パラダイス・カクテル
そのバーに、・・・・
そう、れいの4人目のバーテンダーのいるバーに
彼はすでに上機嫌な様子で、カウンターの席に座るやいなや携帯をいじりはじめた。
「わははは ボクボク」
「うん 終わってえ 今あ~ こないだ教えたバーについたとこ」
「うんうん 待ってる 」
「近くに来たらさ、携帯ならしてよ」
「うん は~い 待ってるう~ じゃねえええ」
彼女とのやり取りに違いない。
よほど待ち遠しいと見えて、なかなか落ち着かない。
「お客様、まずはこれをお飲みください」
4人目のバーテンダーがグラスをだした。
かなりシリアスな表情で・・・・
「はいはい 飲みますよ~ 今日は もう 何でも 飲んじゃう」
心ここにあらずの彼は、返事だけはしたものの、相変わらず時計とニラメッコしている。
4人目のバーテンダーは少しはなれたところから、彼をじっと見つめている。
『こればかりは邪魔できない・・・一口さえ飲んでくれたら・・・』
『お相手は、けっしてやって来ません。あなたに訪れるのは彼女ではないのです。』
そうこうしているうちに、彼の携帯が鳴った。
けたたましいファンファーレの着信音。
待ちうけ画面を見るや否や、彼は表に飛び出していった。
数秒後・・・・
すべての客の視線は、けたたましいブレーキ音が聞こえる入り口のドアへ集まった。
『だめでしたか・・・・』
『一人で逝ってしまいましたね パラダイスからヘヴンへ』
さて、
あのグラスを飲んでいたら、どうなっていたのでしょう。
彼はドアを開けたところにある敷物に足をとられ転んでいたはずです。
かのバーテンダーはジンを使わず、ウォッカのスピリタスでグラスを作っていたので
した。
『生命の水』にあやかろうとしたわけではありません・・・・
『強いのをひっかけて、足がもつれでもしてくれないか・・・』
そう願ったのでした・・・・・・・・・
「寿命」
そう言って、4人目のバーテンダーは奥に入っていきました。
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