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全国から50名以上が参加した合同植樹祭で考えた、これから戻り苗が紡ぐ未来

こんにちは、株式会社ソマノベースで代表取締役社長をしている奥川 季花(おくがわ ときか)です。

2024年11月30日、和歌山県田辺市で合同植樹祭を開催しました。テーマは「Scrap and Reforest」。今までの森林と人との関わり方を再構築したいという想いで企画したイベントです。

植樹祭には、全国各地から20の企業・団体が集まり、植樹体験やワークショップを実施しました。初対面の方がほとんどでしたが、苗木を植えるときには自然と手を貸し合い、ワークショップではお互いの活動に耳を傾ける姿が見られました。あっという間に、ここには「繋がり」が生まれていました。

そんな光景を眺めながら、私は「戻り苗はどのような存在であるべきなのか」と考えました。この植樹祭の話と合わせて、私たちの考える戻り苗の未来を少しお話ししたいと思います。


全国から50名以上が集まった、植樹祭の様子

合同植樹祭での植樹の様子

今回の植樹祭は、「戻り苗」に取り組む全国各地の多様な企業や団体が集まり、新しい森づくりの在り方を一緒に模索する場として開催しました。テーマは「Scrap and Reforest」。「これまでのボランティア的な取り組みから一歩進み、多方向に価値を生み出す環境保全活動に挑戦しよう」という思いが込められています。

私たちソマノベースは、林業界と他業界を繋ぐコーディネーターとして活動しています。これまで様々な方々と取り組む中で、異なる業界や立場の企業・団体が交わり、共にアイデアを出し合うことで、森への関わりがより豊かになっていくと感じてきました。この植樹祭も、そうした「繋がり」をテーマに企画しました。

過去の森林×他業界アイデアワークショップのようす

当日は、植樹活動だけでなく、森林保全をテーマにしたワークショップや、異なる分野の参加者が自由に対話できる交流会も実施しました。初対面同士の方々が自然に声を掛け合いながら活動する様子を見て、森づくりは「人と人が繋がる場」でもあると実感しました。

Scrap and Reforest ワークショップの様子

戻り苗の「つなぐ力」

今回の植樹祭は、ソマノベースが提供する「戻り苗」を使って苗木を育てていただいている方々を中心にご参加いただきました。

戻り苗は、植林用の苗木をご自宅や事務所で育てられる観葉植物のキットで、全国にある伐採後に植林されていない森に木を植えられる仕組みです。一人で森全体を管理したり、植林活動を行うのは難しいですが、「一人一本の苗木を育てる」仕組みなら、もっと気軽に森づくりに関われるのではないか......そんな思いから生まれたサービスです。

今では、戻り苗を通じて個人・企業含めて3,000本以上の苗木が全国で育てられています。

今回の植樹祭では、戻り苗を通じて苗木を育ててくださった企業の方々が、2年間大切に育てた苗木を手に、田辺市まで足を運んでくれました。「自分で育てた苗を、自分の手で森に植えたい」とわざわざ来てくださる......そんな気持ちに、私は感動しっぱなしでした。

2年間自分で育てた苗木を植える

植樹祭では、苗木を植えるだけでなく、参加者の皆さんと「森との関わり方」について語り合う場も設けました。企業としての取り組みや、個人の視点での想い。それぞれの話を聞くうちに、ふと思ったのです。

「森づくりって、一人ではなく、みんなでやる方が面白いし続けられるんじゃないか」と。

困ったときには相談し合い、それぞれの視点を持ち寄ることで、これまで以上に豊かな取り組みが生まれるかもしれない。今までやりたくてもできなかった活動が、仲間との協力で実現するかもしれない。

また、戻り苗は企業だけでなく、様々な場面で活用されています。たとえば、お孫さんと一緒に苗木を育てる家族や、闘病中の生きる希望として苗木を育てる方、離れて暮らす家族が苗木の成長を写真で送り合うなど、さまざまな形で人々を繋いでいます。デジタルが主流の今の時代に、こうしたアナログな形で繋がりを生み出す戻り苗の役割に、私たちは大きな可能性を感じています。

こどもと一緒に育てる「戻り苗」

私たちは、こうした繋がりをもっと増やし、戻り苗を通じて「人と人」「人と森」を結ぶ架け橋でありたいと、改めて強く思いました。

「自由」を思い出させてくれる戻り苗

戻り苗にはもう一つ、私が大切だと思っていることがあります。それは「自由」です。

今の社会は、インターネットが普及し、どんな情報も手に入る便利な時代です。スマホがあればすぐに話したい人と話すことができて、欲しいものがあれば翌日には手元に届く。人やモノとの距離はどんどん縮まり、私たちは以前よりずっと自由な世界に生きているはずです。

でも、私はなぜか時々「窮屈」だと感じることもあります。

SNSを開けば、楽しそうな写真や動画で溢れています。YouTubeには、自己啓発や成功法則が次々と配信され、画面越しに「こうあるべき」と語りかけてくる。知らず知らずのうちに、「自分もこうしなくちゃ」「まだ足りないんじゃないか」と肩に力が入ってしまうのです。

そんなときにふと森に行くと、ただただ広がる大地や空、静けさの中の鳥のさえずり、ざわざわと揺れる葉っぱの音...そこには、なんの制約もない「自由」がありました。森に来ると、なんとなく「これでいいんだ」と思えるんです。

山帰りに山主さんとお話するソマノベースのメンバー

戻り苗は、そんな自由を思い出させてくれる存在だと思っています。自分のペースで苗木を育てて、森でそれを植える。人によってその理由もペースも違っていい。育てた苗木をどんな想いで植えるのかも、きっと人によって違う。でも、その違いがあってこそ自由なんだと私は思います。

戻り苗が、忙しい日常の中で「ふと立ち止まる時間」を作り、心を軽くするきっかけになれたら......そんな風に考えています。

さいごに

今回の植樹祭を通じて、改めて思いました。戻り苗を通じて生まれる繋がりや自由は、私たちが目指す未来そのものだと。

みんなで育てる苗木
自分の苗木を育てる
戻り苗をみんなで戻すイベント@田辺市

森は、次の世代の人々のために、今の世代の人々と一緒に育てていくものです。そして、防災や地域の絆は、隣にいる人と手を取り合うことで成り立つものだと思います。

もちろん、戻り苗だけで植林できる苗木の数は、林業事業体に比べれば多くはありません。方法を工夫すれば、もっと数を増やせるかもしれません。

でも、私たちは「数」だけを追いかけるのではなく、もっと大切なものを育てたいと思っています。

それこそ「心地よい繋がり」と「自由を感じる瞬間」です。数を増やすことが目的ではなく、森づくりを通じて人と人、人と森の関係が深まる。そんな豊かな繋がりを、これからも育んでいきます。

地域の方とどんぐりを植え付けている様子

和歌山県田辺市から始まったこの小さな活動が、全国の皆さんと一緒に未来の森を育てるきっかけになれば嬉しいです。そして、戻り苗を育ててくださる皆さんにとっては、ソマノベースが「もう一つの居場所」だと思っていただけるよう、これからも努力を続けていきます。

思いが溢れすぎて少し長くなってしまいました(笑)。それでも、この植樹祭は、それほど特別で感慨深いものでした。

改めて、この植樹祭にご参加いただいた皆さん、そして日頃からソマノベースを応援してくださるすべての方々に心から感謝します。

実は、本日から一緒に森づくりを進める仲間「MODRINAEサポーターズ」をスタートしました。私たちの仲間になってくださる方を募集します!森づくりをもっと加速したいと思っていますので、これからも、どうぞよろしくお願いします。

一般の方もご参加いただける植林イベントについてもぜひご覧ください。


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