バンドマンのエレジー1
■バンドマン、生態を晒す■
バンドマンという生き物はとにかく面倒臭いヤツが多い。もちろん私もご多分に漏れずその枠内に入っているのだろうが「少なくともコイツよりは全然マシだろう」と思うヤツがたくさんいる。と、ほぼ全てのバンドマンが思っているだろう。
つまりどいつもこいつも大した差は無いということだ。
そして恐らく本人の周りの、バンドマンではない人間からも同じ様に思われている人も少なくないのではなかろうか。
その最大の理由の一つとして「酔っ払ったら面倒臭い」というのが挙げられる。
そう、酒だ。
ビール、焼酎、日本酒、ウイスキー、ワインにテキーラ。
数え切れないバンドマン達、もちろん筆者もこの悪魔の液体に何度痛い目に遭わされて来たことか。
バンドマンの生息地とはライブハウスである。
詳しい説明はまた違う話で書く事にするが、
ライブハウスという場所が「お酒を呑みながらライブを見れる場所」ではなくなってきている。
故に誤解している方々がたくさんいるようだが、本来ライブハウスとはクラブでありバーなのだ。
極端な言い方をしてしまうとライブパフォーマンスなんてものはただのオマケである。
しかし、そこで極上のロックンロールを鳴らしそのビートでもってお客を乗せて踊らせる。
そうするとアラ不思議、バーの売上がうなぎ登りではないか!という魔のスパイラルにお客を引きずり込むなんともあこぎな商売なのだ。
そんな商売に加担している本来同業者であるはずの我々バンドマンも、なぜかその魔のスパイラルに盛大に巻き込まれ派手に溺れている。
今でこそお酒を呑む若者が減ったと言われているが、少なくとも筆者の周りにいたバンドマンはライブしに来ているのか酒を呑みに来ているのか境界線が曖昧なヤツらが多数を占めていた。
時には酒に呑まれて演奏もままならず機材を壊して、ライブハウスの店長に派手に怒られたり鉄拳制裁を喰らっているバカなヤツらもいた。
道端でゲロを吐きその吐瀉物の真上に倒れ込んでぐちゃぐちゃになったまま気持ち良さそうに眠っているヤツもいた。
寒空の下でガタガタ震えて顔が真っ青になりながら、それでも缶チューハイを離さずに始発の時間までずっと不安と希望が混ざり合った将来の事を話し込んでいた仲間達がいた。
お金なんて全然持っていないクセに酒代とタバコ代だけはいつも何とかなった。
なぜならライブハウスに行くといつもイカした仲間達がいたからだ。
バンドブームなんてとっくの昔に終わり、CDが売れないと言われる現代において、
遂には末端である我々のようなまったく売れないバンドマンにも音楽業界の不況の波がくるようになってしまった。
バンドマンにとって、そんな夢も希望もろくに見えなくなってしまった時代に生きた愛すべきろくでなし達がいた。
私はこんな時代だからこそ、彼らが何と戦ってきたのかを残して置きたいのだ。
ロックンロールに犯されたその日から、いつの間にかいなくなってしまったヤツらもいれば辞める度胸もないままここまで続けてきてしまったヤツらもいる。私は我々が何と戦っているのかを残して置きたいのだ。
私に出来る事はそれだと思い、ペンを取った次第だ。もといスマートフォンを手に取ったのだ。
バンドマン、それは世界で一番不自由な職業。
バンドマン、それは誰よりも自由を求めて戦い続けるバカ野郎達の事である。