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FGA を目指して

はーーーーーーー、、、、やっと、やっと終わりました。

Gem-Aの試験。

妊娠、つわり、出産、育児、そしてもちろん仕事も平行しながら勉強してきた1年半。本当に長くあっという間でした。

私が受けた Gem-Aのディプロマというのは英国では学士号と同等とされるものです。一般の方にはあまり知られていませんが、”色石の権威” ”最難関”とよく言われ、GIA GG を持っている人や現役のラボマンなども受験しているいわば宝石学教育のトップ。お金を払えば受かるものではなくて出来なければ容赦なく落ちる。受かった人だけが FGA と名乗れる、宝石の世界でもっとも難しい資格試験です。

実際に受験している人の殆どが現役でジュエリー業界でお仕事されている方達。内容もまあ本当に難しい。。。覚えれば答えられる問題ではなく、全て論文形式で理解していないと答えられないものばかりです。手応えでいったら五分五分でしょうか.... 分からなかった所や間違えた所が沢山有るので、受かればギリギリ滑り込み、パス出来ない可能性も大きいです。

2年前、私が改めて宝石学を学ぼう!と思いたったのは、これからの自分の在り方を考え直したからでした。実践的な経験はある程度積んでいたし、バンコクでも勉強していました。だから今までのままでもMOEMI SUGIMURA もSELSHA も続けられていた。でも色石のジュエリーをやるに当たって、そして天然石の販売をするに当たってそれでは足りないと思ったからです。

なぜなら私のブランドの魅力はデザインの独創性や造りではなく、何よりも“石そのもの” だから。

講習を始める前にチューターの先生と話したことが今でも頭に残っています。

「なぜ Gem-A を受けようと思ったんですか?」

「私のブランドは ART OF NATURE をコンセプトに、天然石のアート性にフォーカスしている石選びが特徴です。元々自分がファッションやアートが好きな事と、今までのバイヤーとしての経験があったので自然な発想でした。今でもそれは変わりません。でも時代性もあって、同じように宝石の一般的な価値基準よりも個性を謳う人は結構いる、そしてふと思ったんです。これって聞こえが良いようだけど、裏を返せば  ”私専門知識はありません” と言っているようなもんなんじゃないか?と。」

実際お客様はそこまで深く考えないでしょう。でも皆んなネットで情報を得る時代に「自分の見せ方」はいくらだって”創る” 事が出来るんです。それもブランディングの一つで私も含めて必要なことなんですが、一週間宝石を学んだだけでも ”宝石学を学んだ” と言える事に変わりはないし、旅行ついでに石を買っただけでも”海外で仕入れた”と言える。

「だから信頼を示せるようにしなければいけないし、実力も伴っていなければいけないんです。」

それが初めましての時の会話でした。

良くも悪くもブランドや売り手の背景が透けて見える時代。
そしてそれが魅力にもなり仇にもなる時代です。

ちょうど日本を離れていた間に無料のオンラインショップツールやハンドメイドサイト、フリマサイトなどが当たり前のようになってきていました。海外にいた3年間はあまり考えていなかった日本の状況。でも帰国して徐々にその様子がわかってきて、お客様の選択肢が多様になっていることを目の当たりにしました。

わざわざ自分から探さなくってもSNSは勝手にレコメンド機能で近しい人たちを見せてくる。そしてお客様から見れば私もその中の一人にすぎない、それが現実でした。同じ市場で同じ土俵に立たされているんだと。売り手にも様々あって、お客様はそれも解った上で選択する時代になっている。

私だけでなく世の中全体が大量生産に疑念を抱き、溢れすぎたモノに飽きて、色石や一点ものの需要が増えていました。自分の信念はちょうどその波には乗っかるけれど同じような人が沢山いるはず、そう思った時自分の掲げているコンセプトってすごく薄っぺらな言葉に見えてきてしまったんです。

先日のこと。勉強のために石について検索していた時、たどり着いたサイトで違和感のあるスターサファイアを見つけました。よく作り込まれた見やすいオンラインショップで、店主の熱い思いも伝わってきました。石は一点ずつ大切に選んで海外で買い付けていて、天然にこだわっているとも書いてありました。

でもそのスターサファイアは合成なのです。慣れれば色味やスターので具合でもすぐに気付けるものなのですが、それはネット上の写真でもわかるほどに決定的な合成コランダムの構造が見えました。でも天然のスターサファイアとして売られている。

そうするとそこに ”丁寧に美しい言葉を選んで綴られている" コンセプトやポリシーは全く説得力の無いものになるのだと改めて実感しました。もちろん失敗は誰でもある事です。私も昨年ダブレットのルチルクォーツを看破できずに販売してしまって、お客様が気づいてくださって返品になったという反省があります。

Gem-Aの勉強を通して一番感じたこと、それは「無知を知る」でした。哲学者ソクラテスが処刑されれるに至った理由と一緒です。ソクラテスは神の思し召しから、当時、知識人として偉そうにしていた人たちを弁論によって片っ端から論破し、彼らが無知であることを知らしめ、それによって反感を買い最終的には処刑されてしまいました。

「無知を知る」その通りだと思いました。

宝石の知識は終わりがありません。原子や電子のことから地質学まで、全てを網羅するのは無理に等しいのです。解ったことが増えるぶん、解らないことの多さに気づかされる。今までどうやって仕事していたんだっけ?とすら感じてしまいました。

だから仮に一発合格でFGAを名乗れるようになったからといって、「私ジェモロジストです」なんて自信を持っては言えません。普通は肩書きをどんどん使うんでしょうけど、自分としてはスタートラインに立ったひよっこくらいの感覚です。

受講期間中、お世話になっている研磨師さんに「今仕事出来てるのにそんなの取って意味あるの?」と言われた事がありました。その方はGIA GGを持っているので世間的には宝石鑑定士の資格がある人だと言える。でもお免状ビジネスが嫌いな私としては理解できる部分がありました。要は肩書きじゃなくて実力が大事だと。でも実際勉強してきて試験を受けてみて、大いに意味があったと今は感じています。

この期間中に成長できた事がどれだけあったか。だから落ちればまた受ければいいし、受かっても学びは続けます。ひとまず長かったこの2年間の大きな区切りを終えました。これから知らされる結果はどうであれ、なんだか晴れ晴れしい気持ちです。

そしてこの私の挑戦は家族の支えなしには成り立ちませんでした。よく周りから両立させるなんて信じられないと言われますが、本当に出産前後の状況では自分だけの力ではとうてい無理な事です。

昨日は、「今まで頑張ったね」と夫が行ってみたかったお店を予約してくれて労ってもらいましたが、こちらがありがとうと言わなければいけない立場です。そして夫は私の勉強する姿をずっと見ていて、今度は自分がと言いだしました。さすがすぎる好奇心の塊  笑。今度は私が家庭を支える番のようですね。

FGA の事はまた別にも書きたいと思いますがとりあえず今日はここまで。頭を切り替えるのに数日かかりましたが、これからは10月の個展に向けて集中したいと思います!

追記 : なぜFGAを目指してたかというラジオはこちらから⬇︎ (2021.5.16配信)

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《 NEXT EVENT 》
MOEMI SUGIMURA x SELSHA 個展

at MUSA JAPAN 横浜
2
020.10.8(木)~10.11(日) 

MOEMI SUGIMURA x SELSHA  POP UP EVENT 
at 名古屋 Fuligoshed
2020.11.28(土)~12.28(火)

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