こいびと
帰ってきたら自転車が2台
いつもは1台なのに
並んだ自転車の小さい方の車輪に触れるとしっかり空気が入っている
降り積もっていた埃も拭われてぴかりとしている
玄関を開けようとすると
ドアに真新しいオリーブのリース
大きくなった枝を剪定したんだな
ガチャガチャと鍵を開けて中へ入る
コートも着たまま小鍋を火にかけて茶葉と水を入れる。
チャイを沸かす間に手を洗おうと洗面所へ行くと、床のサイズぴったりにカットされたすのこが敷かれている。
お風呂上がりの床が冷たいから布マットを敷きたかったわたし
それじゃあすぐカビちゃうよって言われてムッとした。
だけどそのすぐあとにすのこを買ってきてくれたのだ。
お風呂場と洗面所の間、冷たい床だったところが生まれ変わった。
こんなふうにして、わたしがやらないようなことをしてくれるのが恋人である。
いつのまにシンク周りがぴかぴかになっていたりもするし
夜に干しっぱなしだった洗濯物が翌朝には綺麗に折り畳まれて並んでいる。
静かで安心するような音楽を流しながら畳んでいる。
一緒に暮らすようになってからずっとそうだなと思う。
こうして見えないところで生活のあちこちを静かに整えて、気持ちよく暮らせるようにしてくれる。
帰ってきて一緒にチャイを飲む。
トーストしたバゲットに黒豆ジャムやアーモンドバターを塗りながら。
2歳の子も「おとなー」とか言いながら、一緒に食卓を囲んでいる。
最近出会った可愛い子との恋人の日々を、いいなと思いながら眺めていたら、そうだ、夫もわたしの恋人じゃないかと。
あえて恋人と呼んで日記にしてみる日。