マジでどうでも良い事つらつら4

■バンドマン、とりあえず一服する■

酒の話は散々書いたので、筆者が若かりし頃から嗜んでいるタバコの話を書こうと思う。

ライブの打ち上げや友達と居酒屋で夜通し話をする時の我々にとってのマストアイテムであるが、結局大多数の人間は未成年の頃から吸っているであろうし、
どうせその内半分、いや、それ以上の人数がタバコを吸い始めたきっかけを「カッコつけたかったから」と答えるだろう。ハッキリと名言する者は少ないかもしれないが、タバコイコールカッコ良いという認識を持っている喫煙者は絶対少なくはないと断言出来る。筆者もそうだった。

そもそも私は母方の祖父がとてつもないチェインスモーカーで、お盆に毎年のように遊びに行っていた祖父母の家ではトイレ、風呂場、台所以外の全ての部屋にタバコが必ず置いてあった。しかもカートンで。
夏の甲子園の中継を見ている祖父がタバコに火をつけたのを見てふと目を離す。もう一度祖父に目をやるとタバコが半分まで短くなっていて、また目を離し再び戻すと新しいタバコに換わっていた。
私はその祖父の姿を見てなんとなくカッコ良いなぁと思いながら、蝉の鳴き声を聞いてジュースを飲んで遊びに出掛けたものだ。
私が二十歳を過ぎた頃に祖父はやはり肺がんになり禁煙禁酒を余儀なくされたのだが、後に聞いた話によると3ヶ月の余命宣告をされたらしいが約一年しっかり生きた。
私は今でもタバコをやめていなければ祖父はまだ生きていたんじゃないかとひそかに思っている。それほどに祖父にはタバコがよく似合っていた。

それとは別に私の産まれ育った町はいわゆるヤンキーのメッカで怖い先輩達がたくさんいた。不良学生達を熱血教師がラグビーを通して更正させていく某ドラマのモデル・舞台となった学校もあるぐらいで、私が中学の頃もまだそれなりに荒れていた地域が多かった。
そんな中でヤンキーの先輩達が制服姿のままタバコに火をつけて燻らす姿だったり、足でグリグリ踏みつけたり指先でピンと弾き飛ばして捨てたりする姿が妙にカッコ良く見えたものだ。何より当時のヤンキーはヤンキーというだけで何故か可愛い女の子からモテていたような気もするし、ヤンキーになるのは怖いがタバコぐらいならなんとかなるのでは?という不純な動機から吸い始めた人も少なくないのではないだろうか。根性焼きはどうしても出来ないままだったが。

時は変わって現代。
年々タバコは増税により値段が上がっていき、喫煙者にとってツラい時代が訪れた。
ただでさえ禁煙の店が増え続けていたのに、ついには屋内全面禁煙と法律で定められてしまう始末。もちろん路上喫煙禁止区域は広がる一方だ。
しかし筆者としてはある程度は仕方がないようにも思う。喫煙者のマナーは悪いままだしそもそも受動喫煙のリスクは非喫煙者の方に常につきまとうものだ。
年々健康志向を求め続けていく世論にこんな百害あって一利無しなモノが勝てるはずがない。

その健康志向の世の中で近年頭角を現して来たのがIQOSを筆頭とした電子タバコである。
燃やさず加熱、出るのは煙では無く水蒸気、ゆえに有害物質であるタールは出ずニコチンは摂取出来る。
ちなみに私も娘が産まれたのをきっかけに、長年愛してやまなかった紙巻きたばこに別れを告げ電子タバコにシフトチェンジした。
なので、まぁタバコと銘打ってるのだから体に良いはずはないのだがなんぼかマシかのではないかというところだ。
ところがこの電子タバコ。筆者がここ数年思っていた「タバコを吸う未成年のヤンキーの減少」の犯人なのではないか?と睨んでいる。
制服姿でタバコをふかしている学生なんて地元にいた頃から数えてももう何年も見てないし、
お祭りの時の夜店が並ぶ通りから外れたところでたむろする者や、繁華街でゲームセンターやアパレルショップ周りを遊び歩いている者でさえ、喫煙している場面など本当に数える程しか見かけない。

筆者の勝手な想像なのだが、そもそも喫煙という行為に憧れをいだく対象を見る機会が全く無いのではないか?
規制規制とうるせぇなとは思っているが、マンガやアニメの登場人物がタバコを吸うシーンも少なくとも少年誌ではほとんど見かけなくなった。子供が真似したらどうするんだと保護者から苦情が入るからだ。まぁお前がしつけしろよと思うが。

路上喫煙なんてお巡りさんに見つかれば罰金なのだし、喫煙所ならば駅の近くなどにあるにはある。無理して吸えない場所で吸う必要もなくなった。
そしてなにより値段がとにかく高いのだ。以前なら500円で二箱買ってお釣が来るような値段だったのに、今では二箱千円出しても足りない銘柄がほとんどだ。下手な社会人よりよっぽどお小遣いを持っているのではないか?と疑うような若者達だが、そんな値段の害しかもたらさない買い物でカッコつけるのはいくらなんでもいささかハイリスクであろう。

おまけにここで電子タバコの普及である。
前述したようにヤンキーの先輩達のタバコの嗜み方を見て憧れを抱いていた筆者世代であるが、
あの先輩達が吸っていたのが電子タバコだったらと考えると笑ってしまう。
火は着いていないし足で踏んで消す事もないし、本体からタバコそのものを外す手間があるのだからそれが出来るならちゃんと捨てる。わざわざ指先でピンとはねてスマートにポイ捨てしようものなら高価な本体ごとピョーンと飛んでいく。
何度も言うが火が着いていないので先生や警察に見つかりそうになればポケットに入れてしまえば良いし、口から匂いもほとんどしないもんだから今ここで拾ったなんて言い訳も完璧だ。なんてなんとも間抜けな話である。
金髪だろうがリーゼントだろうが原チャリに二人乗りしていようが、こんな興味の湧かない喫煙シーンなんて見たくもないものだ。
タバコとは箱から出して火をつけて、煙を燻らすからこそカッコ良いのだ。

そういう意味では電子タバコこそ、喫煙者に厳しい世論の隙間を掻い潜り言い訳を身に纏ってでも喫煙を続けたい方がたどり着く場所なのかもしれない。
逆にそうまでして喫煙を続けているのだ。どこでも吸えるようにしてくれとは言わないが、私達喫煙者ほど律儀に、しかも若い頃から税金を支払い続けている者などそうはいない。
叶うならば、喫煙マナーなどもっと厳しくしても構わないから、タバコを吸うのが偉いとまでは言わないまでも、ちょっとぐらい褒めてくれる世の中になってはくれないだろうか。

ちなみに喫煙者の方々、同じく喫煙者である筆者から見てもあまりにマナーが悪い方が多いので、特に非喫煙者の方に不快な思いをさせないように配慮していただきたい。見ていて本当にみっともないぞ。
ポイ捨てしない、喫煙所で吸う、携帯灰皿を持つ。たまに見かける喫煙所でタバコをポイ捨てする輩なんてトイレの目の前で立ち小便しているのと一緒だ。なんと恥ずかしい連中だ。当たり前の事を当たり前に出来る大人で在ろう。
先に書けば良かった。文頭でアンチ・スモーキング・マナーのヤンキーに憧れを抱いたなんて書いてしまったではないか。親御さんから苦情が来たらどうするんだ?だからお前がしつけるんだよ馬鹿者め。人のせいにしないでいただきたい。

と、ここまで書いていてふと思った。
健康への害については賛否両論あるにしてもこの電子タバコ、受動喫煙のリスクも減るし未成年の喫煙者も減らせるし良い事しかないな。
喫煙者の皆様、是非これを機会に電子タバコにチェンジしよう。そして可能ならば、健康のため長生きのため禁煙してみよう。
私も言うからには頑張ってみようと思う。あと一本吸ったら。いや、やっぱりこの最後の一箱が無くなったら。
あっ、いや。やっぱり来週から。道程は険しい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?