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愛されるキャラクターコンテンツについて考えてみた

はじめまして、ちばくんと言います。
エンタメ系の会社でデザイナーをしています。

このnoteは、私が日々の中で触れてきた数々の【キャラクターコンテンツ】において "ファンの方に愛されているコンテンツの、特徴ってなんだろう?" という問いに、自分なりの答えを出したものです。

たぶんこんな人向け! 

・キャラクターコンテンツが好きな人
・キャラクターコンテンツをつくる会社で働いている人、働きたいなと思ってる人
・キャラクターコンテンツをつくりたい!と思っている人、つくってるけどちょっと困ってる人

キャラクターコンテンツってなんだろう? というところから軽く触れてるので、エンタメ業界の方じゃなくても、サラッと楽しんでいただけるといいな〜〜って思ってます!

大事なこと
・私が、これまでお仕事で関わってきたコンテンツたちとこのnoteは、一切関係ありません。あくまで個人的な考えになります。そのため、私がこれまで関わったコンテンツとは認識やスタンスが異なる場合があります。
・個別のコンテンツに関するお問い合わせには、お答えしかねます。

それでは早速、行ってみましょう!

まず、キャラクターコンテンツとは

・ざっくりいうと、『ワンピース』『ポケットモンスター』『アナと雪の女王』『鬼滅の刃』のこと。
・特定のキャラクターを、不特定多数が認識できている前提の、その作品群のこと(アニメ、ゲーム、漫画、小説、グッズなど)。
・IPとも言ったりします。(例:IP作品)(IP=知的財産 Intellectual Property)

IP(知的財産 Intellectual Property)って何?

特許庁HPより
https://www.jpo.go.jp/system/patent/gaiyo/seidogaiyo/chizai02.html 

(1)知的財産権とは ……以下略……
第2条 この法律で「知的財産( Intellectual Property)」とは、 ……以下略 ……「もの」とは異なり「財産的価値を有する情報」である。

めっちゃはしょりました。端的に言うと、価値のある、目に見えない情報のことです。その中の一部にキャラクターコンテンツがあります。図にするとこんな感じ。

IPを図解

Aさん「ピカチュウが好き!」と言って、Bさんに『ピカチュウは確か、ポケットモンスターって作品のあの黄色の生き物だな』というのが伝わると、キャラクターコンテンツが成立している状態です。
『ピカチュウという概念』自体が浸透してるってことですね。

価値があるとは、『ピカチュウ』であることで『誰かにメリットがある』状態と思えばいいかなと。
ピカチュウの形したドーナツが発売された! → 買いたい!という人が(※自分じゃなくても)不特定多数いるって感じです。

私は昔からIP作品が好きで、IP作品とともに育ってきました(Nintendoのゲーム、ジャンプ作品、アイドルなど)。社会に出てからも、IPを作るようなエンタメ業界にいます。

その中で「ああ、これは素敵なIPだなぁ」「はあ〜…このこだわりはすごいなぁ!」と思ったものを見て、集めて、分解して、自分なりの【愛されるIP作品の特徴 チェックリスト】を作ってみました。

もちろんこれを満たしているIPのすべてが、事業的に100%成功しているとは言えません。
売上や普及率という観点で見ると、他にも必要な要素はいっぱいあると思います。IP公開時の適切なマーケティングも成功には大きく関わってきます。テレビCMとか、SNSによる露出とかですね。ここも語れればよかったのですが、まだ十分な知見が溜まってません……。

が、このチェックリストに沿っていれば、結構な確率で『自分たちも愛せるし、だからこそお客さまに愛されるキャラクターコンテンツになる』んじゃないかなぁと思っています。

「いや全然違うよ!」とか「こういう視点もあるんじゃない?」というご意見も大歓迎!ぜひコメントください!

※この先、伝わりやすいよう、『つくる』と表現していますが、ある時点を過ぎると、『つくる』は誤りになります。(詳細は後述)読んでいただければわかると思うので、一旦注意事項として記載させてください。

愛されるIP作品の特徴チェックリスト

チェックリスト

なんのこっちゃですね。一つずつ説明していきます。

① キャラクターが、唯一無二の個人である

突然ですが、ONE PIECE のルフィって誰っぽいですか? と聞かれて、すぐに答えられますか?

「ルフィはルフィかなぁ」
「まっすぐに目標に向かっていく主人公って点では、ちょっとだけドラゴンボールの悟空に似てるかもなぁ」
みたいな回答が出てくるのではないでしょうか。(他の答えが出てきた方、ぜひ教えて下さい!)

キャラクターコンテンツにおいては、この状態が理想だと思っています。

A:「ルフィ」は「ルフィ」である。 
→ 「個人⑴」は「個人⑴」である。(それ以外の誰でもない)

B:「ルフィ」は「主人公」である。 
→「個人⑴」は「属性(a)」である。(形容詞か名詞で表せる)

そのキャラクターのこと教えて!って言われた時に、属性で説明されることはあっても、「ほぼ悟空!」っていうふうに、個人で表せられることはないって感じです。

「悟空っぽい」「悟空に似てるところがある」はOKだけど、「ほぼ悟空だよ!」だと【そのキャラである意味】がなくなっちゃいます。じゃあ悟空を好きになればいいので。

でもそうじゃなく、『ルフィ』を好きになって応援してほしい。
そのためには、キャラクターは、『そのキャラクターたらしめる要素』が、どこまで行ってもブレない【唯一無二の個人】である必要があります。

例えば、天才キャラなら

・天才なのを悩んでるキャラなのか
・天才であることを知らないキャラなのか
・生まれつき天才なのか(理由がない)
・育った環境で天才になったのか(理由がある)

その他いっぱい。いろんな『天才』という概念がある中で、『この子』はどれなのか? を一つ一つ選んでいく必要があります。

「すごいね!」って誰かに言われた時に、天才なのを悩んでるキャラなら表情を曇らせるかもしれませんし、場合によっては悲しみから怒ったりするかもしれません。

天才であることを知らないキャラなら「え? これすごいの?」って顔をするかも。「天才」設定ひとつを取っても、これだけ幅があり、そして「起こった出来事」への「キャラクターのリアクション」によって、受け手に与える印象が全く異なります。

なので、「あ、この子は一人の人間だな」って自然と感じるほど、具体性が極まっている状態になるまで、設定を詰める必要があると思ってます。

ジョジョの奇妙な冒険シリーズの作者である荒木飛呂彦先生は、著書『荒木飛呂彦の漫画術 (集英社新書,2015年発刊)』の中で、キャラクターを作る際には36項目もの質問事項があるとおっしゃってました。(年齢、星座、視力など)

実際に私が見聞きしたことのあるコンテンツの中で、最大100ほどの設定項目があるものもありました。
どれくらいが適量かはコンテンツの世界観によります。例えば、現実と大きく離れた世界観のコンテンツであればあるほど、受け手が自然とイメージできる範囲が狭いので、詳細に決めておいたほうがいいかもしれません。

そして、キャラクターを定義したあとは、その設定の中でも、『そのキャラクターたらしめる要素』を最後までブラさないことも大事です。

たとえば、ルフィが突然「海賊王に俺はなる!」ことを、本当に諦めてしまったらどうでしょうか。
ルフィを好きな人は、『海賊王になる!と決め、そのために集めた仲間を大切にするルフィ』に惹かれて応援していたのに、「ルフィはどうしちゃったんだろう」と戸惑います。

お話の中で必要に応じて、一時的にブレることはあっても、かならず『海賊王になると決めているルフィ』に戻ってくる。だって、それが『ルフィ』だから。ストーリーの中で必要なブレならOKですが、『ルフィそのもの』をブレさせてしまうのは、キャラクターコンテンツにおいては良くないことなのかな〜、と思ってます。

例外として、『はじめからやりたいことがブレまくるキャラクター』なら問題ありません。それがその子だから。でも、作っている人が「今はこっちに行ってほしいから…」って、キャラクターそのものをブレさせるのはNGだよなと感じています。

②推せる状態になっている

ものすごく魅力的なキャラクターをつくれたら、次はそれを伝えること、愛してもらうことが大切。それができる状態が『推せる(Can)状態』だと考えています。

ここでは仮に、キャラクターをつくった人を『公式』と呼ぶとして、

・接点の数を増やす(公式⇔ファン)
・表現できる状態を作る(ファン⇔ファン)

この2つができていれば、伝えられるし、愛してもらいやすいのかなぁと。

まず、接点を増やすですが、これは純粋に継続的なコンテンツの提供です。
たとえば、漫画から派生したコンテンツで考えると、アニメ化、ゲーム化、スピンオフ漫画、関連小説、グッズ、リアルイベント、ラジオ番組など、公式の情報をいろいろな形態で、過不足なくファンに届けること。

極端に多すぎると「追いきれてない」、新しくキャラクターを好きになってくれた人には「多すぎてどれから見ればいいのかわからない」という気持ちになってしまうし、少なすぎると、飽きや熱量の減少につながってしまうので、バランスが難しいです(不足のほうが問題ですが)。

表現できる状態を作る、は、ファン同士の共通言語のために、ある程度「わかりやすくなってるか」を見ます。
例えば、繰り返し使われる印象的なセリフがあるか? 
ルフィの「海賊王に俺はなる!」やロビンの「生ぎだいっ!!!!」とかもそうです。同じものを好きな人同士で話しているときに、思わず口にしてしまうようなセリフってありますよね。
そういうのがあれば、オンラインでもオフラインでも、ファン同士でコミュニケーションを取っているときに盛り上がります。ファン間の「たのしい!」の総量が増えるんですよね。

キャラクターカラーがあるか? 名シーンがあるか? わかりやすいキャラクターデザインか? なども同じです。

キャラカラーが黄色の子を推している人を見ると、ファン同士で集まったときに「あっ、あの子、Aくん推しなんだ。私も!」となる。それいいですね、というコミュニケーションの発端になったりする。

名シーンに似たシーンに出くわしたときに嬉しくなる。キャラクターデザインがつかみやすく統一されているっと、SNSでイラストを描くハードルが下がる。

公式からの発信だけでなく、ファンになってくれた人が自主的に、どんな形であれ表現がしやすい状態になっていると、キャラクターコンテンツのサイズが一気に大きくなるし、よりコミュニケーションの総量が増えて、もっと好きになってくれるのかなぁと思っています。

③彼ら、彼女ら、その子たちが生きている

※この先、伝わりやすいよう、『つくる』と表現していますが、ある時点を過ぎると、『つくる』は誤りになります。(詳細は後述)読んでいただければわかると思うので、一旦記載させてください。

↑ようやくこの注意事項に触れられます。

ここまで、便宜上『キャラクターコンテンツ』『キャラたち』『つくろう!』『定義しよう』などと表現してきましたが、コンテンツのリリースから、この認識は変わるべきだと思ってます。

キャラクターが世に認知された瞬間から、『公式』『ファン』『好きになってくれた人』、一人でも多くの人が、『彼ら、彼女ら、その子たち』は私達と同じか、別の次元に生きていると信じられる状態まで持っていけるかどうか。これも私の中では、結構大事な指標かなあと感じています。

私達によって作られた何かではなく、『この子たち』は、本当に生きて、生活して、夢を見て暮らしているんだ! 私達は、その一部を見ている、見えるようにしているんだと思い込める、そんなムードがコンテンツの中に流れていれば最高だと思います(以降も便宜上キャラクターと表現しますが、とあるコンテンツにおいてはキャラクターを『キャラクターと呼ぶことを禁ず(名前で呼ぶこと)』みたいなルールもあったと聞きます)。

例えば、キャラクターたちは、同じ地平(場面、画面)に二人存在することはありません。NARUTOのナルトみたいに、影分身の術を使う子じゃなければ。有名なミッキーさんの逸話と同じですね。

どうしても表現上同じ画面に表したいなら、たとえばエフェクトの窓の中に配置して『概念』『演出』っぽくしたり。キャラクターのデザインのぬいぐるみを作って『これはキャラクター本人ではありませんよ』としてみたり。そんなこだわりが随所に詰まっているコンテンツがたくさんあります。

そして、このルールに則るとするならば、キャラクターは【生きている】ので、私達に都合の良いことは言いません。

例えばドラえもんのIPを活用した、コラボグッズを発売することになったとして、ドラえもん自身が「今ならセットで3300円!」とは言わないわけです。ドラえもんがそのグッズを販売しているわけではないので。ドラえもんがフリーマーケットに出るよ!みたいな設定のストーリーの中で販売しているならOKです。あるいは、広告画像のように、ドラえもんのイラストだけを使って回避するのもありでしょう。

キャラクターに言わせちゃダメ

キャラクターたちは、自分たちが『二次元のキャラクターである』とは思ってません。
例えば、ソーシャルゲームの中で、ストーリーの中で、その認識がないキャラクターが、「ガチャで私たちと会おうね!」というのは(あくまで私の考える、このルールに則るとするならば)【なんだか変】なわけです。(ガチャっていう概念がその世界にあるなら別)(注釈多すぎ)

私の尊敬するコンテンツに『うたの☆プリンスさまっ♪』というものがあるのですが、キャラクターたち(後述:プリンスたち)のことをものすごく大事にしています。
2.5次元で舞台化されているのですが、2.5次元の俳優さんたちは、『一十木音也』くんを演じるのではなく『音也衛門』という、『一十木音也くんが演じた役を演じる』徹底ぶり(一十木音也くんは実在しているので)。
ここまでプリンスたちが大切にされていたら、プリンセス(うたプリのファンの方々のこと)も安心できるのかなぁと感慨深くなりました。

私もIPコンテンツに携わる人間として、ここは本当に強く意識してます。

④、①〜③の状態が、継続されている

キャラコンテンツは、キャラクターの成長や毎日を、ユーザーさんと一緒に追いかけることで育っていきます。

私たち作り手や、ユーザーさんの記憶の中に、キャラクターたちのアルバムができるような感じだと思ってます。
新しい困難にぶつかったキャラクターたちを、「でもあの時、君は乗り越えられたじゃないか」と息を飲んで見守ったり、キャラクターたちの日常にほっこりしたりして、その積み重ねが、共感や愛着になって、キャラクターコンテンツという大きなかたまりになっていきます。

私個人の肌感としては、

・1日〜1週間で気に入ってくれる
・1〜2ヶ月ほどで気にしてくれる
・半年でファンになってくれる
・一年で信頼してくれる

のかなあ、と思ってます。
一朝一夕ではキャラクターコンテンツはできないよ、とわかっていると、今悩んでいる人も少し楽になるかも。

黄金ルールを守り、粛々と『この子たち』に向き合う。
求められていることは、都合がいいふうにキャラクターを操作しないで、キャラクターが傷つけられそうだったら守って、キャラクターの成長や変わらない毎日を描くこと。誰にも媚びず(少し過激な表現ですが、ファンの方は求めていないと思います)、キャラクターに対して誠実であること。
そんな執念と根性が大事だなぁと思ってます。

決して楽ではないけど、「この子に会えて元気になれた」「推せて嬉しい」「人生変わった」「コンテンツを通して友達ができた」などの暖かいお言葉や、コンテンツを愛してくれているファンの方の笑顔を見ていると、「ああ〜。やっぱキャラクターコンテンツっていいなぁ」と思います。

なにより『この子たち』の成長を、たくさんのファンの方、コンテンツを愛している同士の皆さんと一緒に見守れる楽しさには叶いません。
ということで、キャラクターコンテンツは最高だぞ! 
ここまで読んでくださってありがとうございました。

よんでくれてありがとう

(おまけ)

チェックリストを満たせたか、判断するための質問をちょこっと用意してみました。
キャラクターを生み出したい! そしてそのキャラクターたちと人生を歩んでいきたいぜ! と思っている方は是非、ご自分に問いかけてみてください。

Q1.その子(たち)の日常を思い描けますか?
・その子は何時に、どんな風に起きますか?
・その子はその日、昼食に何を食べますか?
・その子が泣いています。なんで泣いているか教えてください。
Q2. その子(たち)を一言で言うと、どんな子ですか?
Q3. その子(たち)の未来を思い描けますか?
・その子(たち)はどんな壁にぶつかりますか?
・どんな風に成長しますか?
Q4. その子(たち)はどんなふうにアウトプットされていますか?
・その子(たち)はユーザーさんの毎日の中にどんな風に入り込んでいますか?
・その子(たち)の決め台詞や名シーン、イメージカラーを教えてください
Q5. その子(たち)を、都合のいいように扱っていませんか?
・その子(たち)が知らないことを言わせていませんか?

以上です、ありがとうございました!

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