第50回サントリー音楽賞受賞記念コンサート 高関 健(指揮)
2022年8月12日(金) 19:00開演(18:20開場)
指揮:高関健
東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
曲目
ノーノ:『2)進むべき道はない、だが進まねばならない…アンドレ・タルコフスキー』 7つのグループのための[サントリーホール国際作曲委嘱シリーズ No. 8委嘱作品(1987年11月28日世界初演 指揮:高関健、東京都交響楽団)]
マーラー:交響曲第7番 ホ短調「夜の歌」
現代物を目当てにオーケストラを聴きに行くと、結構な確率で高関氏に当たる時期があった。そのたび、手堅い仕事ぶりに頭が下がる思いだった。この度は高関氏がサントリー音楽賞を受賞、そのお祝いの演奏会。
ノーノ…舞台上には弦楽器群、それ以外の楽器は6つのグループに分割され、聴衆を取り囲むように配置される。電子音楽作品の響きを思い起こさせる要素もあり、音自体は一つひとつ極めて厳しい。ぎりぎりと絞り込むような最弱音、管楽器群の叫び、突然のティンパニや大太鼓の強打がさまざまな方向から聴こえてきて、会場の空気が絶えずぴんと張り詰めている。けれども、ホールの程よい残響の中に身を浸していると、情け容赦の無い音楽に徐々に身体が慣れてくる。研ぎ澄まされた音たちに縁取られたホールの空間全体が味わえるようになってくる。現代作品を聴いていて、今夜のように終わってほしくないとさえ感じることは稀である。2階席前方に陣取ったため、第7グループに程近い位置で、奏者の気配が間近に感じられて面白かった(このアンサンブルの弦楽器2本は最初少しきつそうだったけれど、持ち直していった模様)。
マーラー…演奏には気迫がこもり、第1楽章でははっとする瞬間がたくさんあった。だけれど、こちらがテンションを維持できたのはここまで。全体に音楽が転換する場面の切れ味が鈍い。特に第2楽章などは、各々の楽想がもう少し丁寧に彫琢できていればもっとおもしろく聴かせられる音楽のはずなのに、冗長に感じられ、聴いていてだんだんもたれてくる。3楽章も同様。終楽章は幾度も訪れるクライマックスごとのニュアンスに差がなくなっていき、残念ながら完全に一本調子になった。
高関氏の強い思い入れが感じられる今回の2曲プロだった。しかしながら、指揮者もオーケストラも時間的制約が大きい中で、全編にわたって緊張を強いられるノーノ、そして今やオーケストラのレパートリーに含まれるとは言え演奏の頻度が低く、しかもクセの強いマーラー7番というカップリング、後者に皺寄せがいくのはやむないところであったか。
東京シティ•フィルは久しぶりだったけれど、以前聴いた時より遥かに安定感があった。特にホルン•トランペットをはじめ管楽器が充実していると思う。弦楽器は第1ヴァイオリン(マーラー第4楽章冒頭が残念)と、人数のせいもあるのか、チェロがやや弱く感じる。(サントリーホール•大ホール)
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?