「友達のままでは....」
「別れちゃった.......。」
下を向く彼女はそう言った。
長い髪が彼女の表情を隠しているが、その声から、悲しい気持ちが伝播する。
彼女と知り合って数年。
遊んだり、一緒に勉強したり、多くの時間を共に過ごしてきた。
そして、彼女の多くの一面を見てきた。
彼女は恋多き女の子である。
だが、好きになった子にはとても一途で、別れた報告をしに来るときは、いつも悔しそうに話す。
「ねぇ。いつも最後はふられてしまうの。わたし、そんなに性格ひどいのかな....。」
そんなことはない。
彼女はとても優しい女の子だ。
家族の誕生日だけでなく、親しくしている友達の誕生日も全部覚えていて、毎回「あの子はこれが好きだから...」とすごく悩んでプレゼントを考えている。
気遣いもピカイチで、ちょっと落ち込んでいる子を見ると、「どうしたの?」と声をかけ、気持ちが落ち着くまで話を聞いてあげるような子だ。
たしかに、急に不機嫌になって黙り込んで周りを困らせたり、彼女にとって面倒なことが発生すると、他人に頼み込んで逃げてしまったりすることはある。
でも、彼女の良いところに比べれば些細なことだと僕は思う。
「また好きな人ができても、またふられるかもと思うと、次は一歩踏み込めないや........」
たしかにそうだ。
ふられるかもって思うと、一歩踏み出せない。
彼女を見ていると、確かにそんな気がした。
そして、僕もそんな一歩を踏み出せない人の一人だと思った。
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noteでの初短編小説でした。
拙い文章ですが、読んでいただきありがとうございます!
「友達」という枠で、好きな子の近くに居続ける。それはそれで良いのだと思います。でも、好きな気持ちを抑え込んだままで、思いを伝えられないのも、やっぱり苦しいのだと思います。
そんな気持ちを文章にしてみました。