ギブソン・カクテル
『このバーテンダーは曲者だ』
まったくのポーカーフェイスだ
ウィンクの一つもよこさない
『ありがと』
2つのカクテルグラスがおかれた
「お隣の殿方からからです」
バースプーンをうやうやしく差し出した
彼女はバースプーンと私の顔を交互に見比べ、
これから自分が何をすれば良いのかわからないようだった
曲者のバーテンダーが、小さなガラスの小皿にパールオニオンを乗せ、グラスの横に置いた
彼女は自分のグラスを覗き込み、また私の顔を見た
おそるおそるスプーンですくい取ったのはパールの指輪
じっと見つめる彼女の目から、大粒の涙がこぼれ、グラスに落ちた
成り行きを見守っていたバーテンダーは、黙ってパールオニオンのがのったままの小皿をさげ、離れていった