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お弁当箱の闘争

お弁当箱の闘争

お弁当箱の闘争2

お弁当箱の闘争3


 キリンさん組とぞうさん組は、本日近くの公園へピクニックに出かける。
園児たちは、瞳を輝かせて鼻息を荒くし、テンションをこれ以上無いくらい上げてオーバーヒート、楽しみのあまり昨晩眠れなかった子どもは鼻血を噴いた。
 彼ら彼女らの楽しみはというと、もっぱらお昼のお弁当。
 うきうきとした気持ちは背負われたリュックの中の、お弁当箱の中にまで揺すぶられて波紋。お弁当箱の具材たちも、気持ちを高ぶらせていた。
 「いの一番に食べてもらうのはオレだア!」
 威勢の良い声を上げているのは、お弁当おかずの人気者、唐揚げ。
 刺激の強い鋭利な衣を身に着けているものの、柔らかな鶏肉を内に秘めていて面倒見がよい一面もある。
「何いってやがる! 一番はオレだ!」
 内角の和180°の三角を誇るおにぎりが唐揚げに意見した。
 お弁当の絵を描きましょうと言われて登場しない日はない程、定番中の定番。
 日本人として、やはり米を一番にいきたいところだが、主食を先にとるか、おかずを先にとるかは食手にゆだねられる。
 「一番はワタシでシルププレ」
 意外、グラタンが口を挟んだ。
 「お前みたいな冷凍食品など、せいぜい後ろから二番目がやっとだ!」
 グラタンには負けたくないアスパラベーコン巻きが毒づく。
 はてさて、一体全体誰が一番先に食べてもらえるものか、お弁当箱の中身は、そのフタが開くまで延々と言い合いをしていた。
 どうやらお昼時を迎えたようで、主の笑い声が近くに聞こえる。
 「お嬢! ぜったいオレを一番に!」
 フタの裏を見つめて祈るように唐揚げが呟く。
 「嬢ちゃんが選んでくれるのをオレは知っている。さあ! フタを開けてくれ!!」
 主との絆を信じたおにぎりは、腹に巻かれた海苔を叩いて気合いを入れる。
 閃光。目もくらむほどの青。本日は誠に快晴でピクニック日和であった。
 昼時の強い日差しが弁当箱の中に注ぐと、主の女の子は、バラエティー豊かな弁当箱の中を見て感嘆の声を漏らした。
 そして、丁寧に指先をウェットティッシュでぬぐうと、箸をのばす。
 迷うことなく女の子は、一番にフキの煮物を口に含んだ。
 一見静かなお弁当箱だが、人間には聞こえない怒号が今、箱の中で行き交っている。
「ふざけんな!! なんでよりにもよってフキなんだ!!」
「フキみたいな地味なヤツに先をこされるなんて!!」
 唐揚げやおにぎりよりも、卵焼きやナムルが腹を立てている。
 「おい、フキ。よくも唐揚げさんやおにぎりの兄貴のメンツ潰してくれたな?」
 おにぎりの一番弟子のミートボールがフキに詰め寄る。
 フキはあっけらかんとした顔で、ミートボールやその他のおかずに言った。
「でもまあ、筋は通してますんで」

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