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私的シティポップ論とコンピレーションアルバム その1

今回はシティポップについて語ります。安心してください、そんなにたくさんは語りません笑。おススメアルバムもあります。

シティポップブームがやってきてそろそろ10年ぐらいになるんじゃないでしょうか?数多くのアルバムやアーティストが発掘されました。発売当時は全く評判にならなかったり、売れなかった作品も多いと思いますが、数十年の時を経て再評価されているのは、音楽を作る側にとっても聴く側にとっても良いブームかなと思っています。

ただこのシティポップブーム、いくつか問題もあると思っています。挙げてみますと、

・シティポップの定義があいまい
・アルバム単位で聴くと曲のタイプやクオリティにばらつきがある
・作品がたくさんありすぎて追いつかない

などです。ちょっと説明します。

1つ目は分かりやすい問題。そもそも論として、どんな音楽がシティポップなんでしょう?様々な推薦盤がメディアに掲載されていますが、「これはシティポップじゃないだろ?」という作品に出くわします。例えば、私は寺尾聡のアルバム「Reflection」はシティポップではないと思っています。名盤ですがシティポップではない(大事なのでもう1回言いますが名盤です)。

私なりのシティポップの定義は、

・曲の世界観や雰囲気は10代後半から20代中頃までがメインターゲット
・曲が醸し出す "シティ"の 雰囲気は、原宿・渋谷・神宮・青山(のみ)
・曲が明るく前向きで人生の苦痛から切り離されている

です。都会的かつポップな曲調でありつつ、無条件の若さへの賛美と日常の苦痛からの解放。これが私個人のシティポップ感なんです。

寺尾聡の「ルビーの指輪」や竹内まりあの「駅」(共に超が付く名曲)の世界観は歌詞として非常に引き込まれますし素晴らしいのですが、シティポップと呼ぶにはあまりに重い。

「じゃぁお前のシティポップの1曲ってなんだよ?」と聴かれれば、迷わずこの1曲です ↓

EPO(エポ):DOWN TOWN(ダウンタウン)

原曲はシュガーベイブ(山下達郎)の名曲として有名ですが、私はシティポップで見れば断然にEPO派です。

土曜日の夜は特別なんだから、さぁ早く街へ繰り出そうよ!
つらい気持ちも晴れて、みんなウキウキ!

凄いですよね。この都会感と全体からこぼれ出る若さへの無条件の賛美。今聴けばサウンドプロダクションはやや時代を感じさせますが、EPOの声や歌い方は変にうまく聴かせようとしていないところでシティポップ度を高めていると思います。

2つめの問題は、アルバム単位で聴くと起こりがちです。アルバムには通常8曲とか10曲とか収められていますが、アルバム全部を名曲にするのは至難の業。そんなアルバムはシティポップに限らずほとんど無いわけですが、そこまででなくても、シティポップと呼べる曲調の曲が全10曲中1~2曲ぐらいしか入っていないということも往々にしてあります。サブスク時代にはあまり問題にならない事象ですが、名盤リストがアルバム単位だと自らの聴く力でシティポップ感を探し出さなければならず、ピンとこない結果になりがちです。

3つ目の問題は一言で言うと、シティポップの名盤が多すぎる。ブーム初期はもっと定義が狭かったので定番な作品も多かったのですが、最近では様々な角度(拡大解釈?)でシティポップが発掘され、知らないアーティストや作品の宝庫になってしまっている。それはそれで実際に良い曲もあったりするので悪い面ばかりでもないですが、ついて行く方は大変です。雑誌の企画で名盤リストが掲載されていても、全部を追いかけている人なんて誰もいないでしょう。

もう少ししっかりとした眼力と価値観で万人にススメられるシティポップの名曲リスト(かつ知らない曲)ってないんでしょうか?とついついみんなが思っているのが今じゃないでしょうか(多分)。

今回はそんな皆さんにお勧めのシティポップのコンピレーションアルバムをご紹介します。

City Music Tokyo - invitation -(2020年発売)

City Music Tokyo - invitation -

こちらのコンピレーションですが、レーベルごとのシリーズもののようです。CDの帯には "「都会・音楽・東京」をテーマにシティミュージックの名曲をセレクション!」"とありまして、選曲は「流線形」のバンドメンバーである「クニモンド瀧口」という方ですね。

このアルバムはレーベル的にはソニーがメインで、一部アルファの楽曲が集められています。ソニーと聞くともともと都会的な音作りのイメージがありますが、ここに集められている楽曲は、確かにそういうものが揃っている。でも何よりこのアルバムが良いのは、

ほぼ知らない曲しか入っていないのに、確かにシティポップ的な良い曲が多数収録されている。

という、正に職人技が詰まっている点でしょう。ただし断っておくと、このアルバムはシティミュージックを集めたのであって、シティポップではないんです。が、曲調にアーバンな感じはあまり感じないので、私の思うシティポップとここで言うシティミュージックは近しい音楽なんだと理解しています。

1曲目はEPOです。もちろん曲はDownTownではない。2曲目はなんと宮沢りえ。音楽好きであればあるほど「え?」となってしまいますよね?でも違うんです。これがイイんですよ!こんなアンニュイな曲を歌っていたとは驚き。歌詞は北野武がペンネームで書いているのだそう。アーバンまで行かない宮沢りえの若さとキャラでシティポップにとどまる名曲。

3曲目はPLATINUM900。知っている人は知ってるけど、知らない人も多いはず。私も正直知りませんでした。でもこのアルバムを聴いて気に入ってオリジナルアルバムを買ってしまいました。

6曲目は奥居香。プリンセスプリンセスの元ヴォーカル。シティポップの感じは全然しないですよね?でもシティポップです。いい曲なんです。

10曲目はChara、11曲目には田島貴男の時代のピチカートファイブ。著名なアーティストの音ってわかった気になってしまいますが、ここに収められている曲はそういう頭で鳴りがちな音ではないのが面白い。

ここに挙げられていないアーティストの曲も素晴らしい。4曲目の国分友里恵や5曲目Cindyもアルバムを買ってしまうかもしれない笑。

アルバムも後半に進むとちょっと大人っぽい曲も増えてきて、個人的には「これはアーバン?」みたいな、世の中的にはどうでもよい心境にもなったりしますが、それでもシティポップで行けるだろう音作り。

このコンピレーションアルバムはこれが気に入ったので、シリーズ物の中のいくつかを買ってみました笑。他のアルバムも聴いていますが、インパクトはこのアルバムが一番かなと思いますね。ソニー強し、そんな感じです。

とはいえ、せっかくなので他のシリーズも次回ご紹介します。

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