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絵本「さよなら、また会えるといいね」

ここは、とある町。
青い屋根の小さな家で、男の人と女の人が、
ささやかな暮らしを営んでいました。

2人はとても仲良く、そして楽しく、
毎日を愛でるように過ごしていました。

しかしある夏の日の午後、2人でお茶を飲んでいるとき、
男の人が話を切り出しました。


「2人の暮らしは、いつまでも続いていく。まるで凪のように。
とても楽しいよ。だけどその中で僕に、旅に出る機会を与えてほしい。
外の世界を一度見てみたいんだ。だから。」

「さよなら。また会えるといいね。」


突然のことでしたが、男の人はそのまま家を出て行き、
その後なんと8年も家に帰らなかったのです。


女の人は、あまりの出来事に、
しばらくの間何もできずにいました。


しかし女の人は、男の人を愛していたので、
その気持ちだけを頼りに8年もの間家を守り、
男の人の帰りを待つことにしたのです。


そしてある夏の日、男の人は帰ってきました。


それから、女の人にお礼を言った後、話し始めました。
自分の旅がどんなに素晴らしかったか、そこで何を得たのか。
あの日と同じく、2人でお茶を飲みながら。


例えばこんなこともしたし、


あんなこともした。


これもやったし、


こんなこともした、というふうに。


男の人は、まるで人が変わったように、
自信に満ちあふれた表情で話し続けました。


女の人はそれを楽しそうに聞き、
全部話が終わったとき、マグカップを置いて、
立ち上がりながら、笑顔で男の人にこう言いました。


「私、気づいたんだ。待っているだけじゃ何も始まらないってことに。
私だって、外の世界を見てみたい。だから。」


「さよなら。また会えるといいね。」


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