見出し画像

私的ジャズ論 ヒップホップとジャズ その1 サンプリングとジャズ

いろんな音楽を聴いたり情報を追っかけていると、時々「ジャズとヒップホップとの融合」みたいな話に出くわします。ジャズもヒップホップも黒人カルチャーが発祥でしょうし、根っこが近いというのは理解してるのですが、実際に音楽になるとどんな感じになるのでしょうか?

ここで言うヒップホップはカルチャー全体を漠然と指しています。なので、そのヒップホップが思想なのか、ダンスなのか、音楽なのかなど細かな話はしません。

音楽的な融合と言う点では、サンプリングがあります。クラブDJの始まりは、昔々町内の祭り(ブロックパーティ)でみんなが踊れるように、2枚の同じレコード(とプレーヤー)を用意して、一番踊れる部分のフレーズをひたすら交互に再生するところから始まったようです。もちろん違うレコードで踊れる部分を繋いでも良いんでしょう。これがサンプリングのハシリなわけです。

なので、ジャズでも踊れるフレーズや箇所があるのであれば、その部分がDJによって抜き取られ繰り返し再生されるので、踊れるジャズが誕生することになります。

このサンプリングはヒップホップアーティストも多用しており、記憶にある中では、古めでジャズではないですがレイ・チャールズの曲(「I've got a woman」)をカニエ・ウェスト(イェ)がサンプリングしているGold Diggerと言う曲がノリも分かりやすくてかっこいい!

フィーチャリングでジェイミーフォックスが出ているのは、レイ・チャールズの自伝映画で彼がレイ役をやったからでしょうか?

ここで引用(サンプリング)されている原曲箇所は非常に短いですが、これがサンプリングの典型で、ほんの数小節もあれば充分というのがサンプリングの王道です。

ジャズを元ネタに大々的なサンプリングで人気を博したアルバムがあります。それがこちらです ↓

US3(アス・スリー):Hand on the Torch(ハンド・オン・ザ・トーチ)

US3/ Hand on the Torch

このアルバムはジャズの名門レーベルの一つ「ブルーノート」から出ています。発売は1993年なので結構昔なんですが、私が知っている限り収録曲全てでジャズをサンプリングして1枚のアルバムを作り込んだ作品はこれが初じゃないかなと思います(別にあったらごめんなさいですが)。

しかもサンプリングの元ネタは全てブルーノートレコードから出ている楽曲なんですね。US3(このグループ名もホレス・パーランのアルバム名から来ていると思われます)は契約時にブルーノートレコードの全カタログからサンプリング可能という条件で契約したらしいです。

ちなみにこのアルバムの出だし司会者の声は、私の以前連載でおススメとして紹介したアートブレイキーの「バードランドの夜」のイントロのサンプリングです。

ただ、この「サンプリング」ですが、原曲の一部を引っ張ってくる場合もあるんでしょうが、彼らは自ら演奏しているようです。ラップも入っていますが、カニエウェストのような原曲の短いサンプリングの上でリズミカルにしゃべって歌うみたいなシンプルな構成ではなく、結構演奏している時間も長いんです。クレジットには楽器メンバーの写真もありますので、原曲の演奏を再現しつつ、サンプリングしつつ、その上にラップが乗っていると理解しています。

特に1曲目の「カンタループ」が流行りました。この原曲はハービーハンコックの「カンタロープ・アイランド」なんですけど、もともと従来のジャズからは離れた黒いグルーブを感じる曲なんですが(原曲もカッコいい)、見事にヒップホップ的な解釈で再構成されています。

個人的には8曲目の「スーキー・スーキー(Tukka Yoot's Riddim)」も好きです。グラントグリーンの同名曲が元ネタのようです。

発売から大分経っていますので、乗っているラップや音像は若いヒップホップ愛好家が聴けばオールドスクール的な響きなのかもしれませんが、ジャズとヒップホップの融合と言う意味ではよくできた作品だと思います。電子音主体の昨今のヒップホップよりは生音主体の録音になっていて、バンドっぽいノリや空気感も良いです。

気になった方はぜひ聴いてみてください。

次回、もう1作ご紹介しようと思います。

今回の記事を面白いと思っていただいた方は「スキ」をクリックしてもらえると嬉しいです。

#ジャズ
#Jazz
#ヒップホップ
#HipHop
#ブルーノート
#BlueNote
#US3
#ハービーハンコック
#グラントグリーン



いいなと思ったら応援しよう!