どこまで続く…ドイツの養育費
ああ、ダメです。心が折れそう。
高校卒業後、進路迷走中の娘ちゃん。(過去記事有)
夏休み最後の週末ミニ旅行中の土曜の夜に、娘ちゃんから今後について話がしたいと申し出がありました。
「父と娘で話し合いたいなら、私は部屋にいるよ。」と言うと、「萌もいてくれた方がいい。弟ともまだ話していないので弟も。」と言うので、4人揃っての話し合いとなりました。
娘ちゃんは、「この秋から大学へ行く。」と言います。夫も私もほっとひと安心しました。すると、続けて「大学の後に院へ2年間行く。」と。それも前にもチラッと聞きました。「その間は、パパと同額の養育費をママからももらう。」と。
夫は改めて、「やりたい事がある事は良いと思う。大学へ行くのも誇らしいよ。養育費は、通常の大学生活期間を予定している、それ以上は養育費を当てにするのではなく、自分で大学生活中にアルバイトをしてお金を貯める、院にもアルバイトをしながら通うなど、自身でも院という目標があるなら努力して欲しい。経済的にも自立の準備をして欲しいんだ。努力しても資金が足りないなど困ったら、その時には相談してくれたら僕達にできる範囲で助けたいと思っている。」という話をしました。「アルバイトだって週に2、3日すれば、月には数万円になるよ。」と。
ですが、娘ちゃんの答えは「学業に専念しないと、もっと卒業が伸びることになる(←もっと養育費を払う期間が延びることになるよ、というニュアンス)。」でした。更には、「大学では取りたい授業が沢山あるので、3年で終えられるかもわからない(ドイツでは日本でいうと高校と大学の間にAbitur/アビトゥアという大字入学資格習得の為の1年があり、大学は留年なしで通うと3年間です)。院に行けばもっと勉強が忙しくなる。」と。学業はのびるかも知れないよ、と話し、アルバイトは全くする気がない。
しかも「学業中の養育費は両親の義務」という考えを、言葉の端々に出しながら話をしてくるのです。
確かにそうなのです。
ドイツでは、学業中の養育費は両親の義務で、大学を留年し続けたとしても25歳まで、院へも行くなら最長27歳まで、養育費の支払い義務があります。(院へも行くならなのか大学生のままでも27歳までなのかがちょっと定かではありませんが。)
そういった状況はあれど、私達夫婦としては、そもそもの教育方針として、いつまでも親にお金を頼るのではなく、経済面でも自立を目指し、せめて、その心意気を持つとか、努力を自分でもして欲しいのです。
養育費が落ち着けば、私達夫婦にも夫婦でやりたい夢があります。それは夢であると同時に、夫の身体を今のように酷使せずともお金を長く稼げるようにと、老後の収入を確保する方法の模索でもあります。(夫の今の仕事は身体を使い、仕事病で腰痛と膝痛があり、いつまで続けることが出来るのか不安があります。) 子供達の為に、生活に不便のないレベルの養育費を支払えるだけの収入を確保しなければという重圧は、夫にとっても軽いものではありません。
夫自身は大学ではなく専門学校へ進みましたが、家庭はお金に余裕がなく、自力でお金を工面しながら学びました。学びながら働き、更に家にお金も入れていたそうです。
そういった自身の話も娘に話します。ですが、娘ちゃんに響いている様子はありません。
夫の話の目的は「自分はこんなに大変だった」というものではなく、その年齢だった頃の、目標に向かう努力や自立心について伝えたいのです。ですが、娘ちゃんの答えは「パパとは状況が違う(両親が払えないわけではない)。」でした。
この返しに夫は一瞬沈黙して「状況の話ではなくて、教育方針の話だ。」と返してはいましたが、娘ちゃんのそれに対する返事はありませんでした。
夫が身体の不安を話し、「いつまで今の仕事が出来るかも保証はなく、今の収入を保てるとは限らないんだよ。」と話しをすれば、「親の収入が減ればそれはそれで国の奨学金に申し込める。」と言うのです。
ショックでした。
大学を留年しようが院へ行こうが養育費をもらえるのが当たり前だ、という態度に。義務であるとチラつかせ、圧をかける言葉に。親がダメなら国の奨学金という考え方に。自分ではアルバイトをするという考えさえない様子に。そして、期待してはいけないものかも知れませんが、継母である私へもかかる負担への理解や気遣いの無さに。
離婚家庭だからと子供達に不便のないように、離れて暮らしているから父子がなるべく会えるように、継母である私とも信頼関係が築けるように…出来る限りの努力をしてきたつもりでした。少し前には、「萌が継母で嬉しいよ。」や、「パパの側にいてくれてありがとう。」と言ってくれて、連れ子と継母という関係ではあれどお互いを想い合えていると思っていました。
進路に迷走する娘ちゃんに、直接私の立場からの想いも伝えました。その時はそれも受けとってくれた様子の返事でした。でも、そうでしょうか。
基本の大学生活までで、なぜ充分ではないのか。
18歳で成人で、自分のしたい様にしたいことが出来るという考えのもと行動はするのに、一体いつまで経済面は親任せなのか。
最後には、大学就学前と来年の春に、彼氏との旅行を計画している、と話します。先月から今月にかけての彼氏との自転車旅行は、確かにテントを張りながらの貧乏旅行でしたがそれでも1ヶ月近くの旅行でした。また既に2回も旅行の計画があるなんて。旅費は、高校卒業のお祝い金がまだ残っているの?それとも、養育費からなの??
理解ができず、ストレスで、数日間、夜に眠れなくなりました。私は連れ子のある人と結婚しました。その責任は果たしてきたつもりです。でもいつまで続くのでしょうか。まだ足りない、子連れとわかっていて再婚したのだから養育費の支払いを支えるのは当たり前、家計の圧迫なんて私には関係ない、私は私のしたいようにする、と言われているようで、虚しく感じて涙が出ました。
娘ちゃんは、今住んでいる家と同じ街の大学へ行くのですが、半年後を目安に、学生寮に入るかWG(ベーゲー/2人以上の共同生活の場)の部屋を見つけて家を出ると言います。
その点は夫も賛成です。家を出れば、嫌でも自分でお金の管理をしなければいけなくなりますから。(今までは元嫁に私達からの養育費も全て渡し、必要な時に必要な分だけ元嫁からお金をもらうというお小遣い制でもない生活をしてきたそうなので。この制度では、やりたい事のためにお金を貯める…とか、お金の残高を見て出来ることや出来ないことを判断する…などの金銭感覚を育むチャンスがなかったのでは、と思います。娘ちゃんが18歳の成人を過ぎてから、私達夫婦からは、娘ちゃんには自分のお金(夫からと元妻から得るべき養育費)の管理は自分でするようにと何度も話しましたが、元嫁と一緒に住んでいるからこれでいいのだと娘ちゃんは全部を託してしまっていたのです。元嫁の方針には、私達から口は出せずでした。)
娘ちゃんは両親からの養育費だけで生活が出来ると考えているようですが、夫も私もアルバイトもしないなら節約生活をしないときっと厳しいと思っていて、家を出てからお金について学ぶ機会が来たらいいなと期待しています。
話し合いは気持ちの噛み合わないまま終えました。旅行中でしたし、私達も夏休みを嫌な雰囲気で締めくくりたくはなく、娘ちゃんと揉めたくはなく、なにより現段階では意識の変化は望めない受け答えでしたので、ある程度で切り上げました。
気分が落ち込み泣く私に、夫は「娘はこれから学んでいくのだ。」と言います。
娘ちゃんの考えや言葉は、夫もショックだったと言いました。「これからまだ事ある毎に話もしていくし、僕を信じて。」と言います。夫は娘と私の間にも挟まって、更に心労なのかも知れません。
この話し合いから1週間が経ち、少し気持ちも落ち着いてきたので、ここに書きました。
娘ちゃんも、新しい世界に飛び込む環境の変化に不安があって、自分の道を守ろうとした意識が、このように「養育費を確保する」という形で出ただけかも知れません。
経過はどうであれ、まずは高校卒業後に続けて大学入学となりました。結局、娘ちゃんが大学入学前に休憩したいと言ったことは、現実にはなりませんでした。(娘ちゃんの為に一言添えておくと、休憩する子もドイツでは多いのです。)
その事実だけを見て、今後も大学生活も無事終えるかも知れない、娘ちゃんの意識も変わるかも知れない…と、自分の心を落ち着かせるようにしています。
しかし、ドイツの法律。
離婚家庭でもその子供が苦難な状況へ追い込まれないように、しっかりと守られている事はいいことだと思います。本当に。
ただ、守り過ぎではないかしら。
義務というバリアーに守られて、子供がぬくぬくと楽に過ごす方法を選んでしまう事もあります。ダラダラとした学生生活を送られても、親には養育費の負担義務があるのです。親に「養育費を払え」と子が訴えたら子が勝ちます。そうなった場合、親の躾や教育方針が機能しません。
守られるのは、基本の大学期間だけでも充分ではないでしょうか。奨学金や学生ローンといった、自己責任も伴うけれど学び続ける方法だってあります。子供の自立心も育てる仕組みであって欲しかった、親子お互いの協力が必要とする仕組みであって欲しかったと思います。いや、親子の間で金銭感覚や意識というものを育てておけばよかったのだとは私も思いますが、離れて暮らす親側からはやはり難しい。そしてそれが出来ていなかった現実を、娘ちゃんの口から突きつけられて私達夫婦は叩きのめされているのです。
因みに、ドイツの大学授業料は、日本とは比べものにならず安いです。
1年は、冬期ゼメスターと夏期ゼメスターという2学期で成り立っているのですが、各ゼメスターが370〜400€程です。(1€ 120円計算で44400円〜48000円) 年間10万円以下ですね。
そして、この費用は両親に負担義務があります。子供が学業中は、養育費にプラスして大学授業料も親の義務なのです。授業料だけを見れば、大きな金額ではないと思うかも知れません。元嫁と折半での負担となりますし。が、この負担だけではなく既に養育費も払っています。我が家の場合ではもう1人、息子くんの養育費もあります。この秋から、今までの2人分の養育費に娘ちゃんの大学授業料がプラスされます。
※大学によってや、立場によってゼメスターの授業料は異なります。例えば、外国からの交換留学生など。
また、親が養育費を払えない又は払えたとしても少ない額という場合には、奨学金制度などがあります。
いつも聞き分けが良く、良い子だった娘ちゃん。反抗期もなく今まできました。今でも、悪い子になったという訳では決してありません。
ただ、大きくなるにつれて自我もより育ち、夫は離れて暮らしている為、夫の教育方針を子供に伝えていく機会は少なかった、今回のことで、そういったズレも、成長と共に大きく出始めているのだなと感じました。同じ家で育った兄弟でも、家を出れば周りの環境や生活の価値観が変わり、考え方が異なっていくのはよくある事です。この騒動を目にした息子くんは、今の娘ちゃんとは違った意識を持って育ってくれるように、努力したいと思います。そして、娘ちゃんの意識が変わりますように。大学生活を楽しむことも願ってはいますが、同時に、経済的な自立心も芽生えますように。
ああ、どうなって行くのだろう。
2020年8月31日