マジでどうでも良い事つらつら6

■バンドマン、すする■

前回の文末に書いたように今日は大好物のラーメンについて書かせていただこうと思う。
ライブの日、共演の知り合いのバンドマン達が昼飯にラーメンを食べたい時にどこのライブハウスだとしてもオススメのラーメン屋を私に聞いてくるぐらいには私のラーメン好きは浸透してきているのだが、
私などラーメン歴たかだか3年ほどのペーペーであるし生粋のラーメンオタクの方々の足元にも及ばない。
が、愛する気持ちに罪はない。大いに書かせていただこう。

スープをレンゲで口に運んだ瞬間に広がる芳醇な香りと濃厚な旨味、麺をすすれば顔を出す小麦の甘味と食欲を更に刺激する歯ごたえと喉ごし。
たった一杯のどんぶりにこんなにもロマンが詰まっているのかと、探せば探すほど宝物を見付ける事が出来る宝石箱。それがラーメンである。

太麺なのか細麺なのか、動物系なのか魚介系なのか、こってりなのかさっぱりなのか。油は何を使っているのか。
つけ麺や油そばなんて物もあるし、替え玉ならぬ和え玉なる物まである。
書こうと思ってみたものの、めちゃくちゃにざっくりと書いたのにこんなにも選択肢がある料理が他にあるだろうか?
絶対この系統しか食べないという方もいるしその日の気分によって変える方もいる。
近くに似たようなラーメン屋があるにも関わらずわざわざ電車で30分かかるところに行ったり、
隣の店ならすぐに食べられるのに、行列に一時間も並んででも食べる人がいる。
ラーメンの魅力とはまっこと一言では言い表せない。ダメだ、別で連載始めないと絶対書ききれない。
なので、私の未だに出合った事のない理想のラーメン像を書かせていただく事にする。

比較的太麺、又は極太麺のこってりガッツリなラーメンを食べる事が多いのであるが、理想となれば話は別だ。
麺は中細のストレート。細すぎるとダメだ。長さもある程度欲しい、すぐにすすり終わるのは寂しいのだ。
茹で加減は程よく硬めが良い。柔らかいのは頼りないし硬過ぎるのはナンセンス。パツンパツンと歯切れの良さを楽しみたいのだ。
そしてスープに入れたら盛り付けの前に箸で持ち上げて綺麗に整えてほしい。まるで絹を横たえたように、美しくだ。

スープは鶏ガラか、または主張の強すぎないさっぱりした魚介が良い。
淡麗で透き通った醤油でやや濃い目に染め上げられた琥珀色のスープで、飲んだ瞬間に優しく鼻に抜けるような優しさがありつつも決して味が薄いわけではなく、コク深いガツンとくるヤツだ。

油は素直にラードでお願いしたい。鶏油も良いのだが私は素直なラーメンが好きなのだ。
背脂も捨てがたいが、せっかくの透き通ったスープが隠れてしまう。
優しく箸で掬われた麺をテラテラと輝かせてツルンといただくにはやはりラードだ。入れすぎ厳禁、ベタベタさせない。

チャーシューはやや分厚い方が良い。5ミリは欲しいところだ。デカ過ぎるのも嫌いではないが、それならそれを食べるためラーメン二郎へ行く。
バラ肉も脂たっぷりで柔らかくジューシーで好きなのだが、私のラーメンには肩肉だ。しっかりとした噛み応えの肉々しさを存分に感じたいがための5ミリだ。
少し大きめの部位をデデンと一枚乗っけておくれ。

その他の具材だが、もやし、ネギ、味玉は残念ながら今回は降板していただこう。次の機会は必ずある。
代表して海苔一枚に青菜、そしてナルトだ。
海苔はビジュアルを保つために一枚だけだが、別皿で5枚程注文しよう。好物なのだ。
青菜は迷うところ。家系ならばほうれん草がマストであるし、小松菜も私の大好物ではある。しかし、今回に限っては遠慮してくれ。
チンゲン菜、君に決めた。ポケモンか。
小振りな物を一本丸々浮かべてくれるのも良いが、主張を控え目にして葉っぱの部分だけ綺麗に重ねて浮かべるのが良い。
ナルトは言ってしまえばただのかまぼこでしかないのだが、これ一つがあるのと無いのとでは全然違う。なんというか、粋ではないか。それだけと侮るなかれ、粋とは大事なのだ。

どんぶりは屋台のチャルメラを彷彿とさせるあの赤いラインが入ったヤツにしたいところだが、
私の好みで決めたい。真っ白で頼む。
スープと丼の境界線のところで見え隠れする屋号も、スープを全部飲み終わった時に初めて見えるお客様へのメッセージも今回は遠慮してくれ。どうしても真っ白い器でその中身の全てを視覚でもって味わいたいのだ。
そして大事なのはスープを注ぐ前にしっかりと熱湯で温めてから出してくれ。少しでも熱々の状態を保ちたい。良いか?絶対だぞ。

ここまで来たらディテールにもこだわらなければ。
自動ドアではなく、ガラス扉をがらがらと手動で開けさせてくれ。オヤジ、案内なんて適当で良い、アナタにそんな丁寧さは似合わない。軽くカウンターを指差してくれれば良い。
そんなカウンターは丼と相反して真っ赤にしてくれ。箸は割り箸が良い。
コショウは粉末で白。あとはお酢があれば文句はない。
椅子は絶対に四本足の丸椅子で頼む。あの座り心地の悪さが良いんじゃないか。
しばらくビールを飲みながら待つ時間が絶対に必要だ、麒麟で決まりだ。絶対に生中ではなく瓶だぞ。
チャッチャッチャと湯切りの音が聞こえたらあっという間に出来上がる、目を背けるな。
慣れた手つきでトッピングを済ませ片手でカウンターまで持ってくるこの瞬間。
湯気の向こうにいる無愛想なオヤジが少しはにかむのを見逃してはいけない。
割り箸を割って、左手にレンゲ。いただきますはしたか?
スープを一口飲んで幸せと温もりを体一杯に行き渡らせて短いため息をつけば、あとは一心不乱にすするだけだ。
そして最後に残しておいたビールを飲み干して、お勘定をオヤジに頼んでちゃんとご馳走様を言うのだ。何故だか少し照れ臭い気持ちになるのだが、口角が上がるのを少し我慢しながら店を後にしよう。私の歩いた後はこぼれた笑みで一杯だ。それは誰にも見えないが、私だけが知っていれば良い事だ。

なんと素晴らしいラーメン屋があったことか。
これが現実に存在するラーメン屋だったら文句ない。凄まじく腹が減って堪らない。現在深夜一時過ぎ、やってしまった。
しかし、こんなにごちゃごちゃと面倒くさいこだわりがあるならば自分で作れば良いじゃないかと言われそうだがわかっちゃいない。自分で作るのももちろん楽しいし興味深くもあるが、理想のお店を探して食べ歩くのが堪らなく楽しいんじゃないか。
新たな味を求めてラーメン屋を探す飽くなき旅はまだ始まったばかり。願わくばアナタの人生でも、そんなラーメンと出会える日が来る事を心から願っている。その時はぜひ共、教えていただきたい。ビールの一杯でも奢らせてくれ。

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