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Center アーティスト・イン・レジデンス記録|3-5日目(栃木)

こんにちは、下浦萌香です。Center モニターレジデンスプログラム 滞在3、4、5日目の記録をまとめてみました。

3日目

この日は、締切が迫る申請書類の作成に追われ、バタバタと過ごしました。(この申請書類は今回のレジデンスとは関係のないものです)ただ、合間に少しだけ休憩を兼ねて制作活動を進める時間も確保することができました。

日帰り温泉

夕方、Centerの皆さんと一緒に日帰り温泉施設を訪れました。この施設は、栃木県鹿沼市に新しくオープンした、関東初の直営キャンプフィールドに併設されています。市が、「ダム建設の影響を受けた人々や市民が交流できる場」にするという思いで計画を進め、実現された施設とのことです。

この施設では700円で日帰り入浴が可能です。湯はぬるっとした肌触りで、他のsnowpeak施設に比べて料金が手頃だとか。立地的には車が必要ですが、Centerさんが車を出してくださいました。温泉から見上げた星空は広がりがあって良かったです。温泉で芯から温まり、申請書類の作業で緊張していた身体もほぐれました。温泉が日常のそばにあるのは本当に羨ましい。

温泉から戻った後は、再び申請書類作成に取り組みました。一緒に作業をしてくださった方のおかげで無事に提出完了。そして、こうして3日目が終わりました。

この日、一日中考えていたこと

この日一日、頭の片隅で考え続けていたことを書き留めておきたいと思います。

自分が「良い」と思う作品とは、リサーチ対象の地域に負担を与えることなく、上から目線になることもなく、緩やかに新しい視点を提示できるものだと考えています。そして、それが「面白い」と感じられる作品であるためには、地域を丁寧にリサーチしながら、時間をかけて制作を進めることが不可欠だと思います。そのためには、2〜3ヶ月間のまとまった滞在、あるいは1ヶ月程度の滞在を毎年継続するなど、長期的なスケジュールを検討する必要性を感じました。

一方で、時間を確保するために非正規の仕事に就いて制作に専念するという選択肢には、現実的な難しさがあります。特に、レジデンスやプロジェクトベースの活動を主軸とする場合、キャリアを重ねた40代・50代以降では、安定した収入源を確保することが一層難しくなるため、制作と収入のバランスをどのように保つかが大きな課題となります。

地域リサーチを基盤とした制作を続けるためには、滞在費や交通費をどのように確保するか、また支出を抑えるための工夫が不可欠であると痛感しています。

場合によっては、自分でプレゼンを行い、スポンサーを獲得するなど、少し大袈裟に聞こえるかもしれませんが、より積極的なアプローチが必要になるのかもしれません。

4日目

午前中の制作

午前中、制作に取り組みました。紙に着彩を施す瞬間一瞬が、実感を伴いながら自分の中に深く刻まれていくように感じます。この行為は、日常の中でつい流されがちな自分を戒め、立ち止まって振り返るための大切な時間でもあります。紙に向かい、絵の具を手に取り着彩する。その直接的な感覚を通じて、「今、ここに自分が存在している」という確かな感覚を味わうことができます。

個室B

その後、滞在している個室Bの机で仕事をしていましたが、この部屋はとても居心地が良く、集中しやすい環境です。天井が意外と高く、適度な密室感があるのも魅力的です。Centerのホームページから、個室B | Private Room Bの様子をご覧いただけます。

暖房をつけると空気がこもりがちですが、窓を開けて定期的に換気すれば快適に過ごせます。もともと引きこもり気質なのもあり、リサーチの必要性さえなければ、部屋から一歩も出ずに過ごせそうだなと思えるくらいです。

山間エリアのリサーチ

制作後、Centerさんに車を出していただき、山間エリアのリサーチに出かけました。

まず、鹿沼の特産品である深岩石の石切場が見られる場所へ移動しました。人工的に切り出された断崖が独特の雰囲気を醸し出していて、とてもカッコイイ景色です。深岩石は、火山灰が凝結してできた凝灰岩で、年間を通じて屋内の気温を一定に保つ特性があるそうです。

石切場。Googleマップの口コミには「昭和からこのような風景が続いている」と書かれていた。

街のリサーチについて、Centerさんに教えていただいた内容をすべて詳細に書いてしまうと、現地で体験する面白さが半減してしまうので、以下ではさらっと触れる程度に。

南摩ダム
軍馬之霊(慰霊碑)。鹿沼には石がたくさんある。
野州麻紙工房で、紙と墨と麻のお茶を購入。
野州麻紙工房の見学の際、なんと工房の方から「ついたお餅いかがですか?」と声をかけていただき、つきたてのお餅をいただきました。辛味大根の味付けがとても美味しく、心温まるひとときでした。Centerさんと一緒に伺ったおかげで、こんな思いがけない幸運に恵まれました。
ヘンプクリートハウスの外観も見ることができました。実験的にヘンプクリートを塗装した部分があり、その質感や仕上がりがとても興味深かったです。
何が販売されているかわかりやすい
安喜亭支店。大盛りラーメンが信じられないくらい安くてびっくり。
鹿沼市役所。いちごの圧がすごい。いちごの先端にはヒートンのようなものが。吊り下げて運ぶためのもの?
市役所の玄関に組子が

Centerさんといったん解散した後、今宮神社へ

花手水舎が綺麗
いちごの御朱印!?
オコジョみたいな石
階段の下に狛犬。可愛い。

5日目

午前中の制作

Centerのシャッター越しに見える、人が歩く姿が気になり、この人の流れを何かしらの形で作品に落とし込んでみても面白いかもしれない、と思いました。ただ、現時点では具体的なアイデアが浮かばないので、とりあえず頭の片隅にしまっておくことにしました。(結局、滞在中にうまく落とし込めませんでした…)

歩く人の姿が気になる
どんどん描き進めている様子
Center玄関の格子シャッターイメージ

制作後

お昼ご飯を食べに行く道中、Center近くで改装中ピボットの前に、建築士の渕邉さんがタバコ休憩をしていたので、話しかけてみました。

改装中のピボット

都内から1.5時間の栃木県鹿沼市は、かつて日本中の職人が集った宿場町。地域と「ものつくり」の接点を再構築し、鹿沼の文化・精神性を積み重ねながら更新していく現代版「宿場」をつくります!

【栃木県鹿沼市】ものつくり「宿舎」×地域の食堂「酒場」=ネオ「宿場」をつくる!|MOTION GALLERY

気さくにお話をしてくれ、おススメのお店を尋ねると「Aimerが美味しいですよ。イカ墨パスタおすすめ!」と教えていただきました。

cucina locale Aimer
渕邉さんに紹介していただき、早速Aimerに行きました。鹿沼市末広町にある小さな複合施設あむ にて営業しているフレンチ屋さんです。

さっそくパスタとデザートを注文しました。めちゃくちゃ美味しかったです!驚くぐらい!

いか たこ ボンゴレのパスタ
とても美味しいケーキ

鹿沼市末広町にある小さな複合施設あむ @am.suehiro1920 さんにて営業しております。
地元の食材を使いつつ、小さいお子さまからご年配の方まで安心してお召し上がり頂ける様な料理をお届けしたいと思っています。
※テイクアウトメニューあります。
数量が多い場合は事前にご連絡下さい。

Aimerの店内には、ビヨンセやレディー・ガガのカバーソングが流れていました。ふと「あれ?このアルバム、聞いたことがあるかも」と感じ、アプリで検索してみたところ、以前Spotifyで聴いたことがあるAimerさんのアルバムでした。Aimerさんのファンでこの名前をつけたのか、それともお店の名前繋がりでこの曲をかけているのか、どっちなんでしょう?(後日、直接お伺いしてその理由が判明しました。)

その後、Centerから徒歩5分以内にあるKEYHOLEさんに立ち寄り、noteの執筆をしていました。KEYHOLEさんは新聞屋さんが営業しているカフェで、2階はコワーキングスペースになっています。イベントも定期的に開催されているようで、玄関には写真家・千葉さんの展覧会のお知らせが掲示されていました。

そういえば、銀座通りのお店では、千葉さんの展覧会やGINZA OPERAのコンサートといった、鹿沼を拠点に活動されている方の広報ポスターを大きく掲げているお店が多く目につきました。銀座の街全体が一体となって応援している様子がとても印象的でした。本当に素敵だなと思います。

Centerへ

Centerへ戻ると、Centerさんのお子さんが1階のこたつに座っていて、Centerさんたちはバックヤードの備品整理をされていました。ふと、「スペース運営はバックヤード管理を制するべし!」と昔、知り合いが話していたことを思い出しました。

このタイミングでご挨拶をし、軽くお話もしました。こうした何気ない雑談の時間が、私はとても好きです。そして、Centerさんはお話の振り方がとても上手な方たちで、その何気ないひとときがとてもありがたかったです。

もつ屋

夕方、Centerから徒歩5分にある、もつ屋さんに行きました。ここは地域の人たちが集まる場所で、オーナーさんもとても気さくな方でした。お話を伺うと、「ここは関西からの移住者が多いよ、3人もいるよ」と教えてくださいました。ちょうどその話をしている時に、そのうちの1人がお客さんとして来店されました。その方は以前京都に住んでいたそうで、藤井寺市のこともご存知でした。また、オーナーさんから地域に根付いたディープな話をいろいろと聞かせていただき、「初対面の人にここまで話してもらえるなんて!」と驚きました。また別のお客さんから、仙台のお土産のクッキーをいただいたりもしました。

白石のうーめんがメニューのラインナップに

夜の制作

自分にはない筆致を取り入れてみたい、そんな気持ちがふと湧いてきました。自分だけの世界で描く表現そのものには、実はあまり興味がないのかもしれません。私は、自分の軸を大切にしつつも、人との関わりやその中で生まれる流れをつくることに、魅力を感じています。

Centerさんや訪れた人たちに、自分の制作の素材となる絵を描いてもらい、自分にはない筆致や新しい視点を取り入れてみたいと思いました。

Centerさんにプレゼントしていただいた麺や煎餅の袋をバラバラにして作品に取り込むことに
持参した布に布絵の具を着彩してみて簡単な発色実験をしました。ざっくりした絵ですが、これはCenterのロゴの緑部分。

最後に

なんと、CenterのInstagramストーリーを見ると私がゲストとして参加するイベントの予約が満席になったとのお知らせが!

私自身もスペース運営をしているので、集客の大変さを痛感しており、本当に感謝の気持ちでいっぱいです。(集客って本当に大変なんですよーーー!)

次回は、6日目と7日目の滞在記録をまとめていきたいと思います!


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