夜の海辺の組曲ZOU-NO-HANA NIGHT CONCERT
Music by mama!milk
出演
生駒祐子 アコーディオン
清水恒輔 コントラバス
Gak Sato 音効、テルミン
照 明:山本周平
宣伝美術:stompdesign
記録写真:野田昌志
技術協力:吹田哲二郎
協 力:イトウ音楽社、NOREN MUZIC
企画制作:MUSICA MOSCHATA
主 催:象の鼻テラス
明かりが落とされると、小さくオルゴールの音が聴こえてくる。音がだんだんはっきり聴こえるようになり、オルゴールを手にした生駒氏と清水氏が登場すると音楽会の始まりである。
お二人がそれぞれに楽器を構えて音楽を奏で始める。と、こちらの身体の中の深いところへ音がどんどん染み入ってくる。自分の内側の渇きを自覚させられる。
「燐光 Phosphorescence」はぽつぽつと弾かれる音が段々に曲の姿をとっていき、その場でしばし展開したのち、絵具を水で溶くようにじわじわとほどけて終わる。
Gak Sato氏のテルミンは生駒氏と清水氏の音に対して、程よい距離感を保った好演である。移ろいやすい音程に独特の味わいがある。特にAn Ode ではアコーディオンに静かに寄り添って柔らかい陰翳を施していた。電気を使う楽器だけれど、僅かな手つきの違いで繊細に表情を変える。このユニットの持つ音の質感ととても良く馴染んでいた。
プリレコードされたピアノに、リアルのトイ・ピアノが被さる ao が印象的。ここでもSato氏の音効が好サポート。この曲を聴くと、透き通っていながらとても深い青の色が浮かぶ。トイ・ピアノの音はそんな青をたたえた氷菓子のようで、ころころと軽やかに転がる。そして、切ないふしは静かな水の音とともに、するすると消えていってしまう。
生駒氏と清水氏のお二人による Charade では、照ったり曇ったりが音楽によってゆっくりと繰り返される。
最後に再び Phosphorescence に立ち戻る。音楽の終わりではディミヌエンドしつつ、アコーディオンの音が疎になっていく。大きな窓の外の海に、ちらちらと鬼火が浮かんだような気がした。
アンコールの Your Slumbers ー「春のまどろみの曲」と紹介されたーは、お二人の音が遥か遠くまでゆっくりと揺蕩っていく。いつまでも浸っていたいと思った。
少し早い春の夢をゆっくりと観せていただきました。(2024年3月10日 横浜・象の鼻テラス)