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腎移植ドナー日記 2023年9月19日(火) 入院2日目

いよいよ、手術当日です!


夜中3時過ぎに目が覚め、スマホをいじってまた寝て…を繰り返し、朝6:05にあわてて飛び起きる。6時からお水が飲めなくなるのである。最後にコップ半分くらいお水を飲んでまたウトウトする。あとやっておくことはブラジャーを外す、手術用の着圧ソックスを履く、お礼のポストをする、歯磨き。

出発の30分前に便意。下剤がしっかりと効き、大きな大きな置き土産を病棟トイレに。

たくさんのリプライやLINEに泣きそうになる。ガンバレ、成功を祈る、信じる、大丈夫、いってらっしゃい…温かい言葉ばかりが並んでいる。

昨日約束した「8時半過ぎ」から少し遅れて出発。看護師さんと二人トコトコと歩いて手術室へ向かう。ロビーには姉の旦那さんと姉が。旦那さんに貴重品ロッカーの鍵とスマホを預ける。姉は「ありがとう」ばかり繰り返す。私も同じ。移植について発表してから周りに感謝することばかりである。彼女から最後のガンバレをもらって、彼女にガンバレを伝えてエレベーターへ。

まだ一度も行ったことがない階に着く。大きな白い扉がウィーンと開くと、中に看護師さんが一人。名前と生年月日を伝えて、手を消毒し、不織布の帽子を被る。ドラえもんがスヤスヤ寝ている手作りのポスターが壁に。福島医大には子供が好きなキャラクターの切り絵やイラスト、動物の写真が色々なところに貼ってあるが、初めて見る絵に初めて来た場所だと気付かされる。もう一枚扉があり、その先はいくつもの手術室をぐるっと囲むような廊下が続く。可愛いキャラクターの切り絵がここにもいっぱい。診察室や検査室だけじゃない、ここにも子供が来るんだな。怖く感じないよう貼られている彼らに温かみを感じる。かなり奥まで進み、ダンボを見た辺りで一緒に来てくれた看護師さんが扉の前で立ち止まり「ここです」と。

手術室に入り「◯◯◯◯(本名)さんです。よろしくお願いします」と付き添いの看護師さんが挨拶。
薄いグリーンやピンクや紺色や、違う色の服を着た男性や女性が出迎えてくれる。手術のために朝早くからこんなに多くの方が準備してくれている。

不織布が敷かれた手術台の上へ寝転ぶ。名前と血液型、今日手術する部位である「左」と伝えた気がする。
手の甲に点滴の管が刺される。その後硬膜外麻酔というものをするそうで、丸まって背中を突き出すよう指示が。アンモナイトのように丸くなる。動くと危ないそうで、ピンク色のナース服を着た看護師さんが体を押さえてくれる。
背中に針が刺される。痛い。ぐーっと押される感じがしますよ、と言われたけど突き刺すような痛み。ぐぐぐぐぐぐ…声が漏れてしまう。何箇所かに針が入る。そのたびにしっかり痛む。
「大丈夫ですよ〜」
ピンク服の看護師さんが体を抱きながら優しく声をかけてくれる。背中をトントンしてくれる。ぽろぽろとこぼれてしまった涙を拭いてくれる。
「お姉ちゃん」と何度もつぶやく。悲しい時、つらい時、自然と思うのは好きな人のことのようである。
硬膜外麻酔の注射が終わり、仰向けの体勢へ。
体全体にも麻酔が効いてきた感じがする。
「なんか…ふわふわします〜」
「よろしくお願いします〜」
と呟いたまでは覚えているがその後は…
「終ぉぉぉぉわぁぁぁぁりぃぃぃぃまぁぁぁぁしぃぃぃぃたぁぁぁぁよぉぉぉぉ!」
うっへぇテンション高っ!!おかしいな…さっきまでピンクの看護師さんが優しく抱きしめながら背中トントンでなぐさめてくれてたはずなのに。話しかけてくれているのは白い服の方たちである。ぼーっとする頭をなんとか回転させ状況を飲み込もうと務める。
「無事にね、終わったのでね」執刀医さんが話しかけてくれているのが分かる。何か返事しよう。何か訊こう。今一番気になることは何だ……「今何時ですか?」日常英会話の例文みたいな言葉しか出ない。
「2時50分です」その言葉を皮切りに乗っているストレッチャーがガラガラと走り出す。急に全てが何倍速にもなったような速さに戸惑う。鼻閉がひどい。口でしか呼吸ができない。その後はエレベーターに乗って個室まで来たはずだが手術室の後は記憶がない。

姉の旦那さんが個室でスマホと鍵を渡してくれた…と思う。空が明るいうちは、何度もナースコールをしてうがいをさせて欲しいや痛みが強いですと伝えたと思う。一度執刀医さんが部屋に来て「無事に終わった」ともう一度伝えてくれたと思う。痛みもあり頭もぼーっとしていたので手術後のことはあやふやなところもあります。間違ってたらごめんなさい。

空が暗くなりはじめた頃に姉の執刀医さんか私の執刀医さんどちらかが来て(ここも記憶が曖昧)「お姉さんの方の手術も無事に終わりました。移植した腎臓からちゃんとおしっこも出ましたよ」と伝えてくれたので、X(Twitter)に投稿。

その後は点滴からの痛み止めが効き、傷や体内の鈍い痛みは和らいだのだが、今度は腰がパンパンに張ってしまう。左下腹部に傷があるので仰向けか右を向くことしかしなかったのだが、夜勤の看護師さんに相談すると左を向いてもいいとのことで、左を向いて張りがあるところを伸ばしたりお布団を足して高さを変えたりするとだいぶ楽になった。  


手術前最後の言葉は「よろしくお願いします」でしたが、本当は「お姉ちゃんをよろしくお願いします」って言いたかったのです。
もらう側の方が大手術ですし。
でもそこまで言うと何だかいい人ぶってるって思われないだろうかと考え「よろしくお願いします」にしたのでした。
そんなしょうもないことも考えられるくらい 笑
身体はふわふわしていましたが頭はしっかり働いていたのでした。

プロレス界に多数おられる“全身麻酔の先輩方”が異口同音に言っていた「あっという間だよ」
こういうことだったんですね。
本当に一瞬で終わったような感覚。

しかし実際は8時50分くらいから手術が始まったと思われるので、目覚めるまで6時間程かかったようです。

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