バンドマンのエレジー13

■バンドマン、恥も外聞もない■

ネットやSNSでもたびたび議論はなされているのだが、ほとんどのライブハウスにはチケットノルマなるものが存在する。
ノルマとは出演料であるという意見を言う人を時折見かけるのだがとんでもない。あくまでもチケットノルマとは、ライブハウスと出演者の間で交わされるギャラの交渉と約束事に過ぎないのだ。

ノルマってなあに?という方のために簡単に説明しよう。
例えば、とあるライブハウスがバンドをブッキングしてイベントを作る。
その日のチケット代は1,000円で、
そのチケットを仮に五組のバンドに10枚ずつ渡してみよう。金額にして一組10,000円、五組で50,000円だ。
ライブハウス側はそれぞれのバンドに最低でもお客さんを10人、チケットを買ってもらって当日のイベントに来てもらってくれとバンド側にお願いしているのだ。
もちろんライブハウスも商売なのでお金が入らなければ営業は出来なくなる。
全てのバンドが一枚も売ってくれなければライブハウスにはお金が全く入らなくなる。
なので、その10人分のチケットが売れなければ、売れなかった分はバンド側で買い取ってくれというのがチケットノルマ制度である。
各ライブハウスによって条件は変わってくるが、もちろん課された枚数以上のチケットを売ればバンド側にもキャッシュバックされる仕組みだ。

このチケットノルマというのがなかなかの曲者で、様々な意見が飛び交いそれぞれに賛否両論が混在しているのだが、
これに関して僭越ながら少し意見を述べさせていただこう。

まず最初に書いたノルマは出演料であると言う意見は完全に間違いである。
仮に出演料を払っているとするならば私達バンドマンは、ライブハウスにとってお客さんになってしまう。
あくまでもお客とは代金を払ってチケットを買ってくれて見に来てくれている方々の事であってバンドマンではない。
料金が発生したとしてもそれはライブハウスとバンドの間で双方納得した上での取り決めの責任を果たせずに発生しているペナルティである。
すなわち、ライブハウスとバンドマンはビジネスパートナーであると思うのだ。

次にノルマ制度に反対しているバンドマン。
お客を少数しか呼べないバンドにとって高いノルマを払うのはツラいし、
金を払っているのにたまにいる偉そうなブッキングマネージャーにごちゃごちゃと説教垂れられるのも腹が立つ。そりゃ文句の一つも言いたくなる理由はわかる。
しかし答えはシンプル。出演しなければ良い。
気に入らないのであろう?じゃあ出なければ良い。
どうしてもライブがやりたいのであればノルマを取らないライブハウスに出れば良いのだ。
ただし、そのライブハウスがお客が入らない場合の経営の赤字を背負ってくれているのだ。
出演順や君達の扱いに絶対に文句を言うなよ?文句を言うならばそれなりにお客を呼んでライブハウスの経営を潤すか、完膚なきまでにめちゃくちゃカッコ良いライブをしなければいけないぞ。
そのどちらも出来ないのに、いつまでもそんなライブハウスが君達をずっと呼んでくれると思わない方が良い。
ちなみに筆者は全然お客が呼べないので絶対に自分の処遇に文句は言わない。
その代わりというのもおかしいが、バカみたいにダサいライブをする演者の悪口は酒の肴の代わりにしている。それを言うだけのライブだと自負しているし、嘘だと思うなら一度見にきてくれれば良い。お願いします、チケット買ってください。

そして無茶なノルマを無知で若いバンドに課しているごく一部のライブハウスよ。
あなた方も生活と経営があるのは理解出来るし儲けがないとやっていけないのは十分わかっている。全てのライブハウスがそうだからだ。
しかし、それならば何故ちゃんと若いバンドを育てようとしないのか。
そういうビジネスライクに極端に偏っているライブハウスに限って、店長やブッキングマネージャーはろくな説教をする人間がいない。
ちゃんと若手を育てようとするならば共に考え共に行動し、共に未来を見据える存在であるべきだし、少なくとも私がお世話になっているライブハウスはそういった接し方で我々バンドマンと寄り添ってくれるところがほとんどであるし、私自身もそうやって育ててもらってきた。
どうしようもないままごとのようなクソバンドにまで尽力しろとまでは言わないしどんどん搾取しても何とも思わないが、
そういった才能を見抜く目もろくに持っていないのに若い芽を摘み押し潰してしまうような輩が私は昔っから大嫌いだった。
ついでに言うならライブハウス側もファンが付くように努力すべきだ。
従業員の勤務態度についてもしっかり教育し、客商売であるという自覚を持ってほしい。わざわざ楽しい思いをしたいからと金を払って来てくれているお客に対して愛想もクソもない態度の悪いスタッフが些か多すぎる。これに関しては早急に改善すべきである。
バンド側に客を呼べ呼べとうるさく言う前に、ライブハウス側もお客が何も言わなくても来たいと思ってくれるような環境を作っていくべきであろう。

極端な話になってしまったし私情もたっぷり込もってしまったような気がするが、
私が言いたかったのは義務も責任も果たしていないのに権利ばかり主張するなということだ。

先述したように我々はビジネスパートナーだ。
筆者がリアルタイムで経験していた事ではないが、現在のライブハウスは昔のように若者達が娯楽を求めてやってくるような場所ではなくなってしまった。
かといって誰彼構わず呼び込むために清廉潔白なイメージを持ってもらおうとまでは少なくとも私は思わない。ライブハウスとは、非常に近寄りがたい存在であってこそだと思っている。
とは言え、退屈ばかりで暇をもて余している若者が好奇心に勝てずに意を決して入ったライブハウスが予想に反してめちゃくちゃつまらない場所だなんて思われてしまっては非常に望むところではないはずだ。
そういう居場所を求めている人にこそピッタリな場所だというのに、パートナー同士であーだこーだ文句の擦り付け合いをしている場合ではないであろう。

こんな時代だからこそ手を取り合って進んでいこうじゃないか。そしてその先陣を私が切ろう、そのためにもう一度、いや、何度でも言おう。
お願いします、チケット買ってください。切実である。

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