TOKYO ARTSCAPES 2024【performance】仕立て屋のサーカス 東京公演
楽しみにして出かけた公演なのだけれど、「前ほど響かないのはなぜだろう、こちらの余裕がないせいだろうか」「いや、それだけではないような気が」と自問自答しながら観た。
前半、曽我大穂氏が登場して最初のほうで手にしたのは横笛だったのだけれど、いきなり和テイストになるのは違和感があった。少ししてフルートに持ち替えるといつもの雰囲気になった。その後のカヴァキーニョ(?)はレギュラーの楽器だけれど、やや鋭さを欠くように感じられた。
後半の出だし、ブルースハープ、ことにマイクを使ったプレイは名人芸で、唸らされる。
ゲストの藤田正嘉氏とのインタラクションは互いにやり合う場面もあってとてもスリリングで聴きごたえがあった。ただ、互いに探り合っているのがわかる場面もあった。
前回の鑑賞時(2022年5月 新宿ルミネゼロ)、小型の再生装置(カセット?)を多数使ったシークエンスなど、どこへ向かうのかよくわからない不思議な時間があちこちでみられたーもちろん、今回そういったデバイスをあまり使わなかったことが良くないと考えているのではないー。こうした無方向性の中で、ステージ全体としての緩やかな流れが自然と立ちあらわれ、独特の味わいを生んでいた。
しかし、今回はそういうわけのわからない感触が後退し、クライマックスを作っては次のセクションへという、一種の構成への志向が前面に出ていたと感じられる。
また、スズキタカユキ氏のパフォーマンスも、前半ではパフォーマーへの「着付け」、後半では、細長い布を中央のポールから周囲へと張っていくテントの「大屋根」に限られており、動きが抑制的だったように思う。
スズキ氏のパフォーマンスを思い返していて、今回、会場が微妙に狭かったのだろうと感じた。わたくしは少し後方の椅子席に座って鑑賞したのだけれど、桟敷席に陣取った人たちもなんとなく窮屈そうに見えた。そうした空間的事情も働いて、全体に小さくまとまってしまったのではと推測した。
また、会場内飲食禁止、ホワイエでも食事禁止、物販もホワイエに限られていたようで、会場側から課される制約が厳しかったのではないかと推測される。前述の前回鑑賞時は、飲食、物販などの規制が厳しくなく、会場と外側とが緩やかに繋がっていた。今回は両者が明確に区切られたこともさまざまに影響したのではないか。
今回の公演は、(株)良品計画のブランドIDÉEが手がけるアートイベントTOKYO ARTSCAPES 2024の一環だった。エリアの制約もあったと思われ、会場の選択肢も限られていたのだろう。仕立て屋のサーカスとしても、課された条件の中で自分たちらしい世界を作り出すべく尽力したのだと思う。ただ、やはり会場の物理的条件の不足を補うには至らなかった。せっかく仕立て屋のサーカスを起用するのなら、イベント主催者はもっとこの集団に適した環境を提供してほしかった。次回に期待。
【 マーケット出店情報 】
10/26(土)
Aquvii
純胡椒
夕書房
RECORDSHOP GG
CUMR FOOD TRUCK
仕立て屋のサーカス
(2024年10月26日 東京国際フォーラム・ホールB5)