醒めた

大好きだった兄貴が、仕事の都合で大阪に異動することとなった。

今まで企業の組織開発を行っていた兄貴は、自分の属する組織をより良くしたいという気持ちを抱くようになり、その挑戦の場が大阪にあったらしい。

兄貴とは5月くらいから月に2,3回は会うようになっていた。会い始めたころは、スランプ真っ盛りで、覇気がない感じだった。今は、そのスランプから脱却し、彼が長年悩んできた「人と比べてしまうこと」をしなくなったようで、すがすがしい顔つきをしている。

私は、5月にはすでに大切なパートナーがいて、兄貴に会うことを隠していた。

大阪への異動は、私たちの関係に”終わらせなさい”という”お告げ”的なものが下ったんだと思った。だから、兄貴には「もう会えない」と伝えた。彼は「白黒はっきりつけなくていいじゃん」といった。

でも、つけなければならないと思ったし、つけたいと思った。

何故つけたいと思ったのかを考えてみると、単純な話だということがわかった。

もう私は、兄貴に対して「かっこよさ」を感じなくなっていた。

外見、仕事の仕方、癖、ノリ、初めて会ったときはすべてに魔法がかかっていて、すべてかっこいいと感じていた。

今は、仕事の仕方を除けばすべて「あまり好きではない」という風になっていた。彼のスランプな時を見ていたからではないと思う。

目の調子が悪くて、コンタクトから眼鏡になった時。
カラオケで踊りまくっている姿。
電車の中で肩にもたれかかりながら寝ている時の、まつ毛の長さ。

これら一つ一つが、「かっこよさ」という魔法を解いていった。

魔法は醒めるとあっという間に事実を映す。この事実が、白黒はっきりつけたくなった理由だった。


兄貴、大阪でも頑張ってね。

とっても嬉しいです。創作活動の励みになります。