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夜の台所

眠ろうと布団に潜ったものの、高山なおみさんの「本と体」を読み始めたら目が冴えてきてしまって、そうだ、今朝作った肉じゃがに今夜もう一度火を入れておいたほうがいいな、なんて思い出してこそこそと起き出した。

鍋を火にかけながら、suisaiの歌声を小さな音で聴き始める。
人間の声ってなんて美しいんだろうと、いつも気づかせてくれるアカペラグループ。聴くタイミングによっては涙がほろっとこぼれてしまう。

ワインを少し飲みたくなって、冷蔵庫から白ワインとチーズを取り出して、コンロ横の小さなスペースでちびちびと飲む。
明日は仕事だから少しだけ。

そういえばsuisaiの2gou君は今年もワインを作っているのかな。
いつかもらった透き通るような赤のワイン、すごく美味しかったな。

お風呂場から時々、が鼻をすする音が聞こえてくる。ちょっと喉がいたいらしく、昨日からはちみつの飴をずっと舐めている。時々ガリっと噛んでいる。

話したり、面と向かって見つめあったりしていなくても、この部屋の中で彼の気配をいつも感じられているから、わたしはいつだって安心して眠ったりくつろいだりしていられるんだな、と最近気づいた。

彼がダウンしてほとんど寝たきりになっていた夏の頃は、気配がとても薄くなって、いつも流れていた音楽も消えて。だから辛く感じていたのかもしれないなって。

今は、いつ帰ってきても音楽が流れていたり、おかえりって声が聞こえてきたりして、あぁよかったなって思う。


今日からぐっと寒くなったから、湯たんぽを作った。
布団に入れて今夜は眠る。


明日は味がしっとりなじんだ肉じゃがが食べられる。
今日久しぶりに行ったmoi bakeryさんのおいしいカンパーニュもあるし。

あたたかさを感じること、おいしいものは生きるエネルギー。


「なにたべたい?」

 って聞くと、たいていいつも

「あったかくておいしいもの。」

 と答える夫。


そうだね、それが一番だよ。


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