論文備忘録#4「アバターの身体は本当の自分に影響を与えるというプロテウス効果を提唱した論文」

🗒️ タイトル:The Proteus Effect: The Effect of Transformed Self-Representation on Behavior
🙋‍♂️ 書いた人:Nick Yee, Jeremy Bailenson
🔢 投稿された年:2007
📚 投稿された雑誌:Human Commucication Research
🔗 りんく:https://doi.org/10.1111/j.1468-2958.2007.00299.x

こからはあくまで論文メモです.情報を共有,利用する際には必ずご自身の目で確かめてから共有してください.




🤔一言でまとめると

バーチャルな見た目はリアルな行動に影響する.これをプロテウス効果といいます!

🛣️もう少し詳しくまとめる

これまでの研究

「外見を変える」という行為は自己のアイデンティティを示す方法としてわたしたちの文化に根付いている.加えて,近年では仮想環境でのアバターという誰もが簡単で柔軟に自己表現できる.
では,アバターの見た目は私たちの行動にどのような影響を与えるのか?
従来のCMC(computer-mediated communication)研究は,ソーシャルプレゼンスや社会的手掛かりの欠如がオンラインでの貧弱な社会的環境を生み出すことや,社会的相互作用を高める技術的な側面に焦点が当てられてきた. オンラインでの自己表現の柔軟性と可変性は重要な問題なのにも関わらず,これまで研究が行われてこなかった.
そこで本研究は,オンラインでの自己表現の変化が,他者との相互作用をどのように変えるのかを探求することを目的とする.

この研究の主張

プロテウス効果ていうのがあるのではないか !?
プロテウス効果とは,仮想環境における自分のアバター(仮想自己表現)の特徴が,実際の自分の行動や態度に影響を与える現象のこと.
この論文では2つの実験を通じてプロテウス効果の存在を実証する.

※ちなみに,プロテウスとはギリシャ神話のプロテウスでめちゃくちゃ自己変容ができる神らしい

方法と結果

2つの実験を実施した.

①アバターの魅力と対人距離・自己開示

■ 方法
アバターの魅力が異性のアバターとの対人距離に影響を与えるかを調査した. 参加者は魅力的,平均,非魅力的なアバターが割り当てられ,仮想空間内で異性のアバターと対峙する.その際に,アバターの魅力が対人距離と自己開示にどのような影響するのかを調査した.
アバターの見た目は以下の通り.

34名(男女17名ずつ)の学生のデジタル写真を用いて,3Dモデルを作成した.それぞれの顔について7点スケールで魅力の点数がつけられ,各性別で魅力的・平均・非魅力的の3つの顔が選ばれた.
参加者はこのいずれかのアバターを割り当てられ,仮想空間内で異性のアバターとのコミュニケーションを行った.その際に2つのデータ:①対人距離(HMDを利用したアバター間の距離),②自己開示の量 (「あなたについて教えて」と尋ねられた際の回答数)

■ 結果
対人距離:魅力的なアバターを割り当てられた参加者は魅力的でないアバターの参加者に比べて,相手に近づく (平均 0.98m vs 1.74m, p=.02)
自己開示:魅力的なアバターを割り当てられた参加者は魅力的ではないアバターの参加者と比べて,自己開示の量が多かった (平均 7.19 ピース vs 5.42 ピース, p=.03)

②アバターの身長と自信

■ 方法
アバターの身長が自信とそのアバターへの魅力にどのように影響するかを調査した. 参加者は高身長,平均,低身長のいずれかに割り当てられ,実験条件を知らない協力者とのゲームを行った. ※協力者(異性のアバター)に対して+10cm,0cm, -10cmを高身長,平均,低身長を定義.
ゲームの内容は,仮想の資源をどのように2人で分割するかを交渉するもの. 交渉の際に不公平な分割を提案する,もしくは相手からの不公平な提案を受け入れるかをもとに自身の度合いを評価した.
■ 結果
交渉の態度:身長の高いアバターを割り当てられた参加者は,低いアバターの参加者に対して,自身に有利になるような不公平な分割を提案する傾向があった(p=.004)
提案の受け入れ:身長が低いアバターの参加者は,不公平な提案を受け入れる確率が高かった(72% vs 38%)

結果のまとめと議論

魅力的なアバターを割り当てられた参加者は、魅力が低いとされるアバターの参加者よりも他者との距離を近く設定し、より多くの自己開示を行った。また、身長が高いアバターを持つ参加者は、より自信を持って交渉を行い、不公平な分配を提案する傾向があった。
この結果から,仮想環境における自分のアバター(仮想自己表現)の特徴が,実際の自分の行動や態度に影響を与える現象**「プロテウス効果」**の存在を示した.
一方で,我々は相手が期待する自分をふるまう心理プロセスを兼ね備える.これは一般に行動確認(Behavioral Confirmation)と呼ばれる.つまり,参加者の行動の変化が,相手(行動の知覚者)の期待からくるものだったかもしれない.今後の研究で,これらの相互作用を探るべきである.
また,一般的にアバターの選択は個人の自由である.アバター選択の自由度がプロテウス効果に影響を与えるかは不明.


個人的なコメント

この論文は,この後多くの研究につながるプロテウス効果の一次文献.読みたいなーと思って先延ばしにしていたのを,今回ChatGPTと一緒に読んでみた.
やっぱり面白い!この時は自己表現という切り口だったけど,個人的には見た目と心の無意識をつないだのが面白いなーと.つまり,心の変化が見た目を変えるというの主体的な変化もあるけど,見た目が変わると心も変わるっていう受動的な変化もある.
「よく失恋したから髪を切った」みたいなのがあるけど,反対に「髪を切ったら相手を好きじゃなくなった」みたいなこともありうるのではないか?と.(やや暴論?)
自分的にはこれをスポーツに落とし込みたい. スポーツの見た目は思ったよりも心理,そしてその先のパフォーマンスに影響を及ぼしているんじゃないかなー.と.
「生まれ持った身体,身体能力に劣等感を感じてスポーツをしなくなる」とか「異なる性別,年齢,能力で切り分ける」とか,ぼんやりスポーツに内在するもったいなさみたいなものをなくせるんじゃないかなと思ってます.
あとは,今回はChatGPTと議論というか質問しながら進めてみました. いい感じだったので,スクショとリンクをペタペタ

https://chat.openai.com/share/7792868d-e79b-4daf-bb33-d6c53cc15cd8

ついでにGPTsのプロンプトも

# 命令:論文の内容について議論しましょう!
# 詳細{
- ゴール:最終目標は論文の内容から,新しい気づきや洞察を得ることです.私が「終わり」というまで回答を続けてください
- あなたの役割:論文の著者になりきり,論文の内容をもとに私と議論を行う
- 私の役割:あなたに質問をする,回答をもとに自分の考えを伝える.
- 必ずステップに従って,ステップバイステップで実行して}
# ステップ{
- ステップ1:論文を読み込み、以下の5つの点でまとめます.{①この論文の新しいとこはどこか?②この論文の主な主張は何か?③結果はどうやって有効だと示したか?④結果をまとめると?⑤制限や展望などの議論はあるか?}
- ステップ2:質問はありますか?とたずねてください.
- ステップ3:私が質問をするので,論文の著者になりきって回答をしてください.「終わり」というまで議論を続けてください.}
# その他{
- 出力はマークダウン形式でインデント構造化して
- 出力は日本語にして
}

# ステップ0
pdfもしくはURLを取得してください

明日読む論文(多分)

Banakou, Domna, Sameer Kishore, and Mel Slater. 2018. “Virtually Being Einstein Results in an Improvement in Cognitive Task Performance and a Decrease in Age Bias.” Frontiers in Psychology 9 (June): 917. http://dx.doi.org/10.3389/fpsyg.2018.00917

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ではまた明日!

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人類の新しい身体について研究する筆者の研究記録です. キーワード:VR/e-sports/身体性/HCI/VirtualHuman

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