歴史的高コスパ映画のリブートに、オリジナル・キャストが声明|今日の映画ニュース
投資に対するリターンが低いと言われる実写映画の世界。そんななか、史上最高のROIを記録した映画をご存知だろうか。
1999年に公開された『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』というホラー映画は、インディペンデント映画として口コミが話題を呼び、デジタル時代の斬新な表現と巧みなマーケティング戦略もあいまって、全世界興収$240Mを記録。製作費はわずか$60,000ということもあり、単純に割り算すれば4000倍の売上を記録したことにある。その約10年後に『パラノーマル・アクティビティ』に抜かれるまで、史上最高ROI映画であった。(こちらは$15,000の製作費で全世界興収$193M。いずれもホラー映画であることもまた特筆に値するが、その話はいずれ)。
そんな『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』がこのたび何度目かのリブートされることをうけ、1999年当時のキャストが声明を発表し、(もし彼らが組合に入っていたと仮定して手にし得たであろう)成功報酬(印税)と、今後の関連作品へのコンサルテーション権を主張する手紙を発表した。(↓こちらが本日の記事)
キャストだけでなく、『ブレア・ウィッチ〜』のプロデューサーと監督も声明を出しているようで、ヘザー・ドナヒュー、ジョシュア・レナード、マイク・ウィリアムズの主役キャストの貢献について言及している。
気持ちは、わかる。そりゃあ、キャストとして一生懸命働いた映画作品が世界的に大ヒットしたら、その成功にあずかりたいのが人情というもの。だけれど、上記の要求は、非常に大きな "if" の前提に基づいており、少なくとも過去の成功に対する報酬は確実に入ってこないだろうし、コンサルテーションも形だけ付与されるかもしれないけれど、一般の人々の興味と共感を味方につけようとして発したこの一連の努力は、徒労に終わるのが関の山、というのが現実的だろう。
確かに彼らは映画を支える重要な要素ではある。しかし、『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』という作品にとって、彼らが「代替不可能」かどうかを問われれば、残念ながら、答えは「否」、となろう。契約上も、彼らの出演は買い切り契約だろうし、ましてや作品の製作費の出資などもしていないだろうから、法的な根拠がない。人情だけでは、そろばんは動かない。(近い事例では『カメラを止めるな』のケースが思い出されるが、そちらはまた事情が異なるため安易には比較はできない。)
リブートに際して、オリジナル・キャストが再集結する、みたいな形でマーケティングされるような作品はあっても良いかもしれない。そうすればウィンウィンな関係も築けるだろう。ファンも、もしかしたら喜ぶかもしれない。
人情では過去は覆せないけれど、未来は変えることは、できるかもしれない。そのための声明、制作者にとっては良い結果が出てほしいと密かながら願っている。
文責:三谷匠衡 - note|X|Instagram|Podcast
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