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「右園死児報告」がめちゃめちゃ面白かった話

 燃え滓はホラーも大好きだ。
 ここ最近のホラーブームはありがたく思っており、雨穴さんの「変な家」や背筋さんの「近畿地方のある地域について」も楽しく読ませて頂いた。
 そんな中、Twitter(現X)にて面白そうな本の情報が流れ着き、「これは読まねば」と思った。それが「右園死児報告」である。

この報告書は安全である。
「うぞのしにこ」と読む。
この文字列を、人間、動物、無機物、現象などの名前に採用すると、壊滅的な被害が出る。

「右園死児報告」真島文吉

 世界観としてはほとんど我々の知る現代日本といった感じなのだが、どこかズレている。報告書の中では「軍」といった言葉が多数出てきており、この日本には軍隊が残っているようで、どうやら我々の知る日本とは違った歴史を辿っているようだ。
 こういった、平行世界の日本を覗き見るようなホラー作品が大好物なので、燃え滓はすでにテンションマックスである。同じような作品だと、YouTubeチャンネルの「謎の映像・CMチャンネル」だろうか。

 このチャンネルに投稿されている動画も、「別の歴史を辿った日本」を覗き見るような感覚で非常に楽しい。

 さて話が脱線したが、どうやらこの日本では「右園死児」という文字列は常識の中に存在しているようだ。
 前述のあらすじ通り、「右園死児」という文字列をあらゆるものの名前にしてしまうと怪現象が起きてしまうらしい。そのため、そのような行為をさせないために監視体制が敷かれており、発覚した場合は専用の機関が対処するし、そんな行為をした人物は厳しく罰せられたり、場合によっては「思想洗浄」やら「存在洗浄」やらをされてしまうらしい。
 これはSCPでいう「記憶処理」「終了処分」ということなのだろうか。用語についての詳しい説明は出てこないので想像するしかないのだが、たぶんそうなのだろうと燃え滓は読み取った。

 そう、この作品はそのほとんどを「報告書」という形で記している。この形式も記憶にある。前述の「SCP」だ。

SCP財団(エスシーピーざいだん、英: SCP Foundation, SCPF)は、2008年に開設された共同創作(英語版)コミュニティサイトであると共に、その作品内部に登場する組織の総称。
サイトの主な創作物は、「自然法則に反した異常な物品・存在・現象・場所など(異常存在、アノマリー、SCPオブジェクト、SCiP)」の収容手順やそのアノマリーの異常性の説明を記した報告書であるが、その他にもアノマリーやSCP財団に関する様々な形式の掌編(サイト内では「財団Tale・Tale」と呼ばれる)がコミュニティ参加者により執筆されている。これらはWiki形式のウェブサイトに投稿され、まとめられている。

Wikipediaより

 燃え滓はSCPも大好きである。
 この「報告書形式」という作品形式は非常に熱い。SCPに慣れているため読みやすくもあった。
 詰まる話、SCPっぽく並行世界の日本を覗き見ながら怖い思いをするホラー作品なんだろうと、燃え滓は思っていた。
 ええ、マジで思ってました。

※ここからネタバレがあります! まだ読んでいない人は引き返して今すぐ「右園死児報告」を読もう!!
いやマジで前情報はこんなもんにして読んでくださいお願いします








 さて、ここからはオタクの感想である。
 燃え滓はいつも真面目っぽく文章を書いているが、ここからはちょっとオタクになる。まあ燃え滓はオタクなのでしょうがないよね。

 すっかりホラー作品だと思っていた「右園死児報告」。いや本当に序盤いや中盤くらいまではホラーなのだが、その終盤は全く違った。
 言うなれば、「めちゃ熱い能力者バトル小説」になったのだ。

 前述の通り、この「右園死児報告」の世界は「右園死児」を抑え込むために厳しい監視体制を敷いている。
 そのおかげで国民は「右園死児」から守られているのだが、その代わりに「いつも監視されている」という生きづらさも感じていた。らしい。
 それに反発する者たちが出てきて、挙げ句、「右園死児」を利用してテロを起こすという驚きの展開があった。そのせいで日本の政府は陥落。しかも日本が保有する謎の「右園死児」なる脅威を外国は危険視しており、スパイやら何やらも暗躍する急展開。
 もはや絶体絶命の日本!
 そこに立ち上がったのは……「右園死児化」した者たちだった!

 いやこんなん熱いやん。無理やん。映画化決定。スクリーンで見れる日をお待ちしております。

 報告書序盤から出てきていた謎のチート探偵だったり、周囲の人間を魅了してしまう「右園死児」と名付けられて育った女性だったり、はたまた「損壊した部分と同じ部分を消失させる」という能力を持った遺体がずっとついて回ってくる女性だったり。
「右園死児」によって様々な能力を得た者たちが、その能力を駆使して日本を取り戻そうと戦いを開始する。こんなんね、熱いですよ。
 ホラーを読もうと意気込んでいた心はどこへやら。読んでいる私の心持ちはバトル小説を読む心持ちへとチェンジ。いやたしかにね、能力自体は怖いしホラーなテイストは変わってないんだけどね。

 そして、戦いの終わり……。
 ホラーを読んでいたと思ったら、感動的な作品を読んでいたらしい。思わず目に涙を浮かべながらページを捲っていた。
 あれ……ホラー小説って、こんなに泣けるものだったっけ……。
 まさにどんでん返し。思ってもみない体験だった。燃え滓、こういうの大好きである。

 良い読書体験だった。素晴らしい作品だった。
 惜しむらくは、身内に読んだ人がいないため語り合えないことである。なので私は、政府に反しこの作品を広めようと思う。そのうち思想洗浄されるかもしれないが、その時まで政府と戦い右園死児を広めよう。
 マジで映画化待ってます。

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