バンドマンのエレジー9
■バンドマン、さっさとやりたい■
前回のエッセイで数合わせのアーティストは出演順をトップバッターに回されると書いたのだが、トップバッターはダメだなんていう誤解の無いように今回は出演の順番について書いていこうと思う。
出演順は年功序列で実力順。筆者も若い頃はそんな風に思っていたし若いバンドマンにはこのように考えている人が多いのではないだろうか?
分かりやすく言うと、トップバッターは嫌だ!なんて思っていないだろうか?
気持ちはわかる。お客がたくさん入るであろうイベントの集客のピークは折り返し地点を過ぎた辺りだろうし、全部で5組のバンドがいたとしたらトップバッターよりも2番手、2番手よりも3番手とお客の数は多くなっていくだろう。もちろんお客が誰も帰らないことを前提として単純計算すればだが、誰しもたくさんのお客の前で演奏したいと思うであろう。
ついでに言うとツアーで来てるバンドや自分達がツアーで行く時は、大体真ん中かやや後半が当然だと思ってはいないか?
確かにこちらも遠路遥々他府県のライブハウスへ向かうのだ。
遠方から来てくれているのだからとライブハウスやイベント主催者の忖度により、良い順番でやらせてもらうことも多々あるだろう。
しかし、これに関しては声を大にして言わせてもらおう。出演順に文句を言っている内はまだまだ小物である証だ。
そういう事は何百何千とお客を呼べるようになってから言うべきだ、みっともないったらありゃしないので早急にやめた方が良い。
簡単な話だ。まっとうなイベントの主催者であれば一番素晴らしい流れでイベントを進行させていきたいと考えるであろうし、トップバッターはその理想を現実にするため何よりも重要だ。
光栄に思う事こそあっても、お客が少ないし嫌だなんてとてつもなく情けない話だ。だったら自分達でたくさん呼べば良いじゃないか。己の未熟さを棚上げしていることがそもそも間違っている。
ツアーバンドであっても関係ない。
オファーを受けたということは、その方々にとって必要なポジションだから呼ばれているのだしその位置付けなのだ。自分達で取ってきたブッキングなら尚更だ、自分でやらせてくれと言っておいて出演順に文句を言うなんてちゃんちゃらおかしいと思わないか?金銭面等であまりにも無茶苦茶な条件下においてならまず先に確認するべきだし、そんなオファーは断るべきだ。
これはあくまでも持論なのだが、
経験を重ねていくに連れて出演順の事など本当にどうでも良くなる。
どんな場面であっても自分のやることは同じだ。いつも通りに思い切り力を出しきる以外にない。お客が少なければ自分の人気がないせいだ。共演者の集客に甘えきっている場合ではないし文句を言う暇があるなら更に己を磨くべきだ。
そして何よりライブハウスにおいて最も尊重されるべきはライブハウスでもなく出演者でもなくお客である。
もちろん何のリターンも望めないような環境では余りに救いようがないとも思うので諸々根本的に改めるべきだとは思うが、目の前にいるお金を払ってくれているお客にまずは最高のライブを提供しなければならない。そのお金が手元に入るのかどうかはライブハウス側とのビジネスの話になるが、お客に対してはこれがギブアンドテイクである。
そんな事もまともに出来ないのにしみったれた不服を並べるのならば、今すぐにライブハウスから足を洗った方が良い。君には向いていない。
余談だが私は自分の出番が終わるまでは絶対に酒は飲まないと決めているので、トップバッターが大好物だ。
半端者達がトリやトリ前をやりたがってブーブー不満を垂れている横で、私は店長クラスのスタッフの方に向かって自分の出番が遅い事に対してブツブツ文句を言っている。私はさっさと酒を飲みたい。
何より早くライブがやりたくてウズウズしているのだ。イベントスタートから2時間も3時間も待っていられない程にステージを心待ちにしている。ライブとアルコールが私の全てである。
今夜のステージを純粋に渇望しているハングリーで攻撃的なロックバンドのライブを見ながら酒に酔う。これ以上素晴らしい事はない。
バンドマン達よ、余計な事は考えずに何もかもを置き去りにしてステージに没頭しようではないか。そしてついでに記憶も置き去りにして汗も乾かぬうちに乾杯しようではないか。
良い歳こいて酒に飲まれて汚い床で静かに寝息を立てるのが私はたまらなく好きなのだ。何てダメな大人なんだろうとは思うが、私はそういったライブハウスの景色が愛しくてたまらないのである。