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農民気質

私の記憶力はかなり弱い。だけど、子供の頃に唯一覚えられた詩がある。宮沢賢治の雨にも負けずという詩だ。

『雨にも負けず 風にも負けず 雪にも夏の暑さにも負けぬ 丈夫なからだを持ち 欲は無く
決して瞋からず 何時も静かに笑っている
一日に玄米四合と 味噌と少しの野菜を食べ あらゆる事を自分を勘定に入れずに 良く見聞きし判り
そして忘れず
野原の松の林の影の
小さな萱葺きの小屋に居て
東に病気の子供あれば 行って看病してやり 西に疲れた母あれば 行ってその稲の束を背負い 南に死にそうな人あれば 行って怖がらなくても良いと言い 北に喧嘩や訴訟があれば つまらないからやめろと言い
日照りのときは涙を流し 寒さの夏はオロオロ歩き 皆にデクノボーと呼ばれ 誉められもせず苦にもされず そういう者に私はなりたい』

子どもながらに私もそういう者になる人になりたいと強く思った記憶がある。それから30年の時が流れた今でもやっぱり、私はこんな人間になりたいと思っている。長年、私はわたしという人間を理解したいと、自分なりに色々と考えたり、分析を繰り返したりしてきた。自分が友達になりたいと思う人の特徴や、恋人に対する自分の感情。あやふやなフィーリングを言葉に落とす事で理解したいと試みてきた。大抵は、うまく表せない場合が多いが、今日1つ自分について分かったことがあった。私は、本来は農民気質で、派手な事や真新しい事は臨まず、むしろ日々を淡々と生活することが好きなんじゃないかと。私の中の農民気質とは、毎日起こる全ての事に感謝できるマインドを持た合わせている事だ。毎日同じような生活の中で、小さな発見や幸せを楽しめる感性。例えば、毎日歩いている道から見える木々の花や紅葉、風景を見て深呼吸できる事。家族揃って、いただきますって一緒にご飯を食べることを幸せだと思える事。大切な友人にいつまでも感謝できる事。決して、社会から評価される事やお金を稼ぐ事に価値をおかず、むしろそんな社会構造に疑問さえ抱く。私とはそういう感性を持っている人間なのだ。そしてそんな自分の資質に気がついたのは今日が人生ではじめてだった。自分の感性を認識できたら、これまで決断してきた様々な選択肢の理由についても知る事ができた。これからも私はわたしらしい感性を育てていきたい。

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