見出し画像

東京混声合唱団特別定期演奏会 林光メモリアル 東混 八月のまつり45

指揮:キハラ良尚  ピアノ:寺嶋陸也

林 光:混声合唱のための『原爆小景』  
林 光:宮沢賢治の詩によるソング・アルバム『岩手軽便鉄道の一月』より   序詞 / グランド電柱 / 岩手軽便鉄道の一月 / ポラーノの広場のうた / 祈り / 海だべがど    
三善 晃:混声合唱とピアノのための「その日―August6―」
林 光編曲:混声合唱による『日本抒情歌曲集』より「波浮の港」「毬と殿様」「さすらいの歌」「シャボン玉」「ゴンドラの唄」

<トリトンアーツ共催公演>
【主催】一般財団法人合唱音楽振興会(Association for Promoting Music choruses)
【共催】認定 NPO法人トリトン·アーツ·ネットワーク/第一生命ホール
【助成】文化庁文化芸術振興費補助金(舞台芸術等総合支援事業(公演創造活動))|独立行政法人日本芸術文化振興会
【協賛】サントリーホールディングス株式会社

今回のキハラ氏による「原爆小景」は、前回(2019年)登場した際とは演奏の方向性が違っていたと思う。前回は、この作品の持つ構成を極めて明瞭に示す演奏だった。現代作品に明るい人ならではのアプローチが印象的だった。今回は構造の解像度はそのままに、非常に強い想いがのせられていた。キハラ氏はプログラム・ノートにこう記している。

久しぶりに『原爆小景』の楽譜を開いた時、平和への<祈り>よりく叫び>という感情を私はより強く抱きました。そのく叫び>は決してあからさまで露骨なものではなく、人々の心の内側に深く重く入ってくるく叫び>なのです。

「演奏会に寄せて」

当日の演奏は、氏のことば通り「叫び」、あるいは生の感情を伴う声がそこここにみられた。特に顕著だったのが第1曲「水ヲクダサイ」のクライマックス、それに第3曲で克明に描かれるこの世の地獄である。しかも、今回は4曲全てをアタッカで通した。これは歌い手には大きな負担を強いることとなると思われる。が、その分間合いをたっぷりと取りつつ、気持ちの切れ目を作ること無く通奏した。張り詰めたテンションは最後まで揺らぐことがなかった。

いつも沈着冷静なこの合唱団から、演奏のクオリティはそのままに、これほどまでに率直な表情を抽き出したのは、キハラ氏の大きな功績と言える。

また、東混も指揮者の熱い想いに全力で応えており、その真摯な姿勢に胸を打たれた。第3曲・第4曲の冒頭など、もう少し歌としての推進力があればと感じる場面はあったけれど、瑕瑾であろう。

宮澤賢治の詩による「ソング・アルバム」はいずれもこんにゃく座の愛唱歌で、聴き馴染んだ歌が次々に登場するのが嬉しかった。

三善作品は、以前にも八月のまつりで耳にしているはずなのだけれど、(すみません、覚えていませんでした…)。美しいふしを持つ歌。

今回の「日本叙情歌曲集」は中山晋平特集。いつもほっとさせてくれる歌たちであった。(2024年8月8日 第一生命ホール)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?