マジでどうでも良い事つらつら11
■バンドマン、キレる■
前回、前々回と地元京都の頭の悪いヤンキー達の話を書いたのだが、
そんな不穏な土地とおさらばして現在筆者は遠く離れた東京で妻と娘と3人で静かに平和に暮らしている。
何度も言うが筆者は決してヤンキーではないが、正直な話そんな地域に産まれ育った事もありそういう人の背中や荒事の現場を見て育っているため、怒った時の対応が非常によろしくない。
口が悪いわ声はデカイわ顔は怖いわ体はゴツいわで、まるで借金取りにでもきているのかと思うほどだ。
一応私は相手に絶対的に非がある時でないとそんな怒り方はしないつもりなのだが、端から見てるとどっちが悪いのかわからない。
自分でも良くないとわかっているので出来るだけ冷静でいようと思うのだが、
従来臆病な性格なので野生動物の威嚇のような意味もあるのだろうし、生い立ちから来ている部分もあるので怒りが頂点に達するとどうしても相手を怒鳴り付けてしまう。
若い時はついつい手を出してしまう事もあったのだが、さすがに30も過ぎてもういい大人だ。
こんな歳になって怒って誰かに手をあげる事などまず、、、すまない。一回だけ、一回だけあった。
筆者が東京に出てきてお世話になったとある焼鳥屋がある。
もうやめてしまった当時の店長が昔からお世話になっていた方で、上京して金がなかったら日払いで雇ってあげるからいつでもおいでと言われていたので、
上京後早速お金に困った私はオーナーにも深い理解をいただいてそのお店で働かせていただいたのだ。
シフトにそこまで貢献出来ていたわけではないので非常に出現率の低いスタッフだったのだが、
続々増えてくる若いアルバイトの子達とも、常連のお客様とも和気あいあいと楽しい時間を過ごしていた。
そこに一人の男性スタッフがいた。彼の名前を仮にKとしよう。
Kは当時専門学校を卒業したばかりでまだ若く、前店長、新しい店長などに良くも悪くも非常に甘やかされていた。
簡単に言うと年齢が離れすぎていたのもあり、そのお店が初めてのアルバイトでもあり、まだ子供みたいなもんだからと寛容に接してもらっていたせいで正しい上下関係というモノが良くわかっていなかったのである。
特に私は何故か彼にナメられていたというか、事あるごとに突っかかるように余計な一言を吐かれる事が多かった。
飲食店勤務には慣れていたし元々長く焼鳥屋で働いていた事もあった私は、
特に最初の内は焼き場を担当することがはほとんどだった。
メインスタッフではあったが決して要領良く仕事が出来るタイプではなかったKにとって、年齢こそ10歳以上離れているとはいえ私は確かに面白くない存在だっただろう。
私はたまにしか出勤しないのだから当然Kの方が多くの仕事を任されていた。
なのにKでは捌けない大量の焼鳥が入れば店長は私に交代させるし、接客やタチの悪い酔っ払いの扱いも私の方が長けていた。
自分の方が下の立場のような扱いを周りから受けていたため、少しでもマウントを取りたかった気持ちもわかる。
オーナーが現場を退いてから厳しく教育する人がいなくなり、
そういう方針ならば口を出すまいと私も言葉遣いや接し方等に多少癪にさわることがあってもわざわざ怒ったり注意したりしていなかったので、
毎回親しき仲に礼儀を欠いた状態が続いていた。
ここで言う礼儀とは敬語を使うだの挨拶をするだのと形式ばった話ではない、
多少弛いのは構わないが他人に対してやって良い事悪い事の区別がちゃんとついているかどうかの話だ。
ある日、スタッフや他の常連客にいつも酒をご馳走してくださるお客が来店した。
皆で楽しく呑むのが大好きな陽気な方で、今日も皆で呑もうとテキーラショットをいくつも注文してきた。
ところが筆者はテキーラを呑むと悪酔いするのと、本当に味からしてダメで大嫌いなのだ。
そういうお客からのお酒は本来断ってはいけない暗黙のルールなのだが、
他のお客からいただいた酒で既に酔っている状態でそんなもん呑もうものならどんな酒癖を発揮するかわかったもんじゃない。なのでその方からテキーラを勧められた時は丁重にお断りさせていただいていた。
しかし、久しぶりのご来店でもあったし、その日は他にも仲の良い常連客の面々が揃っていたし、
非常に良い雰囲気に水をさすのもなぁと、少し酔いが回りすぎている気もするが一杯ぐらいなら良いかとご馳走になってしまったのだ。
とは言え良い気分だろうがなんだろうがマズイもんはマズイ。
酔いより味で気持ち悪くなってしまった私は、
冷蔵庫が置いてある人1人座れば限界のスタッフ用喫煙スペースに座り、酔いざましも兼ねて一服いただいた。
さすがテキーラ、味もそうだが早々に酔いが回ってきた。
表に戻ると既にテキーラ祭は3杯目に突入していて、なぜかKが私の元へショットグラスを持ってやってきた。
お前こんなものも呑めないのか?との当て付けのつもりか、目の前でテキーラを飲み干したKに「よくそんなの呑めるよなぁ」と話しかけた。
するとKは無言でテキーラには付き物のカットレモンをかじった。
酸っぱい柑橘系も苦手な筆者が「うわぁ、俺レモンも苦手やわぁ」と何気なく口にした次の瞬間、レモンの種を私の顔に向かってプッと吐きつけてきた。
次回へ続く。