私的メタル論 <その3>メタルはギターが命!
みなさん、元気ですか?今回は私的メタル論3回目です。前回記事をまだ読んでいない方はこちらからどうぞ ↓
今回はメタルの核であるギターの聴き方について書いてみたいと思います。メタル音楽のどこがいいのか?と聞かれれば、ラウドなサウンドとか恐ろしく速いリズムなどいろんな回答が想像できますが、そんな中でもほとんどの人が否定しないと思われるのが「かっこいいギター」にあるはずです。
私的メタル論の<その1>でも書きましたが、「XXってどんな曲だったっけ?」と聞かれれば、メタルファンはサビの部分を歌って説明するのではなく、イントロのギターリフを口ずさんで説明しようとするはずです。それぐらい、メタルには印象的なギターフレーズが必要なんです。
今日はまだメタル耳になっていない方達にも理解できるよう、どのようにメタル音楽を聴いたら良いのかについて、ギターを絡めて説明したいと思います。今回もおススメアルバムを3枚用意しましたので、早速行ってみましょう!
JUDAS PRIEST(ジューダス・プリースト): SCREAMING FOR VENGEANCE(復讐の叫び)
ジューダス・プリーストの世界的な人気を決定づけた1982年発表のスタジオ録音8作目。彼らは以前から本国英国や日本では人気があったのですが、この作品で念願の米国市場でのヒットを掴みました。全身スタッツ(銀色のトゲトゲ)付きブラックレザーのいで立ちで、重厚感とスピード感のあるサウンドに高音スクリーミング・ヴォイスというメタルのイメージは、彼らが始めたことに由来します。
まず1曲目の「The Hellion」です。これがドラマチックでカッコいい!短めのインスト曲ですが、ドラマチックにハモるギターフレーズのカッコよさは、ここに彼らの様式美と音楽的な決意の全てが表現されているといって良い。ライブはこの曲から始まることも多いのですが、会場でこれが鳴り始めたら鳥肌モノであることは間違いないですね。実際経験したライブでは、ギターフレーズに合わせてオーディエンスの大合唱でした。
そしてそこから間髪入れずに2曲目の「Electric Eye」。1曲目から2曲目への流れがまた素晴らしい。ゆっくりめでドラマチックな1曲目からスピードチューンの2曲目への流れ。そして2曲目の出だしのギターリフのかっこよさ!このアルバムの一番の聴かせどころであり、メタル音楽の数多くのスタイルの中でも究極の完成形のひとつでしょう。
8曲目の「You've got another thing comin'」はノリやすいミドルテンポで重厚なリズムとキャッチーなサビが味わえるこちらも人気曲。その他の曲も全体として曲のイメージは統一されており、メタルの勝利を称えるかのような勇ましく高らかなロブ・ハルフォードのスクリーミングヴォイスは正に「メタルゴッド」。わずかなスキもないジューダス・プリーストのメタル世界が展開されています。
メタル耳を鍛えるためにも1曲目2曲目8曲目は最低10回ずつ聴くことを強くおススメします(他も良い曲です)。
次の作品に行きましょう。
METALLICA(メタリカ): RIDE THE LIGHTNING(ライド・ザ・ライトニング)
1984年発表の2作目です。今となってはメタル音楽を聴かない人でも名前ぐらいは知っているメタリカですが、この頃はまだアルバムを1枚しか出していない新人。そんな新人が突然他とは一線を画す作品を作り上げ一挙に知名度を上げました。
この作品で聴かれる音楽性はまだ「スラッシュメタル」と言われる要素も強いのですが、逆にそれがメタルっぽくもあり、それでいて普通のスラッシュメタルとは違う独自の世界観を構築し始めていることが分かる、メタリカの後の大出世を予感させる内容となっています。一般的な評価はこの次のアルバム「Master of Puppets(メタル・マスター)」の方が上でしょうが、若さとスラッシュメタル感がより強く残るこちらもファンが多い大名盤です。
1曲目「Fight Fire with Fire」からして名曲。イントロのギターアルペジオで神聖な小唄の感じを出しておいて、そこから恐ろしく速く激しいギターリフが繰り出される。リズムが裏か表かもはや分からないほどの速さ。どこにリズムの拍が分からなくなるようなスピード感とリズム感もこの頃のメタリカの良さです。
物凄いスピードで刻まれるギターのザクザク感は正にスラッシュメタル。ただ、そのまま一本調子で早いだけではなく、素早くリズムや曲調を変え、曲の至る所に顔を出すカッコいいギターリフやメロディ。全体的に湿った音作りはまだ模範であるブリティッシュヘヴィメタルの影響を受けながらも、既にメタリカ独自のメロディセンスが光りまくっています。
2曲目のアルバムタイトル曲もイントロからぐっと引き込まれるリフで歌に入る頃には曲に体が持って行かれてしまいます。この曲も途中で何度もリズムや曲調が変わりますが、それぞれが有機的に結びついていて自然な流れでカッコいい。
ライブの定番曲であるウネウネなギターリフが印象的な3曲目「For Whom The Bell Tolls」、新人とは思えない完成度のイントロを披露するメタリカ流バラード?の4曲目「Fade to Black」。1曲目と並ぶスピードナンバーの5曲目「Trapped Under Ice」。ドラマチックなイントロからのアップテンポでノリの良いリフ、そしてギターソロの後のギターリフもカッコいい7曲目「Creeping Death」など名曲が目白押し。
メタル耳トレーニングとして、とりあえず1曲目2曲目3曲目辺りを10回聴いてみてください(他も良い曲です)。
3作目に行きます。
HELLOWEEN(ハロウィン): KEEPER OF THE SEVEN KEYS PartII(守護神伝 第二章)
ドイツのメタルバンド「ハロウィン」が1988年発表した4作目。上で紹介したジューダス・プリーストやメタリカと比較すると、ハロウィンの曲はギターの音圧的にはやや低めかもしれません。しかしこのジャケから伝わってくる欧州的な楽曲の世界観と日本人の琴線に触れるギターのメロディライン、ヴォーカルのマイケル・キスクが放つハイトーンが大ウケしました。大作でPart. IとPart. IIに分かれた作品ですが、全般的な評価としてはIIの方が高いですね。
1曲目はインスト曲の「Invitation」。中世ヨーロッパのパレードを思わせる劇画調の作風で期待値を高めます。そしてそのまま2曲目の「Eagle Fly Free」へと流れます。ここは正にジューダス・プリーストの「Hellion」から「Electric Eye」への流れと同じくで、このアルバムの聴かせどころ。ギターリフもメロディアスでジューダスやメタリカとは違うどことなく親しみやすさが漂います。極めつけは、正に鷹が天高く舞うかのようなマイケルキスクのハイトーンによるサビのメロディ。この曲をハロウィンのベストに挙げるファンが多いのも納得のデキ。ギター単独で聴かせるというよりも、ボーカルラインとギターリフの絡みのかっこよさがハロウィンの魅力です。
4曲目「Rise and Fall」や5曲目の「Dr.Stein」のどことなくコミカルなギターリフや明るめのリズムとメロディラインも聴きどころ。イギリスやアメリカのメタルバンドではこういう雰囲気の曲は作れないかもしれません。
8曲目の「I Want Out」はアップテンポでギターリフもかっこよくキマッているハロウィンを代表する曲。サビの掛け声「アイ ウォント アウト!」はライブでは大合唱間違いなし。9曲目の「Keeper of the Seven Keys」は13分以上の大作ですが、それを感じさせない完成度でこのアルバムのクライマックス。ドラマチックな曲展開と聴かせどころ満載の美メロでロックオペラ的な傑作です。
このハロウィンは一般的な音楽ファンの中での知名度はジューダスやメタリカと比べ劣るものの(米国でも売れていません)、なぜメタル月刊誌バーンの表紙を18回も飾り(ボンジョヴィですら20回)今なお現役で精力的に活動できるのか、人気の秘密はこのアルバムを聴けば分かるはずです。
1曲目2曲目8曲目9曲目を10回聴けばジャーマンメタルの良さに気付かずにはいられないでしょう(他も良い曲です)。
いかがでしたでしょうか?今回は3者3様のメタルの様式美が詰まった傑作を紹介しました。それぞれのアルバムを聴くたびに新しい発見があるんじゃないでしょうか?散々聴いてきた私ですら今でもこの辺りの作品を聴くと「いやぁ、本当に良い作品だなぁ」と感慨深くなってしまいます。このレベルの傑作が毎年生まれていたメタル音楽の80年代は、ジャズでいえば50年代黄金期のようなものであったのは間違いありません。
10代や20代など若い世代の人達にもぜひ自身の耳で確かめてもらいたいです。
次回はメタルと一口に言ってもいろんなメタルがあるよということを紹介したいと思います(私的メタル論は一旦ですが次回で終了です。他をやってから戻ってきます)。
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