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パン屋の おはなし あのね  とある日曜日

とある日曜日、彼女はいつものように店番をしながら、あの二人のことをかんがえていました。
『仲良くやってるかしら・・・』

そんなときです。来たよ来ましたよ、あの少女が・・・
「クッキーありますか」
「ごめんなさい うちはクッキーデーにしか焼かないのよ」
「そうですか・・・・ あのごまの入ったクッキーはなんていう名前なんですか?」
「名前? そっかあ名前あったほうがよかったかしら・・・・ん~『おかえり』かな」
「じゃあ他のお店にはないんですね・・・・・」
「そうねえ たぶん同じものはね」
とても残念そうです。
「どうしたの?」
「もう一度食べて、自分でも作ってみようかと思って・・・」
少女は小さなため息を一つつきました。
「そして、彼に食べさせてあげるんだ?」
少女の目がまんまるです。顔がまっかになりました。
「あら、ごめんなさい」
と彼女は言って、あのクッキーのいきさつやら、少年のことをみんな話してあげました。話をしながらレシピを書き少女に渡しました。
「ありがとうございます」
少女ははにかみながらレシピを受け取るとしげしげとながめました。
「上手にできるかしら・・・」
「きめては・・・ね 一番下に書いてあるでしょう」
『味の決め手は 想いの深さ がんばってね』
少女は素敵に微笑むと頭を下げて帰っていきました。

作業場から顔を出した彼が
「今の子 かわゆいねエエ」
とニコニコしてます。
「どーせ わたしなんかより うーーーんとカワユイわよーだ!」
彼女はちょっとふくれながら言いました。
あーあ いけないんだ おこらせちゃいましたよ。
ん? 彼ったら聞こえなかったのでしょうか。『しまった!』という様子もなく・・・
「笑顔が君と同じだ・・・」
おりょ?
「・・・えへっ」
今度は彼女が赤くなっちゃいました。


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