。
「なみのりピカチュウ、いいだろ」
画面をチラつかせて誇らしげに自慢した。
するとそれまで笑っていたYくんの目の色が変わった。
「お前のゲーム機、よこせよ。」
俺のゲームボーイはあっという間に取り上げられた。何をされるのだろう。。
初めて人付き合いで恐怖を感じた瞬間だった。
するとYくんは俺のゲームボーイと自分のゲームボーイを通信ケーブルでつないだ。
ああ、こいつ、俺のポケモンを奪う気なんだ。確信した時には遅かった。俺が長蛇の列を並んで、やっとの思いで手に入れた波乗りピカチュウはほんの数分で奪われてしまったのである。
どうして?どうしてこんなことに……。
それから数日間はYくんと顔すら合わせたくなかったので、俺は学校を休んだ。
とはいってもずっと休んでるわけにもいかない。
学校に行くと予想していた通り、Yくんは何食わぬ顔で俺に話しかけてきた。
「お前のくれたなみのりピカチュウ、すごい使いやすいわw お前ゲーム上手くないし、俺が使った方がいいだろww ありがとなww」
その時だった。初めて人のことが憎いと思った。何言ってんだこいつ。俺のものはおめーのものじゃねぇんだよ。世の中全てお前の思い通りになると思うなよ。
それからおれはYくんを徹底的に無視するようになった。
するとすぐにYくんから報復ともとれるような仕打ちを受けることになった。学校近くの私有地に俺の上履きを投げ込まれたり、カードを破られたり、帰り道に追いかけてきて散々嬲られたり。。挙げたらキリがない。そのぐらい、Yくんは徹底して俺に嫌がらせをしていた。正直嫌がらせの範疇を超えていた気がしなくもないが。
それでも俺はめげなかった。何がなんでも関係を断ち切りたかった。
しぶとく無視を続けること数ヶ月。痺れをきらしたのかYくんは帰り道に俺を待ち伏せて、会うなり無視したことについて、散々問い詰めてきた。
「どうして無視すんだよ!どうせ俺たち以外に友達いないんだろ」
どうせこんなやつと関係を戻すことは不可能だ。だったら最後に一発、ガツンと言っちまうべきだ。
「散々まとわりついてきて、目障りなんだよ。二度と話しかけてくんな、気持ち悪い」
その一言で全てが終わった。その後、帰り道に追いかけられることもなくなったし、クラスも違ったので(都内の学校はクラスが少ないので毎年クラス替え!)学校でも一切顔を合わせなくなった。(正直、Wくんは本当にいい人だったので全く嫌ではなかったのだが、Yくんと親しい以上、関係を切らなければならなかったのが残念だった。)
どんなコミュニティに所属しようが、その中には必ずパワーバランスみたいなのがあって、それがちょっとでも揺らぐとまるで砂の城が崩れるようにあっという間に壊れていく。
幼いながらもそのことを自覚させられる出来事だった。
それからしばらくした後、色々あってYくんとWくんの取り巻きとは何の関係もないHくんと親しくなった。Hくんは本当に気さくに俺に接してくれて、後に俺が転校しても手紙をくれたりたまに会ってくれたりしてくれた。Hくんの家の前の道路で水鉄砲使ってずぶ濡れになるまで遊んだり、美味しいフルーツポンチをご馳走になったり。今でも本当に感謝している。
Hくんとはお互い大学に入った後も時たま会っていたのだが、最近では殆ど連絡を取ることも無くなってしまった。彼は元気にしているだろうか。
とまあ、酔っ払いながら文章を書いてみたけど、やっぱ上手く書けないねww