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甲州貴石切子 x me

この note の 前半は2018年 の夏に書いてあった記事です。Blog を始めようと思ったきっかけの日、つまり私の最初の note です。ずっと下書きのままでしたが改めて見返してみて、初心に返るとともにやっぱり自分の考えは変わっていないと感じます。2年前に書いたものなんだなと思って読んでみてくださいね。

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「手仕事と大量生産」「日本の技術と海外生産」
先日の事 (2018年 7月3日) ものづくりの新しい可能性を探るべく、とある工場にお邪魔してきました。この日がブログを書こうと思ったきっかけの日。いつも他のSNSで端的にまとめているけれどこの日はそうもいかず、頭の中を整理しようと書き綴っていました。

行った場所は貴金属彫刻の工場。ブランドロゴの刻印をオーダーしていたのですが、最先端の機械を導入してジュエリー刻印以外にも様々なものの型を作っている工場です。そこで感じたのは、どんどんものづくりに人の手は要らなくなるという実感。それとは反対に、”人の手で作られた” という事に、より価値を見出されるんじゃないかという予感もしました。

日本製の機械を使った最先端技術を見ると「職人はどんどん淘汰されてしまうのではないか」と本当に感じました。最近のAIの話題では  ”これから残る職業はクリエイティブな仕事” とよく言われますがその通りかもしれない。だけれどそうやって機械のみで大量生産されたジュエリーが欲しいか?と考えると自分はNO なんですよね。正確に同じものが何万個も必要な業界もある、でも特に色石を使ったジュエリーの場合は違うと思うんです。

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私は服飾の専門学生だった時、インターンショップでミセスのアパレル会社で働いた事があるんですが、その時のたった1日の検品業務でその後の人生が変わりました。今でも鮮明に覚えている地下室にズラーっと並んだ大量の同じ洋服。それがコムデギャルソンだったなら話は違ったかもしれませんが、ファッションを志しオシャレに夢中だった年頃の私には ”ダサい” 以外の何物でもない服たちでした。

その光景は今も脳裏に焼き付いていて、その1日でアパレルで働くのはやめようと確信したのでした。オートクチュール的なアプローチもあるけれど大半のアパレル会社は大なり小なり量産の商品を作り売っている。時代もまさにファストファッション全盛期に差し掛かっている時でした。

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この日工場に伺った時も、ちょうど最近請け負ったという大手ジュエリーメーカーの製品がありサンプルをや工程を見せていただきました。仕入れや製造のプロセスはまだまだ一般の消費者には見えない部分です。同業者のはしくれとしてペラペラと喋ってはいけない事もあるのですが、まさに典型的な量産、低コストでかなり利益が乗っかっているだろう商品でした。

その機械を使いこなすことも立派な仕事だし、ましてやそれが日本製の機械ならその技術そのものも日本の誇れるところです。でもやっぱり私には一瞬で何千個も同じものが生み出されるジュエリーを、綺麗なショーケースに飾って10数倍にして売るというビジネスにはいくら利益が出ても興味が持てませんでした。

もちろん量産の全てがダメなわけではありません。ファッションブランドの中でも、お金が稼げるラインを作ってそれを本当に力を注ぎたいクリエーションの資金にしているところは沢山ある。でもそれはビジネスモデルとしてオープンで、かつコレクションで素晴らしい世界を見せてくれるからカッコイイと思えるんです。自分もそうでなければいけないと改めて感じました。

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私はブランド立ち上げた2年目をバンコクで過ごしていたのですが、大手企業が低コストを実現するためにタイでジュエリーを量産するのとは違って、私はタイでしか作れなかった。なので今も MOEMI SUGIMURAの商品の生産の半分はタイです。ちょっと経緯が異色なんですよね。

でもこうして日本へ戻って改めて日本の技術を見ると、やっぱり日本人だからそれを活かした活動をしたいと感じます。それが量産の方法であっても日本が誇る技術ならばうまく取り入れて行きたいなと。私は自分がコツコツと手を動かすよりも、どちらかというとディレクションの方が向いているので、外に向けたパフォーマンスを得意としない技術者の方達と足りない部分補いながら、得意な部分をお互い活かしながら、これからの仕事ができたら嬉しいです。

手仕事と大量生産。メイドインジャパンと海外生産。今私はこの相反するもの狭間にいて、自分の信念に耳を傾けながら MOEMI SUGIMURA の方向性を探っています。

買う側がもっと本質を知り、人が関わって時間をかけて丁寧に作られたことに価値を見出せばそのものを大切にし心も豊かになります。その為には作り手がそれを発信しないといけない。 note がその発信の一つになればと思っています。

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2年が経って
ここまでが2年前に書いていた文章でした。考えていることは今も1ミリも変わらず、でも私なりに成長して繋がりも少しずつ増えて、今回の展示会では初めて日本が誇る技術の結晶、甲州貴石切子を使ったジュエリーをリリースします。改めて振り返ってみると2年前に考えていたことがちょっとずつですが実現できているので嬉しいですね。

実は切子は以前から気になっていて、2年前のこの note を書くよりも前に発案者の深澤さんに製作を依頼したことがありました。でもその頃はまだまだ私の経験不足でジュエリーにまですることはなく、今回が初めてです。

といっても甲州貴石切子は使っているデザイナーさん、作家さんがとても多くて私がやるべきではないと感じ始めていました。そんな矢先、表面のカットをされているシミズ貴石さんにお邪魔した時のことです。

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会長「あれ、あんたは切子はやらないの?」
「他にやっている方が沢山いるのでもう遅いですよねえ、、、」
社長「遅いこた〜ないよ!やらないと!」
「そうですか〜?ハハハ〜」
お弟子さん「私デュモルチェとかでやってみたいんです」
「あ〜私はプラチナルチルでやりたかったんですよね〜」
「.... あれ ? 今預けてる原石にデュモとプラチナルチルありますよね?」

という話の流れで別のカットで依頼していたまだ手つかずの原石を引っ張り出し「これ切子イケそうだね?」「じゃあお願いします〜」という感じであれよあれよと予定変更で切子に生まれ変わることになったんです。

ちょうど運良く清水さんは”世界で唯一” と言われる手擦りで180面体を作る桔梗カットの製作真っ最中。私達と話しながらもスイスイと仕上げていくその手の感覚には感心するばかりでした。

それまでカットが進んでいなかったのはきっと必然で、この子たちは切子でデビューする運命だったんでしょうね。トラピッチェのようなセクターのあるアメシストは以前から深澤さんに相談していたものなので、結局は他にもいくつか追加して個展に間に合うようカットしていただきました。

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プラチナルチルの切子はアームも模様に合わせて折り紙のように、和モダンです。太陽ルチルは放射の方向と切子の角度がぴったり!まさに職人芸ですね。

アートもそうですが、こういった技術の詰まったものを買う時いつも思うことがあります。自分のその買い物が職人の技術を支えることに繋がるんだと。そういう買い物の仕方が私は好きです。

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今は100円均一でなんでも揃う贅沢な時代です。豊かなようで実は反対に本質的な豊かさを失っているように感じます。よく母がスーパーで買うより商店街の八百屋で買った方が、自分が払ったお金が目の前のその人の生活の為になるってわかるから良いって言うんですが、100円の人参だけじゃなくて芸術品や工芸品、ジュエリーもそう。

駅ビルの安いアクセサリーは日本の雇用を支えていないし、技術の継承、伝統の継承にも全くならない。これがもっと続いたら日本の誇れる技術や感性はますます無くなってしまいます。だから私も3年越しで切子ブームに乗っかることにしました。

さてさてもうすぐ個展が始まります。新しい試みなので私たちもとても楽しみにしています。皆さんにとっても素敵な時間になりますように!

花屋さんで開催するに至ったいきさつはこちらのnote から。
《 花 と 石 と ジュエリー 》

展示会のご予約はこちらのサイトよりお願いいたします。
▶2020 Autumn Exhibition

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《 NEXT EVENT 》
MOEMI SUGIMURA x SELSHA 個展

at MUSA JAPAN 横浜
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020.10.8(木)~10.11(日) 

MOEMI SUGIMURA x SELSHA  POP UP EVENT 
at 名古屋 Fuligoshed
2020.11.28(土)~12.28(火)

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