鯖国民
日本人というのは、周りがやっている事を自分もやらなくちゃいけないという同調民族だと聞くので、本当にそうなのかと試しに、めちゃくちゃ不味いラーメン屋の前で
「あー早く食べたい! 三〇分並んだかいあっていよいよ次だ! わくわくするぜ!」
などと喚いていたら、僕の後ろに長い列が出来た。
これは金儲けに利用できそうだと考えたオレは、つまるところサクラを駆使して、フィルムカメラやでんぷん質のドリンクが最高にアツいなど吹聴したところ、それは桜の如く各地に広がって、日本中でブームとなった。
富を築いたはいいが、金持ちになると忙しくってそれまで欠かしたことの無い選挙に行くことが出来なくなった。
とある取材でとある記者に、次の選挙で誰に投票するのかという旨を、ハッキリとではないけれど薄らぼんやり聞かれた。
正直、誰が立候補しているのかすら分からなかったので、近ごろニュースなどでよく取り上げられる人の名を挙げた。
後日、適当に挙げ連ねたその人が当選したことが分かった。
オレのせいだ。
いや、日本人のせいだ。