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フットボールを生きる街 #11 三拍子

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“En ningún sitio suenan mejor los aplausos que en Sevilla, una de las ciudades más musicales que conozco.” - Daniel Barenboim

「セビージャより美しく手拍子が響く街はない。セビージャはわたしが知るかぎり、世界で最も音楽的な街のひとつだ。」 

春、セビージャはフェリアの季節。普段は何もない更地に無数のカセタ(テント)が張られ、皆伝統衣装で着飾って、シェリー酒を片手に家族や友人と朝まで歌い、踊り、語り明かす。 

見渡す限り極彩色に彩られた晴れやかな雰囲気の中、どこからともなく聞こえてくるのは心地よい三拍子。フェリアに欠かせない音楽、セビジャーナスのリズムである。 

 いつの間にか、会場内を走る馬車を引く馬の蹄も、自分の心臓が打つ鼓動さえも、この三拍子を奏でているような感覚に陥る。おそらくそれは錯覚などではなく、この街に深く根づいた呼吸の律動そのものなのだろう。

サンチェス・ピスフアンで毎試合前に必ず歌われるイムノもまた、美しく情熱的な三拍子を奏で、スタジアムにいのちを吹き込む役割を果たしている。

観衆は手のひらを打って、ハレの日、特別な祭りの日にふさわしい音楽を鳴らす。そして選手たちは、それに導かれるように、軽やかに舞う。

1拍目、力を込めてピッチを踏みしめる。2拍目、蹴り上げて大きく飛ぶ。3拍目、美しい軌道を描いて芝生へと還る。魔法のように、スタジアムが踊る。自然と湧き上がっては消え、消えたかと思えばまた聞こえてくる、そのリズムは果たして誰かが鳴らす掌の音か、それともサンチェス・ピスフアンが脈打つ音か。

満杯のスタジアムで、イムノを歌おうと息を吸うと、自分が「生きている」という実感と、スタジアムが見てきた壮大な歴史とが、あまりに色鮮やかに、あまりに真っ直ぐに自分の身体に入り込んでくる。その美しさと、眼前に広がる圧倒的な光景とが相まって、ことばでは説明しようのない感情が涙となって溢れてくる。たがいに共鳴し、大きく脈打つスタジアムに武者震いしてしまう。 

フェリアが終わると、カセタや装飾は撤去され、あっという間に元の空き地が戻ってくる。浮き足立った賑わいの余韻は、その季節が去った虚無感を増大させる。

スタジアムも同じである。夢のような夜が明けると、空っぽのスタジアムは、ほんの数時間前とは似ても似つかぬほど、静かで無機質な空間となる。

しかし、ふと自らの鼓動を感じるとき、わたしたちは、目を閉じるだけで「あの日」のスタジアムへと帰ることができる。スタジアムは、観客が寝静まって、いつか試合のことをすっかり忘れてしまっても、その脈動を止めてはいない。歓喜の瞬間も絶望の幕切れも、わたしたちがいつでも思い出すことができるように、今日も三拍子のリズムで踊り続けている。

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スタジアムは生き物だなあと思います。サポーターが歌うと、踊るんですよね。 


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