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私的シティポップ論とコンピレーションアルバム その2

みなさん、こんにちは!

今回は前回の続きで、紹介したシティポップのコンピレーションアルバムから見えてくるシティポップとは何か?についてもう少し語りたいと思います。

前回記事はこちらです ↓

前回記事で、この作品で紹介している曲はシティミュージックであって、シティポップではないとお伝えしました。が、私的には結構好みのシティポップに聞こえたので、シリーズの他のアルバムも買ってみました。

City Music Tokyo シリーズ
・invitation      ソニー(一部アルファ)  2020年発売(前回紹介済)
・parallelism    ソニー系第2弾        2023年発売
・corner      ユニバーサル系      2023年発売
・multiple      日本コロンビア系     2023年発売
・signal       ビクター系        2023年発売
・reflection       キングレコード系     2023年発売

他にもいくつか出ているのですが、全部は購入していません。発売時期を見ると、第一弾と思われるソニー系の invitation が出て評判が良かったから、その後でレーベル別にいくつかポンポンと連続で発売したという感じに見受けられます。ただ、signal の発売は2023年ですが、ライナーノーツの日付は2020年なので発売までに時間がかかったのかもしれません。

アルバムのタイトルは同じですし(サブタイトルが違う)、アルバムジャケットに統一感があるのと、選曲が全て「クニモンド瀧口」氏で全曲に解説も付いていて丁寧に企画されたシリーズものと言う印象です。

肝心の音楽はと言いますと、私の個人的な感想ですが、やはり一番最初の invitation のデキが良いと思います。今回改めて全部聴いてみましたので、各アルバムの雰囲気だけご紹介します。

<parallelism>
収録曲のおしゃれ度や都会度はさすがソニー系(権利の関係かアルファ・ワーナー・徳間ジャパンあり)。1990年代の曲が中心。アルバム後半のテクノ・ニューウェイブ系はシティポップとは思えなかったりする。ただシティポップとは全然思わないけど最後の曲 RAMJAの「月と遊泳」は特に気に入った。90年代の曲の多くは音作りが渋谷系やJ-POPの香りが強くなってくるので、シティポップとは呼びづらくなるのかなと勝手に想像。

<corner>
選曲的に少し対象年齢が上がった感じの曲が多い。個人的には5曲目のCANDEEの「For You」や6曲目の和田加奈子の「Sunday Brunch」がイイ感じ。あと井上昌己の12曲目「魚座たちの渚」も良い。特に井上昌己の声の透明感には驚き。よく伸びる高音は松田聖子の全盛期を思い起こさせる。

<multiple>
完全にアーバンなテイストのアルバム。全般的にAORの影響が強めな曲が多い。特に中盤は女性ボーカルのアンニュイな雰囲気の曲が並んでいる。シティポップじゃないよねと言うところに拘らなければ、3曲目の角松敏生で歌が(その後)ダンスマンのJADOES「Stardust Night」が良いし、9曲目の猫沢エミの「目に見えないもの」も好き。11曲目の古家杏子の「晴海埠頭」は録音がスタジオでマイク立てただけみたいなプロダクションが残念。普通のサウンドプロダクションならもっとよかった。中西保志はじめ男性ボーカル物がやや多い印象。

<signal>
知名度の高いアーティストが多めな印象の作品。出だし何曲かはシティポップ的だが、中盤のジャズフュージョン色の強い楽曲群は意見が分かれるのではないか?1曲目の障子久美「Truth」や2曲目の長山洋子「あきらかに愛になってた」が良い。16曲目の冨田ラボ featuring 児玉奈央「いつもどこでも」はコード進行がジャジーすぎてシティポップ的ではない響きだが好き。最後の曲 SUBLIMINAL CALMの「かすかなしるし」も、いとうせいこうの上手くないがかえって曲の雰囲気に合った歌い方で気に入った。

<reflection>
収録曲の多くが男性ボーカル(女性ボーカルは聴いた感じで17曲中6曲)。その結果、軽快なシティポップ感は皆無で、ファンク調やロック調の曲が多いイメージ。曲調もアーバンというか年齢層的なターゲットは10代は絶対に入っていない感じで、少なくとも25歳以上のリスナーが対象ではないかなという雰囲気。正直このシリーズで聴いた中では一番ピンと来なかった。逆にアーバンかつ男性ボーカル物が聴きたいならこのアルバムかも。

ざっとこんな感じでした。ライナーノーツに書いてあるのですが、選曲にはオリジナリティが尊重されたようで、他のシティミュージックのコンピレーションアルバムと曲被りしないような配慮がされているようです。

ただ、これも好き嫌いではありますが、そんなにコンピレーションアルバムを買い集めたり普通はしませんし、今のCDは15曲以上入っていたりするので、2~3曲ぐらい同じ曲が被っていてもいいんじゃないかなと思ったりします。変に違う曲を選んでつまらない作品になるなら、良い曲を詰め込んだ方が聴く側は有難いと思いました。

あとは権利関係でも採用できない曲もあるみたいです。実際、キングレコード系の reflection は歌があるにもかかわらず、歌詞カードに歌詞が載っていないものも何曲かありました。この辺りにコンピレーションアルバムの権利関係の苦労が垣間見えます。

ここから今回のアルバム聴き比べで自分なりの音作りにおけるシティポップ感が分かってきたので、まとめとして書いておきます。

<私的シティポップ感の正体(音作り編)>
・サウンドプロダクション的には80年代までの音作りが良さげ。音に奥行き
 が出過ぎるとシティポップ感は減少する。特に空間が広くなり、ドラム音
 が重く奥行きが出始める90年代以降はポップ感がなくなっていく
・ボーカルは圧倒的に女性が良い。男性の歌声でシティポップ感を出すのは
 非常に難しい。先のドラムと一緒で、音全体に含まれる声の重さが大きく
 なりすぎてポップ感のバランスが崩れる
・ロック色、テクノ・ニューウェーブ色、ファンク色、ジャズ・フュージョ
 ン色が強すぎるとシティポップ感が薄れるので、その辺りはほどほどに軽
 快なリズムと日本的なメロディが乗っていること。欧米的なメロディは
 シティポップには合わない。特にブルース臭はシティポップには禁物

ここに、前回書いた私的なシティポップの世界観(以下の3つ)を加えます。

<私的シティポップの世界観>
・曲の世界観や雰囲気は10代後半から20代中頃までがメインターゲット
・曲が醸し出す "シティ"の 雰囲気は、原宿・渋谷・神宮・青山(のみ)
・曲が明るく前向きで人生の苦痛から切り離されている

私のシティポップ感はこんな感じになりました。皆さんはどんな感じでしょうか?

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