デザイナーとして海外就職するまで in London
こんにちは、moeです。
夏も終わりに近づき、ロンドン在住4年目に突入しました。
時の流れが早すぎる……。
現在ロンドンのデザインスタジオでグラフィックデザイナーとして働いていますが、ロンドンでグラフィックデザイナーとして就職活動をした際の情報がほとんどなかったので、今回記録として書き残したいと思います。
私の場合、ロンドンでの現地就職は「運」「縁」「タイミング」が大きな要素でした。クリエイティブ職でのロンドンの就職状況は非常に厳しく、私と同じバックグラウンドの方が同じルートで就職できるとは断言できません。私のコースメイトの中には、卒業から半年以上たっても苦戦している人も多く、今年は特に厳しいと聞いています。
私自身は、6社程度しか応募しておらず、反省点も多かったので参考になるかはわかりませんが、それでも自分の強みを活かし、どのように動くべきか戦略を立てて行動していました。そこで、私が取った対策について共有したいと思います。(めっちゃ長いです)
概要
バックグラウンド
まず、私のバックグラウンドについてです。
スケジュール
就職活動のスケジュールは以下の通りです。
大学院での2年半が忙しすぎたため、12月末に卒業してからは燃え尽き症候群のようになり、焦りつつも緩やかなスタートでした。
とはいえ、コースの先輩達が半年から1年かけて就職活動をしていたことや、100社応募しても落ちるという厳しい状況を聞いていたので、4月に仕事が決まったのは早い方だったのかもしれません。
結果として、6社ほど応募し、うち3社の面接に進み、2社からオファーをいただきました。応募数が少なかったのは、4月初旬に自分の条件に合ったインハウスグラフィックデザイナーの求人を見つけ、とんとん拍子で決まったからです。
もともと4月初旬にはポートフォリオをより充実させ、企業のリストアップ(60社ほど)を行い、作品を1つ増やした後の4月末に一気に応募する予定でしたが、4月に前職のオファーをいただくこととなり、就活を中断。5月初旬に現職のオファーをいただくことになり、インハウスデザイン職は1ヶ月で退職することとなりました。
転職先に関して
新しい転職先は老舗の中規模なクリエイティブスタジオで、ジュニアグラフィックデザイナーとして働くことになりました。
クライアントにはナショナルクライアントが多く、プロダクトデザイン界隈の友人によると有名なスタジオだそうです。
この会社に決まった経緯は、3月にこの会社で働いている知人から声をかけられたことがきっかけです。書類選考、面接(2回)が行われ、3ヶ月かけて選考が行われました。
4月から働いていたインハウスの環境も良かったのですが、デザインスタジオやクリエイティブエージェンシーでの就職が第一希望だったこと、面接中に会った方々の印象や、私のデザイン指向性とデザインストラテジーを理解し、プロセスを重視しており、そのリサーチをビジュアルに落とし込むことが評価されたため、オファーを受けました。(※ちなむとフルタイムではなく週4の契約社員契約です)
就活対策
自己分析
私は「ブランディング戦略」「タイポグラフィ」「デザインリサーチ・アカデミックリサーチが得意」「詩的なストーリーテリングが得意」「ミニマルテイスト(クール・女性的テイスト両方)」「エディトリアル・レイアウトデザイン」「文化・アート分野の展示VIの実績あり」といった強みを持っていました。これらのどれかしらの要素に合う職種・会社を絞って応募する予定でした。理想の方向性としては、以下を考えていました。
今回の会社は、1つ目の「デザインリサーチが強めのグラフィックデザイナーとして働く」に合致していたと思います。
ポートフォリオに関して
選考を通して最も見られるのはポートフォリオだと感じました。
経験者採用と新卒採用では見られ方が異なると思います。
何度かポートフォリオレビューに参加しましたが、海外就職におけるジュニアグラフィックデザイナーのポートフォリオとして、共通して以下のポイントは共通認識として押さえた方がいい基礎なのかなと思いました。
1人で作業していると独りよがりになりがちなので、5〜6人ほどにフィードバックをもらいながらブラッシュアップをしました。
また、一貫した人物像を意識して作成するよう努めました。ポートフォリオを通じて、「リサーチが得意」、「タイポグラフィが好きでブランディングができる」、「文化系の分野に興味がある」といった印象を持たれるよう意識しました。
CVに関して
グラフィックデザイナーの採用において、CVはあまり重視されないのではと感じました。
例えば、2社目の選考時は、LinkedInのURLとポートフォリオだけを送付して終わりました。(拍子抜けした記憶)
ただ、手を抜かずに、LinkedInのプロフィールやCVもきちんと更新し、一貫性のあるストーリー性を持ったキャリアに見えるよう工夫しました。受賞歴や成績などもきちんと盛り込みました。
面接に関して
準備はしていましたが、練習はあまりしませんでした。
3月に初めての面接に招待された際、全ての面接の文言を暗記してしまい、会話らしい会話ができず失敗してしまったからです。
その失敗を機に、いくつかの英語面接対策のYouTube動画や記事を見ました。そして、「英語の面接も日本語の面接と同じように、お互いがマッチしているかを確認するコミュニケーションの場なのでは?」(当たり前なのですが、笑)と気づきました。
そこから以下のことを心がけました。
このマインドセットに変わってからは、面接での会話を楽しめるようになり、ある程度柔軟に対応できたように思います。
ちなみに話したいことをまとめる際にこの本が役立ちました。
「よく聞かれる5つの質問」にテーマを絞り、「どんな表現を」「どんな順番で」「どのように言えばいいか」が描かれているので、この1冊読み、質問の内容の回答を整理すれば、ある程度自分の頭の中を整理できましたし、割と面接対策はなんとかなったなと思いました。
また、会話をするように心がけることや、積極的にコミュニケーションを取る姿勢を見せることは本当に大事だと感じました。
例えば、ポートフォリオを説明する際に、プロセスを重視する会社だと感じた場合、作品資料だけでなくプロセスを載せたスライドページも見たいか聞いてみる。また、面接後のフォローアップメールでデザインプロセスが描かれた卒論を添付するなど、柔軟なコミュニケーションの姿勢が評価に繋がったのではないかと思います。
やっておいてよかったポイント
1. 大学で好成績を残す
特に美大では、作品と成績がある程度直結しており、それがポートフォリオにも反映される気がしたので、良い成績を保っていた方が良いと思います。
経験者は別だと思いますが、私の場合はデザイナーとしての職務経歴がなかったのでポートフォリオはほぼ大学の作品で構成されていましたし、学内で取り組んだ作品(特に卒業制作と卒業論文)が評価され、現職の採用に至ったので、大学時代に集中して大学の制作活動に打ち込んだことは無駄ではなかったと感じました。
2. ロンドンで評価される賞や学外の活動を行っておく
前職のままでは、大学院卒業後のCVが薄くなると予想していたため、在学中にISTD(国際タイポグラフィ賞)に応募・受賞したり、Royal College of Artでパートタイムとして働き、展示のビジュアルアイデンティティ(VI)制作を行い、職務経験を積んでいました。
また、1月から始めたバイトでは定期的にグラフィックの作業を任されることがあり、その経験をアピールすることができました。面接でもその点を深掘りされ(「ロンドンの企業なの?」「英語を使うことが多いの?」など)、現地企業での勤務経験が評価されたのではないかと感じました。
少しでもチャンスがありそうなものには、飛び込んで実績を作っておいた方が良いかもしれません(大学で制作した作品を国際賞に出すとかでもいいかもしれません◎)
3. 自分がマッチするポジションのみ応募する
最近、採用を手伝う機会があったのですが、応募者の中にはジョブディスクリプションを読まず、「とりあえず応募してみよう」という感じで応募してくる候補者が意外と多いと感じました。
一方で、少しでも共通点や興味がある場合や、どうしてもその会社で働きたい!という意欲があり、その会社に合わせてポートフォリオ、CV、カバーレターを構成している方は非常に印象が良く、採用される確率が高いと感じました。数をこなして応募する戦法も重要ですが、全くポートフォリオのデザインテイストが異なる場合や、分野やスキルセットが違うのに応募することは、応募者にとっても企業にとっても時間の無駄だなと思いました。
4. カルチャーフィットの重要性
これまではあまり意識していなかったのですが、現在のデザインスタジオは雰囲気が穏やかで、デザイン好きが集まっている感じです。
自分が採用された理由がなんとなく分かった気がします。私は穏やかな雰囲気を好み、性格もわりと内向的な方なので、カルチャーが似ていると感じました。
5. ネットワーキングしておく & とにかく人に頼る
現職のきっかけは、去年参加したBBQで知り合った方から、1年後に声をかけられたことでした。何がきっかけになるかわからないので、自分のやりたいことや現在の活動を伝えることが大切だと実感しました。
また、就活を始めてから多くの人に助けられました。チューターたちには、会社の紹介やOBとのつながり、ポートフォリオの添削などをしてもらいました。すべてが直接的な就職に結びついたわけではありませんが、プロフェッショナルとしての視野を広げる貴重な経験となりました。
さらに、1人でいるとメンタルが落ちるな…と予想したので、同じ状況にある前のコースメイトに「週1で作業会をしよう」と提案して、定期的に作業会を行っていました。一緒に目標を立て、作業や相談や雑談をすることで、かなり精神的にも助けられました。(大学の時より卒業後の方がコースメイトと仲良くなっている。嬉しい)
6.諦めない。自分ならできるという自信を持つ。
ロンドンの寒い冬の中鬱々となりながら就活はかなりメンタルに堪え、たまに日本帰りたいなと弱気になったり、見えない将来の不安に就職できるか不安はありましたが、自分ならできるという気持ちを持ち続けていました。
デザイナーとしてはまだまだですが、3年間で一生懸命をしてきた自負はあったし、ここで何も決まらないのはありえないしあり得たくないと思っていたのもあるかもしれません。
この3年で当たって砕けろという精神ではなく、やるからには勝ちを狙う姿勢をとるし、そこの努力は惜しまないメンタリティを身につけられたおかげで(スポ根)、なんとかなったような気がします。
10代や20代の頃は、勝負に立たず、逃げてゆるく生きていたのでこの姿勢を身につけられて成長したなあとしみじみ思います。
後悔ポイント
1. 自信を持ってドリーム企業に早めに応募しておけばよかった。
クリエイティブ業界ではよくあることかもしれませんが、私はインポスター症候群に陥りやすい傾向にありました。
自分の好きなグラフィックスタジオに応募することを考えていましたが、自分がまだそのレベルに達していないと考えてしまい、応募を躊躇していました。今考えると、自信を持って応募しておけばよかったなと思います。
2. バイトはしない方がいい
ビザ代を稼ぐために働いていましたが、バイトをしていなければもっと早く就職が決まったのでは?と思っています。
1月から4月までほぼ週5~6勤務でバイトをしていたため、「私はロンドンで何をしているのだろう…?」と感じる日もあり、30代前半の私にとって体力的にもメンタル的にも厳しかったです。
就活とバイトの両立は難しかったので、金銭的に余裕がある人はバイトをしない方が良いですし、親に頼れる人は援助を受けた方が良いと思います。もしバイトをする必要がある方は、リモートでできるバイトを探して体力と時間を温存した方が良いと思います。
3. 時間と余裕があれば大学在学中から就活を始めるべき。
応募は始めなくてもいいと思いますが、ポートフォリオとCVの準備だけでも初めておいた方がいいかもしれません。
現在&今後
現在は新しい環境で、英語とデザインに取り組みながら、日々ロンドンでサバイブしているなあと感じています。会社はありがたいことに優しい人が多く、アットホームな雰囲気です。
今後さらに2年間ロンドンに滞在する予定であり、どんなグラフィックデザイナーになっていけるのか模索中ですが、仕事ではブランディング戦略やVI、リサーチを特に行っていますし、ここは基礎的に伸ばしていきたい部分。リサーチベースのプロジェクトやデザインに関する文章作成にも得意なので、その辺りも挑戦していきたいなと思っています。
また、最近、ロンドンでのTypography Summer Schoolというコースに参加したことで、タイポグラフィへの興味がより強くなりましたし、文化やアートに関連するプロジェクトにも挑戦してみたいなと改めて思うようにもなりました。(タイポグラフィをベースにしたブランディングやエディトリアルをしてみたいなあとか。)
今後、自分の興味を追求しながらスキルを伸ばすため、週末にフリーランスとしても挑戦したいと考えています。もしお仕事の機会やコラボレーションの機会があれば、ぜひお声がけいただけると嬉しいです。
ではでは〜
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